TEX:上原当面残留。ダル到着。
いよいよダルビッシュがキャンプ地入り。
さすがに現地、朝イチから興奮が伝わってきました。
でもその陰に隠れて、ひとつ重要なニュースが。ダニエルズGMが、現在、上原関連も含めてトレードの予定はなく、このメンバーでスプリングキャンプ入りする、と名言したとのこと(記事)。
上原については: "He's a Ranger. I just walked by his locker."(レンジャーズの選手だよ。ちょうど今、彼のロッカーの前を通ってきた。)とのこと。
あっさりしたコメントだ(^_^;;
ESPNの記事によると、上原はトレード話がさかんに取り沙汰されたことに関してこう述べていたよう。"I'm pretty sick of it, but I know this is how it works," Uehara said through a translator. "I have to concentrate on getting ready for the season. This is a good team. I want to play for this team." (ちょっとうんざりしているけど、しょうがないですね。シーズンに集中したい。いいチームだし、このチームのためにプレーしたいと思っています。)
通訳はボルチモア以来おなじみのジョー・バンさん。文句をつける気は毛頭ないのですが、このpretty sick of itっていうのがけっこう強い表現なので、ドキッとしますな(^_^;; いえ、たぶん本人がそういう系の言葉を使ったのだと思いますが、ときには一言一句正直に訳さないほうがいいかもなあと思うこともあります(けっしてウソをつく、ということではなく、少し表現をやわらげるとかね。)
たとえば昨日出たこちらのMLB公式サイトの記事。
トレード話がうずまく中、上原が落ちつかない気持ちを吐露、という記事なのだけど、その中で、トロント行きをことわった理由について、上原がこうコメントしたと伝えています。
"The weather is an issue," Uehara said. "I also know how hard it is to compete in that division."(天候の問題ですね。それに厳しいディビジョンですし。)
おもしろいのは、日本の新聞でこの部分がとりあげられているのを見かけなかったこと。
どういう口調で言ったのかわからないけど、日本人が天気が云々と言いだしたら、だいたいが「くわしい話はしたくないから、天気の話でお茶濁しとこ」っていうサインですのでね。上原としたら、天気の話とお得意の自虐ギャグで適当にはぐらかしたつもりだったんじゃないかと思うんだけど、きっちり英語に訳すと「え、トロント、屋根ついてますけど?」とか「あんたAL東にいたやろ」とか「あっちより西のほうがタフにきまっとるやろ」とか、ツッコミ所満載なわけでして(^_^;;(^_^;;
でもまあ、上原はけっして口がうまい方ではなく、日本語で日本人に話してたって、いろいろ誤解されたり悪くとられたりすることが多々あったわけなのだから、このへんはスルーですね。要は、体調を万全に保ってしっかり投げ続けること。オリオールズでも最初の1年はケガに泣いて、2年契約のあと契約更新はよもやあるまいと言われたのを、みごとにくつがえして、3年目の契約とファンの心をがっちりつかんだわけだから。
今度も、自分の居場所をつかみとってほしいです。がんばれ!
そんなわけで、ダルと入れ替わりになることなく3人のご対面。
……ってなんで、着がえ途中なんですか、上原さん! 建やんもシャツ姿だし。ぱりっとしたダルビッシュの両脇で、やけにラフな先輩ふたり(笑)。しかし大きいですな、ダルビッシュ。そして3人ともツイッターアカウントを持っている、と。ほかに日本人メジャーリーガーでツイッターやってる人いませんよね? たまたまレンジャーズに集結したのね。
そしてこちらは、今日、ダルビッシュの球をブルペンで受けたルイス・マルティネス捕手が、日本のメディアに取材されているところ(をESPNが撮影したものw)。しばらくはこうして、ダルの触れたものがすべて話題の中心になっていくわけです。ちなみにマルティネスは今オフにパドレスからトレードで移籍。26歳。グレッグ・マダックスやヒース・ベルのブルペン投球も受けたことがあるそうで、今日のダルビッシュに関して言えばカッターとツーシームがよかったとのこと。
さらに、これは日本のスポーツ紙にも写真が出てますが、ダルは同い年のホランドとキャッチボールをして、「英語を教えて」と言ったそうな。ホランドのコメントがおもしろいです。
「英語を学びたいっていう気持ちがあるのはいいことだよ。親しみやすいやつだね。とっつきにくい感じじゃない(He’s not standoffish. )。向こうからどんどん近づいてきてくれる。ふつうの人だよ( He’s a normal person. )。すぐに溶け込むんじゃないかな。」
どんだけとっつきにくいやつだと思われてたんだか(笑)。まあホランドくんにまかせておけば心配なさそうです。さらにこんなコメントも。
キャッチボールで、ダルビッシュが狙いをはずすたびに"Sorry."と謝ったんだそうで、そのことについて:
「球がそれるたびに謝るのはやめたほうがいい。必要ないからね。いつもいつも、狙いどおりのところに投げられるわけじゃない。みんな人間なんだから。次にちゃんと投げられるようにと思って練習するんだからね」
ええこと言うやん、デレク・ホランド。(元記事はこちら。)
日本人にとって、キャッチボール中に「あっ、ごめん」とか「わりぃ」って口にするのはごく普通のこと。それは「謝罪」というよりも合いの手とか、ちょっとした挨拶程度のものですらあるかもしれません。
でも同時に、「完ぺきをめざすのが当然で、そこからはずれたら自分の責任。だからわびを入れる」という考えがあるのも確かです。
上原も、昨年、トレード後に不調におちいったときこの意識に苦しめられたのではなかったでしょうか。肉体的、精神的にきついなかで、思うように投げられない自分を責めつづけ、わびつづけ、プレーオフ3被弾でついに自分への悔しさのあまり涙してしまった。
日本であれば、周囲もそれを「チームを思う気持ちの強さゆえの涙」と理解してくれたことと思います。でも、アメリカでは「弱さの表れ」としか受けとめてもらえなかった。なぜならば、ホランドが言うようにだれでも(どんな一流のプロでも)ミスをするのがあたりまえで、「ごめん」ではなく「次、ちゃんとやるから見てて」ということこそが、あるべき心構えだから。
ホランドのダルビッシュへのコメントからなぜか上原に話が及んでしまいましたが、意外と文化的に深いものを含んでいるなと感じさせられたひと幕でした。
逆にいうと、日本に来た外国人選手が、エラーしてもけろっとしているように見えたり、打たれても「いい球は投げられている」なんてコメントしたりしてちっとも悪びれないな、こいつ、なんて思うときは、その逆バージョンなわけですよね。まあ、ダン・ミセリのように球場のせいにしたり、浅草観光に行ったりするのは論外だと思いますが(笑)。(ちなみに、ダン・ミセリの日本での最初のセーブ失敗は、上原の勝ち星を消したものでしたのよ。わたし、球場で見てました。)