Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

勝利を呼ぶハイタッチ:上原

日中に仕事をすることを思うと、なかなか夜の試合は見られず、一昨日もボストンの試合が早々と夜中の12時に始まることを知りながら寝てしまいました。現地11時などというめずらしい時間に試合開始になるのは、ボストンマラソンの日だから。そうか、ボストンマラソンなんだ、と少しにっこりして布団に入ったのに、朝起きてまっさきに目にしたのは、爆弾事件の悲劇をつたえるツイッターのニュース。しばし呆然としてしまいました。

まだくわしいことが何も判明していないので、国際テロなのか国内の何らかの過激派なのかもわかりませんが、8歳の男の子を含む3人が亡くなり、100人以上が負傷したという事実にはかわりない。いったい不特定多数の人が集まるこのようなイベントで、どうやって爆弾持ち込みを防いだらいいのか。野球場では今も入場時に手荷物検査や、ときには金属探知機による検査が行われていますが、今後そういうセキュリティもまた強化せざるを得ないのでしょう。人々の喜びの発露であるスポーツの祭典を標的にするこのような行為に、なんともいえない怒りと悲しみを感じます。

ふう。まあ、気をとりなおして……。

上原、オリオールズ戦ではアダム・ジョーンズにタイムリーを打たれて引き継いだランナーをひとり生還させてしまいましたが(失点は前の投手についています)、その後2試合、またしびれる場面でのクリーンな登板でチームの勝利に貢献しています。

4/13 BOS2 - レイズ1 BOX

上原、同点の9回、クローザーのハンラハンが四球のランナーをふたり出したあと、無死一、二塁で登板。無安打、無失点、1奪三振防御率0.00。

1 ローニーを4球め、アウトローのみごとなストレートで見逃し三振! 思わず「うわっ」と声が出るような球でした。

2 エスコバーを2球め、ファストボールでライトフライ。

3 ライアン・ロバーツを3球め、高めのファストボールでセカンドフライ。指さして大声で指示。

 ブログ  動画

動画でも「ウエハラがハンラハンを救いました」と言っていますが、まさに。本人は十回から行くと言われていたようなので、スクランブル登板には「ちょっと驚いた」と、現地の新聞にコメントがのっていました。(あとで紹介します。)ちなみにハンラハンは、この登板のあと「じつはハム痛をがまんしてたんだ」ということで、今日(現地16日)DLへ。その間のクローザーはベイリーがつとめることになるようです。ファンはみんな「ウエハラにやらせればいいじゃない」と言っているのですが、やはりシーズンの早い段階から連投させることに対して、監督はちょっと慎重になっているようです。

ちなみにこのあと試合は延長に入り、十回は田澤がナイスピッチ。その裏、レッドソックスがふしぎな内野安打で勝ち越してサヨナラ勝ちし、田澤に2勝めがつきました。これ、マドン監督おとくいの内野5人守備なんですよね。うまく網にかけてショートが打球をおさえたのに、なぜファーストはベースについてなかったんだろう? まあ、ついていてもタイミングは微妙だったかもしれないけど、なんだかせっかくの作戦が中途半端に終わっていて釈然としないのでした。

【追記:コメント欄で教えていただきました。ワンナウトだったからなのでした。すみません。】

4/15 BOS3 - レイズ2 BOX

上原、2-1と1点リードの8回に登板。無安打、無失点、1奪三振防御率0.00。

1 エスコバーを3球め、高めのファストボールでセンターフライ。ちょっと大きめだったけど、危ないというほどではなかったか。

2 フルドを3球め、スプリットで弱いファーストゴロ。上原がベースカバーに走って2アウト。当てるのがせいいっぱいというゴロでしたが、ベースカバーに走るといつもヒヤヒヤします(^_^;;(本人もブログで同じこと書いてました。)

3 ケリー・ジョンソンを6球め、スプリットで空振り三振! みごとな落ちでした。

 ブログ  動画(mlb.jp:日本国内のみ)

