静かなオフを経て、オリオールズもキャンプイン
スプリングトレーニング、始まりましたね。いよいよ球春到来です♪
すっかりごぶさたしてしまいましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
MLB情報は毎日チェックし、ツイッターで、いらんことをうるさいほどつぶやきながらも、必死に〆切に向かって走る日々を過ごしておりました。ようやく第1ゲートを通過して、久々にブログに向かえるようになったところです。
2012年シーズンの歓喜のあとやってきたのは、し~ずか~な~し~ずかな~、里の秋、じゃなくてオリオールズのオフでした。
その代わりにといってはなんですが、レイブンズがスーパーボウルで優勝したので、ボルチモア的にはなかなかの盛りあがりだったんですけどね。
アダム・ジョーンズは、レイブンズのポストシーズン、全試合を現地応援。「ラッキーチャーム」なんて呼ばれたりもしていました。
わたしはアメフトはまったくわからないのですが、それでもスーパーボウルは仕事しながら「横目でしっかり」(矛盾)見てました。
大差がついて、楽勝かなと思わせた前半から、ハーフタイムショウを経て、後半まもなくの大停電。これで一気に流れが変わり、最後は「まさか!」というほど僅差の接戦に。
前半を終わった段階で、百戦錬磨のはずのスポーツ記者たちがみんな「なに、この退屈な試合」ってツイートしてましたからね。
これまでどれだけ球史にのこる大逆転やら、奇跡のプレーやら、歴史的なターニングポイントやらを見てきても、目の前のこの試合でそれが起こるとは信じられない。人間って、そんなもんなんだよなあ、とあらためてしみじみしちゃいました。
まあ、だからこそ「予想」というものがかくも難しく、かくも人々の心をかきたてるのだし、じっさいに大接戦や大逆転が起こるたびに、新鮮な気持ちで「奇跡だ」と感動できるのですが。
けっきょく逆転はならず、レイブンズが逃げ切りましたが、なにかスポーツの面白さというものをいろんな形で見せてくれた試合だったなあと思います。
かくしてボルチモアは優勝パレードにわき、そのレイブンズからバトンを受け継ぐ形でオリオールズがキャンプイン。
じつは1月中からかなりの数の選手たちが、サラソタに集結してトレーニングを行っていたんですよね。そして野手組の集合日はまだ2日後であるにもかかわらず、もう今日の段階で、新加入のヤマイコ・ナバロをのぞく野手全員が集まって、バッティング練習などを行っているという状況。よきかなよきかな。
わたくし、〆切を通過したあと、かねてから念願だったR.A.ディッキーの自伝 "Wherever I Wind Up" をオーディオブックでダウンロードして、聴きはじめました。(家事の合間などにスマホで聴けるので便利です。)
で、昨日、ちょうどバック・ショウォルターがレンジャーズの監督に就任するところにさしかかりました。それまでディッキーは、3Aではそこそこの成績を残しながら、セプテンバー・コールアップですらも呼ばれず、あげくは40人ロスターからもはずされて、オフには整体クリニックでバイトをしたり、危険なベネズエラのウィンターリーグで小銭を稼いだりする「4A」の選手でした。
ところが2003年1月、そのオフにレンジャーズの新監督に就任したバック・ショウォルターからディッキーのもとに電話がきます。
1月にメジャーの監督から直電がくるのは、ディッキーにとって初体験。とっさに「何か悪い知らせでは」と思ったそうですが、ショウォルターが口にしたのは「きみは今まであまり顧みられていなかったようだが、まだまだチームを助けてもらえると思っている。今年のスプリングトレーニングではゆっくり見せてもらうよ」というセリフでした。
その瞬間ディッキーは「明日にでもキャンプインしたい!」と思ったそうです。当時、R.A.ディッキー28歳。元ドラ1にしてメジャー経験がほとんどないという選手で、この年齢だったら、とっくに見限られていてもふしぎじゃありません。それが2003年は初めてメジャーに定着して9勝8敗。テキサスでは最終的に大きく花開くことはできなかったものの、ナックル投手になったのもショウォルター監督とハーシュハイザー投手コーチのすすめによるものでした(前のエントリ)。
なかでもこの直電のエピソードは、ほんとうにショウォルター監督らしいです。今もブライアン・ロバーツや、ノーラン・ライモルドなど、ケガから復帰中の選手の動向はこまかく把握してますから、たぶんマメに連絡をとっているのでしょう。そしてみんな「明日にでもキャンプインしたい!」とモチベーションをあげて、1月中から集まってきちゃうわけです。
いくつか、話題をピックアップします。
◎「動かなかった」のはなぜ。
「目立った契約といえばネイト・マクラウスとの再契約ぐらい」「せっかく15年ぶりにPSに進出したのに、なぜその勢いを生かさない」と、ナショナルメディアからは、さんざっぱら叩かれた今オフのオリオールズ。まあ、ね。トロントがど派手に動いたし、ボストンもかなりしっかり補強しましたしね。AL東の状況が昨年よりさらに厳しくなったのは、否定しがたい事実です。
でも、人の動きに合わせて、「動いてますよ」と見せるためだけにトレードやFAの契約をしたくはない、と、デュケットGMもショウォルター監督もくりかえしていました。
根底にあるのは、今のコアメンバー、すなわちジョーンズ、ウィーターズ、ハーディー、ジム・ジョンソンらに対する信頼感。ここに昨年終盤ケガで欠けたマーケイキスが戻り、前半戦にはいなかったマチャド、マクラウスが通年参加する。さらに、手術明けのノーラン・ライモルド(頸椎)とブライアン・ロバーツ(股関節)が戻ってきたら……。ちなみにライモルドは昨日から生きた球でのバッティング練習を始めています。どうか、どうか、今年こそケガの妨げなく1年をすごせますように(なむなむ!)。
