Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

ショウォルター監督、にんまりの裏にストーリー。【追記:トレード成立】

けっきょくホームでの対NYY3連戦はスイープ。ホームのNYY戦でスイープを果たしたのは2005年4月以来。しかも土曜日はFOX TVの放送、日曜日はESPNのサンデーナイトベースボールで全国放送(この枠での放送は2005年以来だったらしい)と、なかなか晴れがましいウィークエンドでした。観衆も、土日とも4万人以上(土曜日は4万6千)の満員札止めで、昨年のプレーオフのときのように、スタジアム全体がビリビリと帯電してました。

土曜日の試合、クリス・デイヴィスが30号を打ったあと、FOXが抜いたバック・ショウォルターのこのほほ笑みをおぼえておられる方もいることでしょう。(ツイート中のリンクをクリックするとGif画像が開きます。)

MASNロック・クバトコ記者のレポートによれば、この裏にはなかなかおもしろいストーリーがあったようです。

2戦め、3戦めをふりかえります。

6/29 vs NYY 11-3 ○ 勝:ブリトン(2-2)

初回、ザック・ブリトンが2アウトから3連打で満塁にされるもどうにか踏みとどまり、やれやれ今日もあやうい橋をわたるのかと思っていたら、その裏から一気の攻勢。マチャド、マーケイキス連打で一、二塁から、まずはアダム・ジョーンズが、サードのグラブのぎりぎり先を抜けるレフト前ヒットで1点。そしてクリス・デイヴィスが2-1からアウトコース高めの球を、いつものようにふわりとスイングしてガツンと左中間へ。ボールはオリオールズブルペンに飛びこみました。このときブルペンにいたケヴィン・ゴーズマンは、デイヴィスが打つ直前「こっちにボールがとんできたらどうしよう」と思ったそうです。果たせるかな、HRはその目の前でバウンド。あとでリンクを貼りますが、動画をよーく見ると、びっくりしたようなゴーズマンもちらっと映っています(笑)。

そして3回にはクリス・ディカーソンのタイムリーと、もはや伏兵とは呼べないライアン・フラーティーの6号3ランで5得点。9-0。NYYのフェルプスはけっきょく2回1/3で降板になりました。

フラーティー、シーズン当初は不調で初の3A落ち(ルール5ドラフトで指名されたので昨年は落とせませんでした)も経験しましたが、復帰後はバットに守備に大活躍です。翌30日の試合でも、初回にイチローのヒットを阻止する美技がありました。余計なことしやがってと思われた方も多いことでしょうが、わたしはすなおにうれしかったです(^-^) ロバーツの復帰で立場が微妙なフラーティではありますが、今の調子なら落とされないんじゃないかなあ。

そして6回表、ブリトンがふらふらし出して2失点し、どれだけ点差があってもやっぱりいやな気分になりかけたところ、その裏デイヴィスが、こんどはノヴァの、やはり外めのカーブをライトにひっぱって30号ツーラン! いや~、警戒されてもされても打つというのがすごいです。29号、30号をまとめてどうぞ。

6月中に25二塁打と30HRを達成したのは、メジャー初だそうです。すげー。

じつはこの2本のHRの陰にはデイヴィスの守備のミスがありました。今季、デイヴィスはこの日を含めてエラーを3つしているのですが、その試合で10打数4安打3HR7打点なのだそうです。

この日、1回表には、カノーのゴロをさばけず内野安打にしてしまいました。すると1回裏に3ラン。6回表には、オーバーベイのゴロをはじくタイムリーエラーでカノーがホームイン。するとこの回が終わったとき、デイヴィスは、ショートのハーディに向かって「あれをミスるなんて。これじゃ、もう1本HR打たないとな」と言ったのだそうです。

ハーディの打順はデイヴィスの次の次。そこで6回裏、デイヴィスが打席に立つと、ハーディは自分の打順にそなえながら、今しがたのデイヴィスのひとことをショウォルター監督に伝えました。その直後にドカーン! そんなわけで、ベースを回るデイヴィスを見ながら、ショウォルター監督は思わず笑みをこぼしたのでした。ソースはMASN、ロック・クバトコ記者のこちらの記事。NHKでも「ショウォルター監督が笑顔を見せるのは珍しいですねえ!」と言っていましたが、この記事にもあるように「毎日ベンチで大笑いしている。ただ、みんなの見ている前ではあまり笑わないだけ」だそうです。その、たまの笑顔がたまりません♡

