エイデンハートのグラブとともに:ミゲル・ゴンザレス、メジャー初勝利
記事を読んでいてちょっぴり泣きそうになりました。
今日、メジャー初先発初勝利したオリオールズのミゲル・ゴンザレス(28)。最初にドラフトされたエンジェルスでチームメイトだった、ニック・エイデンハートからもらったグラブを使って投げたのです。
まずは昨日からの流れをかんたんに。
7/5 オリオールズ7-LAA9 ● 負:アヤラ
レノルズ、フラーティー、ウィーターズと3本のHRがとびだして、一時は7対3とリードしたのに、すぐその裏に同点にされる先発ジェイク・アリエッタ。けっきょく負けはリリーフのアヤラについたけど、3回2/3、6失点のアリエッタはあまりにも悲惨。この試合のあと3Aにオプションされました。
というわけで6月30日からの1週間で、トミー・ハンター、ブライアン・マトゥス、ジェイク・アリエッタと、開幕ローテ投手3人をオプションしたことになります。先発防御率はメジャー全体で27位。なんともはや……。
グレインキー獲得交渉にかなり真剣に取り組んでいるなんていう噂も流れ始めるなか、「谷間の先発」のミゲル・ゴンザレスがでっかい仕事をしてくれました。
7/6 オリオールズ3-LAA2 ○ 勝:ゴンザレス(1-0) S:ジョンソン(26) BOX
5月の末に初昇格してから、何度かロングリリーフで投げているゴンザレス。力で抑え込むタイプではありませんが、きちんとした制球力を持っていて、試合を落ちつかせてくれるタイプ。今日はそのいい面がフルに発揮されました。
何より印象的だったのは、たまさかランナーが出てもばたつかないこと。そして味方が点をとってくれたあとに、何ごともなかったかのように淡々と投げられること。けっきょく4回にトロンボに浴びたソロHRだけの、7回3安打、1失点、2四球、6奪三振というりっぱな内容でした。(動画)
打線はCJウィルソンの前におおむね押さえられていたのですが、トロンボの1発が出たすぐ次の5回表、ヒットのベトミット、8球ねばって四球のレノルズというふたりのランナーを置いて、今日ライトで先発のスティーブ・ピアスが3ランHR! これピアスの3号なんですが、そのうちの2本がCJから(笑)。一方、CJの方も今季6本しかHR打たれてないのにそのうちの2本がピアスから。なんなんでしょうね、この得手・不得手の関係は。
8回にゴンザレスの後を引き継いだオデイが2アウトからトラウトに一発を浴び、さらに一、三塁とハラハラさせてくれましたが、代わったトロイ・パットンがモラレスを退けて1点差を保持。9回はJJが1-2-3で締めくくってくれました。
オリオールズは1点差ゲームで今季16勝6敗。8回の時点でリードしていたら 33勝0敗。 先発が7回もったら21勝1敗だそうです。先発メタメタ、エラーボロボロでここまでどうにか地区2位を保っているのは、ひとえにブルペンと、メジャー3位のHRパワーのおかげだということがよくわかります。
そのブルペンもこのごろ、ちょこちょこ点をとられているので、オールスター休みでちょっとリフレッシュして後半もがんばってもらいたいです。
さて、今夜のスター、ミゲル・ゴンザレスについて。
ゴンザレスは1984年生まれの28歳。2004年にドラフト外でエンゼルスに入団。メキシコ、グワダラハラの生まれで、実家もエンゼルスタジアムから車で1時間弱のところにあるそうですので、カリフォルニアの地元っ子なんですね。
冒頭にふれたエイデンハートとは2005年から2007年まで2Aなどでチームメイトとして親しくしていたようです。グラブもそのころにもらったらしい。しかしゴンザレスは2008年、膝のケガで全休し、その年の12月、ルール5ドラフトでレッドソックスへ移籍します。そして翌2009年はトミー・ジョン手術を受けてまたしても全休。いっぽうエイデンハートは順調にメジャーへの階段をかけあがり、2009年、メジャーデビュー。しかし初勝利の夜に、酔っぱらい運転の車に衝突されて短い生涯を終えてしまいます。【訂正:メジャーデビュー自体は2008年。リリーフで登板しています。2009年4月8日はメジャー初先発でした。3-0とリードした状態で降板しましたが、終盤にリリーフ陣が打たれて試合は逆転負け。勝ち負けはついていません。GameLog なおこちらのエンゼルスファンの方の悲嘆と愛情あふれるブログにくわしい記述がありますので、リンクを貼らせていただきます。】
