O's:キム・ソンミン契約問題まとめ
なんやかやとうだつのあがらない(?)オリオールズが、韓国球界をお騒がせしている件、今日、大リーグ機構からの処分が発表されたので、一応これまでの経緯をおさらいしておきます。
ただ、ハングルが読めないのでどうしても英語ソースに頼らざるを得ず、そのせいか今ひとつ全体像が見えないというか、よく主旨がわからないようなところがあります。なのでソースのはっきりしているものを中心にまとめておきます。(日付はアメリカ時間)
1月30日 オリオールズは、韓国の17歳、高校2年生のキム・ソンミン(金聖民)投手とマイナー契約を結んだことを発表。契約金は55万ドル。韓国野球委員会(KBO)はこれに対し、青田買いであるとして激怒。(ニッカンの記事)
2月3日 ダン・デュケットGM、MASNのインタビューに答えて「非常にいい変化球があり制球力もある。一流の素質をもった左腕」と賞賛。しかし韓国球界からの抗議には一切触れず。
2月7日 KBOが大リーグ機構へ抗議文書を送付。オリオールズが何の連絡もなくキムと交渉、契約したことに不快感を表明。(ニッカン)
2月9日 KBA(韓国野球協会)、オリオールズのスカウトに対し、同協会主催試合の会場への立ち入りを禁じる決定。同時にキム・ソンミンを韓国球界から追放処分に。
こちらの韓国記者のツイートによれば、MLBはKBOに選手の身分照会をし、断りを入れてから契約交渉に入らなければならなかった。オリオールズはそれを怠り、さらにデュケットGMが謝罪の態度を見せないことが韓国内の怒りをこじれさせたもよう。
2月10日 デュケットGM謝罪の声明を発表。
「オリオールズとキム・ソンミン投手との契約の過程で、身分照会の手続きを不注意により怠った(unintentional breach)ことに関し、球団を代表してKBO、KBAに心からおわび申しあげます」
2月15日 MLBがオリオールズへの処分を発表(MASNの記事)。罰金(金額は不明)を課すととともに、キムとの契約を保留にし、30日間、球団とキムとの接触を禁ずるというもの。(接触禁止の制裁主体がイマイチわからないのですが、多分MLB機構だと思います。韓国側ではなく。)
でもって、今回、大問題になっていますが、過去に前例があったそうな。こちらの韓国筋の記事によると、2008年、エンゼルスがJang Pil-joon(張弼俊)投手とマイナー契約を結んだ際にも身分照会を怠ったせいで1か月の接触禁止が命じられたとのこと。しかしその間、他にチャン投手と契約しようというチームが現れなかったため、結局エンゼルスに入団したそうで、今回もそうなるのではないかとしています。つまり制裁の形をとってはいるが、かなり形式的なもののようです。(張弼俊の漢字表記は「野球長文置場」のztnetyさんにツイッターで教えていただきました。ありがとうございます。)
あと奉重根(ポン・ジュングン)投手も高校を中退してアトランタ・ブレーブス入りしたようですが、そこらへんの経緯はよくわからないので、名前だけ記しておきます。
ここまでの経緯を見て感じたことなど:
◎「身分照会が必要」というKBOとMLBの申し合わせ?あるいは紳士協定?というのは、どの程度明文化されたものだったんでしょうか。ちゃんとメジャー各球団に認識されていたのでしょうかね。この件が起きてから、今日、上にあげた韓国ソースからエンゼルスと張弼俊の話が出るまで、アメリカ側のソースではそんな前例があることは一切語られてませんでした。2008年のときはさしたる問題にもならなかったのか?
◎にしても、オリオールズのやり方はまずすぎました。GMが謝罪声明でほのめかしたように、申し合わせの存在を知らず「不注意で」規約を破ってしまったのだとしても、契約後すぐにKBOが不快感を表明したのだから、すぐに答えるべきだった。あそこで即座に頭をさげていれば、こんな大ごとにはならなかったと思われます。なぜなら、その規約にしても実質的な内容があるわけではなく、むしろ手続きと「仁義」の問題なので。このあたり「悪いと証明されないかぎり頭をさげない」という西欧的な論理と「仁義にもとれば頭をさげる。頭をさげれば許される」という東洋的な論理の行き違いがあったのじゃないかなあとも思います。
ただ、そういうカルチャーギャップは、「前回のGM時代に韓国の投手と数多く契約して成功をおさめた」("We had a lot of success recruiting pitchers from Korea in my last stop"MASNのインタビュー)と語るデュケットGMなら織り込みずみであってほしかった。
最終的にひと月待ってキムとの契約は成立しそうではありますが、初めて韓国人選手との契約にこぎつけ、日本も含む国際市場への働きかけを活発化させようとした矢先のできごとなので、なんとも痛いつまずきではあります。
また韓国国内では、選手流出への懸念が日本よりさらに強いんだなあ、という感慨などもありますが、これに関しては韓国の実情にくわしいわけではないので、語れるところまでいきません。ただ、これを機に韓国内ではアマチュア選手がメジャーリーグと直に契約することを禁じる動きなども出てきているようです。(実行されるかは定かではありませんが。)
このほかオリオールズに関しては、わたしが〆切でシュラバっているあいだにアダム・ジョーンズとの調停回避とか、大量のマイナー契約とか、ああそれから今朝になってザック・ブリトンが昨シーズンから肩の痛みをひきずっていることが判明したりとか(これはちょっと聞いてブルーになりました)まあいろいろあるのですが、また追々。
投手組のキャンプインは間近だし、和田とチェンも入団したので、もうちょっと暗雲を吹き払うような楽しいニュースが増えてくれないかなと願ってます。