Another Season: トレンブリー監督続投
今日(現地10月2日)の試合前、トレンブリー監督の続投が発表された。前回書いたように、アンディ・マクフェイル球団社長は、シーズン終了まではその話はしないと言っていたが、13連敗によって外野が騒がしくなったので、連敗がストップしてホームに戻ってきたのを機に発表したのだろう。
試合の数時間前、社長によばれて球団事務所に赴くときの心境を、トレンブリー監督は「“グリーンマイル*”を歩いているようだった」と述べている。(*映画でも有名になったスティーブン・キングの小説。作中に登場する死刑囚監房の俗称が“グリーンマイル”)
続投を告げられての記者会見は、安堵感に充ち満ちたものだった。
球団社長の談話、監督の談話などを総合すると、
1)今年の目的は「再建と育成」と当初から位置づけていた。
2)シェリルやハフのトレードもその一環であり、さらにその後のけが人続出なども重なったため、現在のチーム成績で監督の去就を判断することはできない。
3)さすがに13連敗によってマクフェイルの気持ちはやや揺らいだが、オーナーとも相談して続投を決めた。
4)トレンブリー監督も、成績はふるわないながら求められた仕事(育成)は果たしていると理解していたが、ここ最近、会う人ごとに去就を問われるようになり、13連敗のせいもあって、眠れぬ日々を過ごしていた。
5)今年で「フェーズI:再建の年」は終わりを告げ、来年はもっと勝敗にこだわる年になる。
ファンの反応は、半々。「最悪。もう来年はシーズンチケットを買わない」という人もいれば、「もう一年チャンスを与えるべき。妥当な判断」という人もいる。しかし、前回も書いたように、続投歓迎派も手放しで喜んでいるわけではなく、選手起用における厳しさやブルペンのマネジメント力の向上を望んでいる。〈サン〉紙の記者、ピーター・シュマックのこの言葉がすべてを言い表していると言えるだろう。
Now, Trembley needs to manage like he’s their boss instead of their uncle.
(これからトレンブリー監督には、“伯父さん”ではなく、“ボス”として采配をふるってもらいたい。)
トレンブリー監督は1951年10月31日生まれ。ニューヨーク州立大学の教育学の修士号を持つ。ペンシルバニア州立大学の大学院で、スポーツ心理学も学んでいる。
1977年から1984年まで、高校や大学の野球部監督を歴任。その後、シカゴカブスのスカウトに採用されたのをきっかけに、各地を転々としながらキャリアアップし、20シーズンにわたってマイナーリーグの監督を務めた。2001年にはベースボール・アメリカの選定する「過去20年間のマイナーリーグ優秀監督トップ5」にも選ばれている。(すごい!)
オリオールズとの関わりは2003年からで、2A、3A監督、メジャーのブルペンコーチを経て、2007年シーズン途中に前監督の更迭を受けて監督に就任した。(以上、ウィキペディア・英語版より)
ちょっといいな、と思ったのは、今日の発表を聞いて、多くの選手が歓迎のコメントを出していること。それも社交辞令ではなく、心底喜んでいる選手が多いことだ。
・ブライアン・ロバーツ(彼は以前から、トレンブリー監督を支持する発言を繰り返していた。)
「確かに変化が必要なときはあるだろう。でも、今このチームでそれが必要だとは思わない。デイブは長いことマイナーで監督をして、若い選手との経験がすごく豊富だ。そういう人こそこのチームに必要だと思う」
・ジェレミー・ガスリー
「苦しいときも指揮を執り続けて、立派な仕事をしている。デイブは何よりもまずぼくらのことを考えてくれるし、選手としてはそれが一番ありがたい。ぼくには、さらに思い入れがある。ぼくがインディアンズを解雇されたとき、ガスリーに賭けてみるようにとオリオールズに言ってくれたのはデイブだったからね」
・ニック・マーケイキス
「よかったよ。苦しい状況になったのは、けが人が多かったせいだからね。若い選手がこれほど一度にデビューした年はない。デイブは若い選手をしっかり育てて、守り抜いた。そういう意味でちゃんと仕事を果たしたんだ。来年はぼくらがチームをよくして、もっといい成績をあげられるようがんばる」
・ブライアン・マトゥス
(留任の知らせを聞いた瞬間、満面の笑みを浮かべて←かわいい!)
「デイブのことは大好きだよ。ぼくたち若い選手がチームに溶け込めるよう、すごく気を遣ってくれる。若い選手にとっては、それがメジャーに昇格して一番大変なことだからね。いつでもぼくらがリラックスして、楽しくやれるよう、話しかけてくれるんだ。来年も監督をしてくれるのはとてもうれしい。みんなデイブのことをよく知っているし、チームもまとまってきたところだ。来年はいい年になると思うよ」
・クリス・ティルマン
「若い選手に対してものすごく親身になってくれる。ぼくらが溶け込めるよう、気持ちよくやれるよう、とても考えてくれるんだ。メジャーには近寄りがたい人もいるけど、デイブはとても親しみやすい。ぼくがオリオールズに来た最初の年、一番大事なのは気持ちよくやれることだと何度も言ってくれた。デイブには、疑問があれば何でもききに行けるよ」
いやあ、これほど周囲の評価が一致している人というのも珍しいかもしれない。ほんとうにまっすぐで、裏表がなくて、気持ちのいい好人物なのでありましょう。そこにどれだけ厳格さ、冷徹さ、相手に対する意地悪さといった、勝負師には欠かせない要素を加味できるか。さらに選手のコンディション管理をどの程度向上させられるか。それが2010年にどれだけ勝ち星を伸ばせるかのひとつの要素になるかもしれない。
きょうは、監督留任を祝うかのような大勝。あとひとつ勝てば100敗を免れることができるけれど、そんなケチなこと言わずに(?)あとふたつ勝って、今シーズンを締めくくってもらいましょう。