Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

上原、カブスへ(記事紹介編)

さてこちらでは、今オフに出た上原のフィーチャー記事を2、3ご紹介しておきましょう。

まずはボストンとの再契約がなくなったあとに出た「レッドソックスでのコウジ・ウエハラを振り返る」という記事。

GIFなども貼られていますので、興味のある方はぜひぜひ元記事をごらんになってみてください。要約でお伝えします。( )内は、主にわたしの補足とツッコミ。

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リリーバーの球速が上昇傾向にあり、ブルペンから出てくる投手はだれもが95マイル(152キロ)以上を投げる時代。2007年以来、リリーバーの平均球速は91.4マイルから93マイル(約150キロ)まで上昇した。

そんななかで上原は、平均88マイル(今季はたぶんもう少し低いですが)でありながら、9回あたりの奪三振率は2016年に12.1、キャリア通算でも10.7。しかもめったに四球を出さずにそれをやりとげる。2013年から16年までの平均与四球率は、9回あたりわずか1.47だった。

したがって三振と四球の割合をしめすK/BBもボストンでの4年間通算で7.86。メジャーリーガー平均は5.5だ。

(数字、元記事が間違っていたので、ちょっと修正しています。それと、2013年までの通算K/BBは8.74だったのですが、2015年が5.22、16年が5.73だったので、少し数字が下がってしまいました。★それでも通算K/BB 7.91は、100イニング以上投げた投手のなかで依然として史上1位です!★)

球速こそ遅いが、上原のファストボールは打者にとっては常に驚異だった。PITCHf/x が導入されて以降、1000球以上投げたリリーフ投手のなかで、上原のファストボールは、空振り率が20位だ。上位50人のうち平均球速が90マイル以下なのは、上原だけである。→データ(実は3位に球速87.75のダレン・オデイが入ってます。この記事、ちょっと数字のミスが多い(^_^;;)

なぜこんなことが可能なのか。答えのひとつが、きわめてすぐれたな決め球スプリットの存在だろう。このスプリットの42%という空振り率は、PITCHf/x が導入されて以降の時期では、第4位。上原は常にファストボールとスプリットを組み合わせて、打者を手玉にとってきた。

ほとんど変化しない、糸を引くようなファストボールと、PITCHf/x導入後、タテ横の変化率第3位に位置する上原のスプリット。野球界でも最も打ちにくい球のひとつだ。しかもその2つをほとんど同じ割合で混ぜてくるので、打者は見極めるのが困難。

結果として2013年から16年までのPWARP(ベースボール・プロスペクタス考案の投手のWAR)で上原は5.99と、リリーフ投手全体の10位にランクインした。

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つづいてカブス界隈から「上原と契約。つぎの10月へ向けてさらなるブルペン補強」という記事をざっくりと。

カブスは今オフに元ロイヤルズのクローザーウェイド・デイビスをホルヘ・ソレアとの1対1のトレードで獲得。今季はヒジの故障などで2度のDL入りをしたデイビスだが、ポストシーズンでの経験も十分。9回から逆算すれば、彼がクローザーをつとめるのは間違いないだろう。その前をつとめるのがへクター・ロンドンとペドロ・ストロープ。ロンドンはかつてTJ手術を受けた経験があるが、過去3年間で77セーブを挙げている。ストロープもオリオールズからの移籍後84ホールドを記録しており、マドン監督の信頼は厚い。

そして今度加入した上原はクローザーとして93セーブをあげた実績があり、左打者も.183と抑え込んでいる。多少の懸念があるとすれば、開幕直後に42歳になるというところか。

これでカブスには過去4年間のワールドシリーズで最後のアウトを取った投手のうち、3人がそろうことになった。(2013:上原、2015:デイヴィス、2016:モンゴメリー

◎エプスタイン球団社長のコメント「人間は183日間で野球を162試合もこなすようにはできていない。新労使協定でシーズンが4日ほど長くなるが、それでも層の厚さは必要だ。今年は野手陣の厚みがあって助かったが、来シーズンへ向けて、ブルペンにも同様の厚みをもたらしたい」

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よく読み直してみたら、あまり上原のこと書いてなかった(^_^;; まあいいか。これから、これから。

そして最後はまたボストンから。上原のことが大好きだったボストン・グローブのピート・エイブラハムさんからの惜別の記事です。(うう、夕飯食べてるあいだに、FullCountさんの記事が出ちゃった。まあしょうがない。)

「上原の貢献を忘るなかれ」

来年4月28日からの3日間、レッドソックスフェンウェイパークシカゴ・カブスを迎える。それは話題が盛りだくさんの3連戦になるだろう。

将来の殿堂入りが確実なテオ・エプスタインが、久しぶりにフェンウェイの芝生を踏み、みずからが獲得したすばらしい若手選手たちを目の当たりにする。

元エースで、2014年に不可解な形でチームを去り、今回初めてボストンに戻ってくるジョン・レスターは、勇者のような歓迎を受けるだろう。気むずかし屋のジョン・ラッキーにもレッドソックスファンから温かい拍手を送られるはずだ。