ハンラハンが投げられないため、ベイリーがクローザーへ。上原は1点リードの8回頭からというセットアッパーとしての登板でした。えー、試合はこのあと9回にベイリーが同点にされましたが、そのあと続けてランナーを出すことはなく、被害は最小限に。するとその裏ナポリの特大二塁打でまたしてもサヨナラ。うーん、BOSOX調子いいのう。ハンラハンも、ベイリーもなんかそこそこ打たれていて、抑えがあかんという問題はありつつも、ほかに上原と田澤がいるんだから、ある意味怖いものなしなのでは。あとは、その持ち駒をどう無駄にならないように使うかということですね。

前回のエントリで、上原をフィーチャーした記事をいくつかご紹介したのですが、ハンラハンの出したランナーをクリーンアップした13日の試合のあとも、いろいろすごかったです。ファンはみんなコウジコウジとツイートしているし、記事もあちこちに出るし。それで日本のスポーツ紙をあさってみたら、現地取材の記事がひとっつも――本当にひとっっっつもなかったという。あんなにすばらしいピッチングだったのに、どゆこと? 腹立たしいので、現地の記事をまとめてご紹介します。

ボストン・ヘラルド〉Koji Uehara’s up for some fun

これはホントによく書けた傑作な記事だったので、ちょっとくわしく――。

〈ニューヨークでの開幕戦、6回にレッドソックスが相手を三者凡退にしりぞけてダグアウトに戻ってくると、(テキサスから移籍の)マイク・ナポリはダスティン・ペドロイアに向かって大声でさけんだ。

「おい、早くもどってこいよ! おもしろいことが始まるぞ! 見てろ見てろ!」 

同じく元テキサスのデンプスターも、バックホルツに声をかけていた。

「これは見のがせないよ」

まもなく、レッドソックスの面々がだれひとり見たことのないようなシーンが繰り広げられた。コウジ・ウエハラがすさまじい勢いでダグアウトにひきあげてきたのだ。

エルズベリーが言うところの「ウォー・クライ」をあげながら、上原はグラブと素手でチームメイトにバチバチとハイタッチしてまわった。

「ぼくは列の最後にいたけど」と、ペドロイア「うわー、手が折れる! と思うほどだったよ」

レッドソックスは目下勝率6割を維持しているが、最大の、そして最高の驚きは上原の働きだろう。ビートルズヘアのおちゃめな38歳は、型にはまった日本人選手のイメージを根底からくつがえした。

昨日はまた圧巻のピッチングだった。ハンラハンが無死からランナーふたりを出したあと登板すると、あとのランナーをみごとに片づけてみせたのだ。

すると上原は、宮崎駿の『もののけ姫』か『千と千尋の物語』の怪物にでも変身したようないきおい。トレードマークのハイタッチで祝福だ。

「ぼくはしっかり力を入れてるよ。でないと腕がもげちゃうからね」とミドルブルックスは笑う。「グラブと素手と交互にバチバチやるから、なるべくグラブ側に立つようにしてる。とにかくバチバチやってつばは飛ぶわ、日本語は飛ぶわ、大さわぎだよ。ふだんはおだやかで面白い人だけど、相手を片づけてもどってくると、一気にはじけちゃうんだ。最高だよ」

首脳陣も、上原と契約したとき、こんなおまけがついてくるとは思わなかっただろう。知っていたのは元チームメートのナポリとデンプスターだけだ。ナポリは語る。

「厳しい状況を切りぬけると、よけいに大興奮するね。トロントでは通訳が水を一杯わたそうとしたんだけど、それをはねとばしてそこらじゅうに水が飛び散ってた。ジョニー・ゴームズは大笑いだし、コウジは日本語で叫んでるし。とにかくいいやつだよ。チームも盛りあがるしね」

上原が何を叫んでいるかはだれにもわからない。ナヴァは「レッツゴー!」と耳にしたというし、バックホルツはわけのわからない言葉だったと証言する。

「ただわめいてるだけだよ」とナヴァ。「チームメートはみんな大笑いだ。ほんとにゆかいなやつだよ。英語も少しは知ってるけど、言い方が面白い。ほら、何をしても面白いやつっているだろう? 彼はそういう人なんだ」

上原は「しょっちゅう手首をアイシングしてるよ」とジョークをとばし、期待にこたえてわざと派手にハイタッチをしているようなところもあるが、デンプスターはこう主張する。