それ以来、ゴンザレスは、エイデンハートからもらったグラブをつねに持ち歩いていたそうです。
「遠征に行くときは必ずあのグラブを持っていった。いつでも持ち歩いているよ。たまに練習なんかで使うこともあったけど、今日は試合で使うのには最高の日だと思ったんだ。
あいつとはけっこう親しかった。心のなかではいつもあいつと一緒にいるし、あいつの家族のことも思っている。家族にとってもかんたんなことではなかったから」
前にも書いたことがあるかもしれないけれど、わたしはエイデンハートが亡くなったときに初めて彼の名を知ったので、ピッチングも見たことがなく、だから何をいうこともできません。でもメジャー初勝利のその日に理不尽な事故で命を落としたという悲劇は、今も痛切に胸にささっています。そういえば、あのあとメジャーリーガーによる飲酒運転がずいぶんあったけど、忘れるなよ、といいたい。被害者になることもあれば加害者になることだってあるのだから。若者の死をむだにするなといいたいです。
えー、ちょっと話がそれましたが、そんなわけで28歳の苦労人、ミゲル・ゴンザレス、今日はほんとうに、ただひとつの試合というものを越える感動を味わわせてくれました。コールアップされたときには「先発候補としては考えていない」と首脳陣が言っていましたが、昨日からの流れと今日の投球で、オールスター後の先発機会も確保したようです。ぜひオリオールズ投手陣に欠けている安定感をもたらしてほしいです。記事やインタビューへのリンクも貼っておきます。
オフィシャルサイト ESPN ボルチモア・サン MASN(インタビュー動画)
ロッカーでチームメイトに待ちぶせされて、シェービングクリームやらゲータレードやらを浴びたようなので、インタビューは私服です(笑)。なかなか男前ですよね。CJとのイケメン対決、と思って見てました。うん、CJに投げ勝ったんだもん。すごいです。
【2013.4.9追記】ニック・エイデンハートの命日だからか、検索して訪ねてくださるかたがあり、わたしもあらためて読みかえしたのですが、いくつか不正確な記述があったので訂正しました。
その他の情報を:
・ブライアン・ロバーツは、右股関節唇損傷。
MRIや造影検査の結果、上の診断。セカンドオピニオンを求めることになりますが、どうも手術になりそう。A-Rodなどが受けたのと同様の手術らしいです。けっきょく今年はもう帰ってこないのだろうか……(T_T)
・クリス・デイヴィスは右僧帽筋の張り
一昨日のダイビングキャッチのせいなのか、ラインナップをはずれているデイヴィスは、僧帽筋を痛めたもよう。「投げるときだけ痛みがある」ということなので重傷ではないようですが。明日、スティーブ・トールソンをコールアップするようなので、どうなんだろう、DL入りなのか。
・ブライアン・マタス(うん、やっぱりこっちのほうが原音に近いか)オプション後最初の登板で好投。3Aノーフォークで9回114球、4安打、無失点、1四球。ハンバーに投げ勝ったそうです。ショウォルター監督も試合後のコメントでマタスに触れていました。安定感が課題であることに代わりはないので、次の登板が大切になりますが、そう遠からずして戻ってこられるんじゃないかと希望を抱かせてくれます。(グレインキーの交換相手として名前があがったりしてたけど、キープしてほしいです。)
・上原、ブルペンで37球。本人のブログでも順調との報告が。もう一度週明けの月曜日にブルペン投球をするようです。そのあとは実戦調整、オールスター明けに復帰という流れでしょうか。レンジャーズ、今日はツインズに負けていました。エンゼルスを破ったオリオールズに対して感謝していただきたいものです(笑)。
さあ、今日はがんばりましたが、明日もまた難敵ウィーバーとの対決。
こちらはハメル、そして明後日はチェンです。できれば前半を気持ちよくしめくくりたい。Go, O's!