そして上原浩治のことも、特別な思いで迎えてほしい。上原は12月14日水曜日、カブスと正式に契約した。

上原はレッドソックスに在籍した4年間にめざましい活躍をした。79セーブを挙げ、4年間の平均奪三振率は11.6。226イニング投げて、与えた四球(敬遠をのぞく)はわずか37。

レッドソックス史上、226イニング以上投げた投手はこれまで201人いるが、そのなかで上原のレッドソックス在籍中の防御率 2.19よりもいい数字を残しているのはスモーキー・ジョー・ウッド(1.99)、サイ・ヤング(2.00)、アーニー・ショア(2.12)、ダッチ・レオナード(2.13)の4人だけ。しかもこの4人はいずれも1919年にベーブ・ルースが登場する以前のいわゆる「デッドボール時代(飛ばないボールの時代)」に在籍した投手たちで、今よりずっと投手有利な環境で投げていた。

2013年、上原がいなかったら、レッドソックスがワールドチャンピオンに輝くことはなかっただろう。上原は、ベイリーやハンラハンらがつぎつぎと故障するなか、6月にクローザーに就任。それ以降、防御率0.41、22回のセーブ機会で20セーブという成績を残した。

しかもあの年、クローザーになってから許した四球は2個、ホームランは1本だけ。

ポストシーズンでもその働きは変わらなかった。13回2/3で失点わずか1、16個の三振を奪い、与えた四球はゼロ。相手打者の対上原の成績は52打数8安打、打率.154だった。

上原はチームメートにも人気があった。言葉の壁を越えて、クラブハウスのムードメーカーになっていた。また2013年には38歳で73試合に登板、チームメートの尊敬も勝ち取った。

13年の主力選手の例にもれず、上原はCMキャラクターとしても活躍した。日本のサントリービールのCMに登場したおかげで、スプリングトレーニングの際、サントリーからビールが数ケース送られてきた。

上原は、チームメートにビールを配ってから、報道陣に、君たちの分はないよと軽口をたたいた。ところが4月のある日の試合後、わたしがインタビューを終えると、上原はビールをひとケース取り出し、英語でこう言ったのだ。

“Give it out to the guys,”(これ、みんなに配って。)

わたしが遠慮して、そんなにしてもらったら悪いと言うと、コウジはいいからいいからと手を振って、

「飲みなよ」と言った。

わたしはケースを控え室に運び、報道陣にビールを配った。そしてみんな、記事の締め切り前に、クローザーからの心づくしのサントリーをいただいたのだった。

上原は、ファンの人気者でもあった。彼が88マイルのファストボールと消えるスプリッターですいすいと1イニングを切りぬけていく様は、見ていて楽しいものだった。そしてデイビッド・オルティーズが上原をかつぎあげ、だれもが幸せな気持ちで家路につく。

いつの日か終わりが来るのは避けられない。だが少なくとも終わり方はなごやかなものだった。レッドソックスは上原にオファーを出したが、上原は時間をかけて決断することを望み、チームはそれを待たずにタイラー・ソーンバーグをトレードで獲得したのだ。

正しい決断だったと言える。上原は過去2シーズン、長期間にわたってDL入りしたし、球の質にも少し衰えが見られた。登板数もこれまで以上に抑える必要があろう。ここでナショナルリーグに移籍するのは、いいタイミングだ。

上原は、きわだった投球をして、多くの友人を作り、チャンピオンシップを勝ち取った。ボストンへの置き土産としてこれにまさるものはない。4月にファンが温かい拍手で上原を迎えてくれることを望んでいる。

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いい記事だな~(じーん)。

やはりこの記事の肝は、ビールのエピソードですね。上原の人柄と、マメさと、ボストンで築いた人間関係が凝縮されていて、ちょっとうるっときました。エイブさん、ありがとう(:_;)

この記事にはもうひとつ、2006年以来レッドソックスのロースターに必ず日本人選手がいたのが、上原、田澤の移籍でついに誰もいなくなってしまうということが記されていました。2007年に松坂と岡島が在籍してからは、ずっと二人ずついたんですね。

さあ、カブスでも19番(→本人ブログ)。これもうれしいな。

なんていうんだろう。レッドソックスでワールドチャンピオンになって、契約した4年間をいい成績でまっとうして、FAになったとき、「もう一度チャンピオンに」と思えるのって、すごいなあとしみじみ思うのです。しかも口で言うだけじゃなく、チームがまだ決まらないうちから、こつこつトレーニングを始めている。プロのアスリートだから当たり前と思う人もいるかもしれないけど、メジャーリーガーだって、ひとりのふつうの人間ですからね。ひとつの目標を達成したとき、自分の身分が不確かなとき、それでもモチベーションを高めて日々の仕事をこなせるかどうか……胸に手を当てて考える。やっぱり上原さんは、ほんとうに野球が好きだし、ほんとうにストイックな根っからのアスリートなんだなとあらためて感じた今年のオフシーズンでした。

2017年、新たな挑戦を心から応援したいです。

【追記】

2014年に当時まだレイズにいたマドン監督が上原についてコメントしたときの記事があったのを思い出したので、関連情報のところにリンクを貼っておきます。