Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

Koji's Classroom 番外編:がんばれ菊地くん

日本シリーズにもワールドシリーズにも少し間のある日々――。とはいえ、Wシリーズは、もう水曜日(現地)から。日本シリーズは土曜日からでしたか。CS第2ステージよりALCSのほうがあとに終わったのに、Wシリーズのほうが先に始まるんだ……。

コウジの古巣、巨人はCSを勝ち抜いて、日本シリーズに進出。

第1戦に負け、第2戦にも先制されたときには、思わず「誰か、なんとかして!」と願ったが、本当にみんなでなんとかしてくれた……強くなったものです。脇谷がMVPというのが今年の巨人の戦いぶりを象徴していると思う。

しかし、上原もいないし、今年は気楽に見られるかも、と思っていたCSだけど、けっきょくどっぷり応援してしまった(^_^;;

その巨人から、尾花コーチがおそらく来季、横浜監督に就任とのこと。正式発表はまだないものの、複数ソースで報道されているところを見ると、確度が高そう。

オリオールズの監督人事の話をしたさいに、ここでもちらっと尾花コーチの話が出たが、らつ腕・尾花コーチが、投手不足に悩むベイスターズをどこまで再生できるか、とても楽しみ。いや、また手強いベイが復活するのはこわくもあるのだが、オリオールズを応援するうちに親和性(?)を感じるようになったベイスターズには、「こんなもんじゃないはず。もっとできるよ!」という気持ちも強い。尾花さんの挑戦(もし本当なら)、応援したいです。(でも、巨人には痛手だなあ。)

ところでコウジは、ちっとも日本に帰ってこない(笑)。

もちろん、報知新聞に寄稿しているポストシーズンのレポートがあるから、それが大きな理由だろうが、本人のブログによれば、ボルチモアでトレーニングをしながらの、のびのびした生活が、心地よくて気に入っているようだ。生活者として根を生やしている感じ。いいな。

そんななか、菊地雄星くんの涙の会見を見て、10年前(いや、11年前か)の上原浩治に思いをはせた。もっとも、残念ながら当時わたしはまだ上原を知らなかったから(応援し始めたのは、ルーキーイヤーの途中から)、あの「わたくち、上原浩治は~」という緊張の逆指名会見は、ドキュメンタリーなどの振り返り映像でしか見たことがないけれど。「メジャーか日本か」で揺れたその時期のことを上原は事あるごとに「ほんとうに苦しかった」と振り返っている。

95年の著書『我慢』(ぴあ刊)によれば、大学4年の夏(98年8月)、イタリアでの世界選手権を終えて初めてアメリカに行った上原は、メジャーの野球を見てすっかりとりこになった。そのとき、知人の紹介で長谷川滋利氏と知り合い、くわしい話を聞いてどんどん気持ちがメジャーに傾いていく。一時は本気でエンゼルスと契約しようか、というところまでいったのだが……「正式に決めようと思ったところで、メジャー関係者のひと言がストップをかけた。『100%の自信がなければ来ない方がいい』 そう言われて初めて、大学を卒業して、実家から離れてアメリカで一人暮らしを始めて、食事や言葉の問題はどうなるのか、という生活面の問題に気がついた。『風邪ひいたらどうすんねん』とか『寮もないな』とか考え始めると、自信がぐらつき始めた。英語は受験のときに勉強したぐらいで、英会話の自信はまったくなかったし、それまで一人で生活をしたことすらなかった。」(p.17)

人生の岐路に立たされて悩む上原に、マスコミの取材攻勢が追い打ちをかけた。

「メジャーがダメだから、日本で我慢しようなんて考えていないのに、マスコミは僕のちょっとした発言を拡大解釈して、大げさに書いてしまう。『上原は日本の球界をバカにしてるんじゃないか』みたいなことを言われたこともある。(中略)メジャーへの憧れと、アメリカでの生活に対する不安、日本で投げるのならどのチームが自分に合うのか、いろいろ考えなければいけない一方で、報道陣に追いかけられて、ほとんどノイローゼ一歩前みたいな状態だった。」(p.98)

歴史は繰り返す――。今回の菊地くんをめぐる騒ぎ(とあえて言おう)を見て、そう思わずにいられなかった。すべての記事をつぶさに読んだわけではないが、とくに胸が痛んだのは、スポニチ(2009年10月26日付)が伝えていたこんな事実だった。

「菊池の海外流出に、周囲の風当たりは想像以上に強かった。ある関係者は『メジャーに行けば、花巻東は日本中を敵に回す』と懸念。面談に臨んだ国内12球団は声をそろえて『まずは国内から』と訴え、学校や関係者には大リーグ行きを批判する投書が届いた。インターネット上では菊池を中傷する書き込みもあった。『このような形でメジャーに行っても応援してもらえるのか』と漏らすほど、心は傷ついた。」

気の毒に……。人生の岐路に立ち、自分の来し方行く末を真剣に考える18歳の若者を、なぜ静かに見まもり、応援してあげられないのか。今回の菊地くんの決断自体は、こうした外部からの圧力のせいではなく、あくまでも自分で熟考した結果だと思うし、上原もそうだったように、迷うくらいならまだ異国に飛び出すには時期尚早だったのだろうから、賢い判断だったと思う。

ただ、このような事例はこれからもっともっと増えてくるに違いないのだ。制度の整備については、どうすればいいのかわたしには当面のアイディアがないが、せめて、関係者以外の者は固唾をのんでじっと見守るぐらいの気遣いをしてほしいと切に願う。

毎日30ページは必ず本を読むという菊地雄星くん(『高校野球小僧 2009夏号』)。野球に打ちこむ一方で、人間的な器にはまだまだ広がりがありそう。これから彼がプロの世界に飛びこんで、どんな風に成長し、それをどんな風に表現してくれるのか、おおいに楽しみだ。大きなケガをせず、日本でも、そしていつの日かアメリカでも活躍できるような、でっかい人物に育ってほしい。