「上原が心の底から楽しんでやってるってことはわかってほしい。メジャーでは感情を表に出すことをよしとしないし、いいプレーをしてもにっこりしちゃいけないといわれたりする。でもそれは違うと思うんだ。コウジは全身全霊で野球をしてるし、それは見ていて楽しい。最高だよ」

イチローダルビッシュとちがって、上原には日本人メディアが群がることはない。昨日の試合にも3人しかいなかった。インディアンズの3Aにいるダイスケ・マツザカのほうが取材が多いくらいで、親しい人物によれば、上原はそんな状況に憤慨しているともいう。

だがこのままいけば、上原が気にすることもなくなるだろう。

今われわれはまさに、『民衆のヒーロー』の誕生を目の当たりにしているのかもしれないのだから。〉

ボストン・ヘラルド Sunday, April 14, 2013 John Tomase)

ボストン・グローブ:Koji Uehara firing the ball, and firing up the Red Sox

〈コウジ・ウエハラがマウンドに立つたびに、デイヴィッド・ロスは「来るぞ」と思う。上原の登板につきもののあれが。

上原が相手を無失点におさえてマウンドをおりてくると、ベンチはハイタッチ祭りになるのだ。

「そりゃーいやでも気がつくでしょ。正直、コウジが相手をきれいに片づけてもどってくると、ぼくも燃えるからね。いい登板を続けてほしいよ。もちろん勝利にむすびつくけど、それだけじゃなく、あの雄叫びをききたいから。エネルギーがわいてくる。最高だよ」

(中略)

15日の試合、上原は9回に肩をつくってはいたが、すぐに登板するとは思わず延長にそなえるつもりだった。ところが無死一、二塁での緊急登板。

「ちょっと驚きました」と上原は通訳を介してコメントした。「そんなに球数を投げなくても準備はできるので、いつもどおりでしたけどね」

危機管理こそが上原の真骨頂。9球で三人の打者を片づけると、上原は試合を落ちつかせた。

「とにかくストライクを投げようと。なるようになれというぐらいの気持ちで、どんどん攻めていきました」

次の回、ビクトリーノの内野安打でエルズベリーがサヨナラのホームを踏んだが、試合のキーポイントは上原の登板だったとエルズベリーはいう。

「ノーアウト一、二塁で登板して次の3人を片づけたんだからね。あれは大きかった」

(中略)

これで上原は自己最高の16試合連続無失点。2年前にブルペンに移ってからの通算防御率は2.31で、これはアメリカン・リーグのリリーバーでは第2位の成績だ。トップはマリアーノ・リベラの1.90。

「ウエハラはこわがらずにどんどんストライクを投げる」とファレル監督。「うちのブルペンにいてくれて幸いだよ」

登板を終えると、ウエハラはダグアウトに戻って雄叫びをあげながらところかまわずハイタッチをくりだす。

「ウォークライってぼくは呼んでる」エルズベリーはいう。「いい登板をして、相手を無失点に抑えて、するべきことを全部して戻ってくるんだから。ぼくらもそれで燃えるんだ」〉

(By Julian Benbow Globe Staff / April 13, 2013)

あかん、こんなことやってるとだんだんボストンにくわしくなってくる。エルズベリー、いい子ね、とか(笑) ま、いいか。

そういえば、この日の試合には上原家のぼうやも応援に来ていたようです。試合後に番記者のピートさんがこんなツイートを。"Uehara's son Kazuma, who looks to be 7 or 8, watched his dad get interviewed then gave him a high five. So it runs in the family."(7、8歳ぐらいになる上原の息子カズマ〈一真くんですね〉が、インタビューを終えたパパにハイタッチ。父親ゆずりだね。)

うん(*^-^*) なんかいいな、というのと、あ、家族来てるんだというのと、両方思いました。一真くんは2006年WBCの準決勝と決勝のあいだぐらいのすごいところで生まれて、当時上原は、女の子だったらペトコ・パークにちなんで「ペト子」にしようかな、なんて冗談も言っていた記憶があります。男の子でよかった(笑)。

【追記】このブログはどうしても上原中心になってしまいますがコメント欄でダルビッシュvs岩隈対決のくわしい話などもいただいてますので、そちらもぜひ→リンク。みなさまからのコメントもこのブログの大切な一部です。感謝。