一塁は、レノルズを手放してしまって心許ないのですが、クリス・デイヴィスを正一塁手候補としてキャンプインする予定。デイヴィスも「元々、守備には自信があったのに、去年は、初めに失敗が続いて、雪だるま式にミスがふくらんでしまった」と、これまたサラソタに早乗りして連日守備練習に励んでいます。ショートバウンドだよ、デイヴィス。少々ワイルドな送球も捕れる一塁手になってください。
そんなわけで、コアメンバーが戻ってきて、いいパフォーマンスをするのが、今季のチーム作りの大前提。それでもケガはつきもの、ということで、層の厚みを出すために、補完メンバーをマイナーFAや、ウェーバー、独立リーグ、海外リーグなどから大量に採用しています。
これは昨年も行ったことで、「質より量」などとだいぶバカにされましたが、そのなかからミゲル・ゴンザレスやルー・フォード、ネイト・マクラウス、ダレン・オデイ(オデイはメジャー契約)などが登場してきたのも事実。そんな眠れる素材を、今年も掘り起こすことはできるでしょうか。
すべてをご紹介するのは到底ムリなので、変わり種をふたりほど。
☆ヤン・ノヴァク:なんとなんと、チェコ共和国の選手です。契約のニュースを読んだとき「チェコ?!」とびっくりしたのですが、それっきりになっていたところ、スタイリッシュでオタクな(?)MLB情報サイト、Far East Division さんがくわしく調べてとりあげてくださったので、リンクを貼っておきます。体格のいい、素材型の選手であるとのこと。果たして頭角を現すことはできるのか。
☆ラス・キャンズラー:2月5日にNYYからウェーバーで獲得(メジャー契約ですね)。対左の打撃成績(メジャー通算31打席)が.400/.419/.667なのに対し、対右は .212/.254/.273
(同71打席)と、かなり偏っているそう。内・外野、DHなどいろいろなオプションがあるので、マクラウスやベテミットとの併用も考えられるか?
じつは、このキャンズラー、今オフに入ってすでに4回めの移籍なんです(^_^;; 昨シーズンからの動きを追うと、こんな具合になっています。
2012/1/31 TAMからCLEへ金銭トレード
12/21 TORがウェーバーで獲得
2013/1/2 CLEがウェーバーで再獲得
1/4 NYYがウェーバーで獲得
マイナーでもそれなりの数字を残しているので、魅力はある。けれどもオプションが残ってないので、ウェーバーを通さないとマイナーに降格できない。それで「どうかクレームされませんように、なむなむ」と祈りながらウェーバーにかけると、やっぱり取られてしまう、ということのくり返し(^_^;; 果たしてオリオールズはいつまで保有できるでしょうか。MASNの記事にもリンクを貼っておきます。
ちなみに、昨年、こういう羽目に陥ってしまったのがスティーブ・ピアスでした。参考までに(?)そちらの流浪(オデッセイ)ぶりも記しておきましょう。
2012年:3/12 MINをDFA
3/29 NYYと契約
6/2 オリオールズに金銭トレード
7/28 ウェーバーでHOUへ
8/27 NYYへ金銭トレード
12/21 40人ロスターからはずれO's傘下の3Aノーフォークへ。
現在、オリオールズの外野は競争が激しく、メジャー組以外にもザビエル・エイヴァリーなど若手がひかえている状況ですが、それでもピアスは「今はここにとどまりたい。よそに行くことは考えてない」とコメントしています。
「アメリカ人は移動に慣れてるから気にしないだろう」なんて、ついざっくりと考えてしまうのですが、やっぱり各地を転々として、新天地になじむ作業を繰り返すのは、相当精神的に疲れるみたいです。そりゃそうですよね。
◎ルール5ドラフトで獲得のT.J. マクファーランド、監督の目にとまる。
昨年はカブスからライアン・フラーティーをルール5で獲得、1年間ベンチに置いて、ポストシーズンにHRを打つ場面もありました。今年はインディアンズ傘下から獲得したこのマクファーランドを1年間置いておくことができるかどうか。投手陣は、それなりに競争が激しいので難しさもあると思いますが、今日のブルペンセッションでは、ショウォルター監督が、「タイミングのとりづらいフォーム。今日いちばん目をひいた」とほめていました。ストロープとアヤラがWBCで抜けるので、STではチャンスをもらえるでしょう。
◎和田はブルペン入りまで3~4週間。
昨年5月にTJ(トミー・ジョン)手術を受け、今、遠投の距離を70メートルまで伸ばしている和田毅。先日のNHKニュースでは来週にもブルペン入り、と報じていたのですが、チームはあと3~4週間と言っています。
本人は1日でもはやく、とはやる気持ちがあるのでしょうが、春先は先発、リリーフともに手駒が多いので、急ぐメリットがありません。術後1年となる5、6月の復帰をめざして、じっくり仕上げてほしいです。
ショウォルター監督は、練習初日には和田と話をしなかったようですが、「自信をとりもどして、前進しているのが見ていてわかる。もうどん底は抜けたと感じているだろう。今年はきっと力を発揮してくれるよ」と、コメントしています。
昨年、9月にリンドストロームとの交換トレードでD-backsから獲得し、レンジャーズとのプレーオフで好投したベテラン左腕ジョー・ソーンダースが、けっきょくマリナーズと契約しましたが、さほどな高額ではなかったのにあえて深追いしなかった裏には、あるいはこの和田の存在もあるのかなと感じます。
チームの期待を背負って、いえ、なにより自分の望みを果たすために、今年はぜひ復活して、これぞ和田毅という投球を見せてほしいと願ってやみません。