あ、あと、この日5回2/3で降板したブリトンのあとを受けて2回1/3を3安打無失点に抑えたジェア・ジャージェンスはおみごとでした。翌日、ブライアン・ロバーツの昇格にともなって、また3Aに降格になりましたが、ブルペンが疲弊したときに彼のような人が3Aに控えていてくれるのは非常にありがたいです(いや、もちろん本人はずっとメジャーにいたいでしょうが……)。

6/30 vs NYY 4-2 ○ 勝:ティルマン(10-2) S:ジョンソン(28)

今季4/4、タンパでの開幕シリーズ3戦めで膝裏の腱を断裂し(当時のエントリ)、チームを離れていたブライアン・ロバーツが、9番DHで復帰しました。ホーム開幕戦を向かえる前にDL入りしてしまったので、カムデンヤーズでのプレーは今季初めて。最初の打席では温かい拍手に包まれました。この日は1安打1打点。出れば仕事するのがロバーツなのです。ときどき休憩を入れながらでいいので、なんとか9月、そしてできるなら10月にプレーしてもらいたい。弱い時代をずっと戦ってきて、昨年プレーオフにケガで出られなかったロバーツとマーケイキスには、なんとか今年、あの興奮を味わってほしいです。

さて、この日、ヤンキース先発は黒田。イチローもいますし、日本中がNYYを応援しているであろうなか、ひとり(ってわけじゃないにしても)オリオールズを応援するわたくし。

でもね、この日の中継局であるESPNオリオールズ推しはすごかったなー。まあ、ショウォルター監督が(ご多分にもれず)以前アナリストを務めていたということもあるでしょうが。あと、この日のアナリストのひとりハーシュハイザーは、かつてショウォルター監督のもとで(TEX時代)投手コーチを務めていましたし(そう、RAディッキーがいたころですね)。そういや、5月にファン投票が行われた "Battle of Uniforms"でも、オリオールズ・ユニが決勝でカージナルスを破ってNo.1と認定されたんですよね。まあ、あれはファンがマメに投票したんでしょうけど。

ほかにもこの日は試合中にいろいろ取材映像が流れていました。オリオールズの選手たちがクラブハウスに置かれたピンポン台やプール台で遊ぶ姿や、短パンにスニーカーでリラックスして試合前練習を行う姿などなど。どれも、ショウォルター監督の以前の姿を知る人たちにとっては、ちょっとした驚きのようです。それで放送席でも「バック・ショウォルターは、これまでいろいろなチームで『ターン・アラウンド(再建)CEO』の役割を演じてきましたが、オリオールズではそれに加えてお父さんというか、おじいさんというか、そんな立場におさまっているように見えますね」というコメントもありました。(おじいさんは失礼だと思いますけどね。まだ50代なんだから。)

これはMASNか何かでしたが、ショウォルター監督が記者に「以前のチームで『ピンポン台をクラブハウスに置いてもいいですか』って聞かれたら何と答えていましたか?」と問われたとき「そんなこと誰もききにこなかったよ」と答えたという話がすごく印象に残っています。今、オリオールズの選手たちは、すごく自然に監督にアプローチして、試合中にもいろいろ話しかけたりしています。ショウォルター監督自身が年を経て変わったというところももちろんあるでしょうが、相性という面も大きいような気がしますねえ。

そんなこんなで試合は、1回表にいきなりマニー・マチャドの弾丸ライナーの6号ソロで動きます。この日、マチャドは38本めの二塁打も放ちました。シーズン記録は1931年、アール・ウェブの67本。この記録も視野に入ってくるんじゃないでしょうか。ただ、中継でも言ってましたけど、今後この二塁打のうちかなりの数がスタンドにまで届くようになるかもしれません。まだ体が大きくなりそうですからね。

そして2回にはデイヴィスの31号。ゲムデにはシンカーとありますが、球種は何であれ、ちょっと外に投げきれずに真ん中寄りに入ってしまったように見えます。続く3回はマクラウスがカーブを6号ソロ。すべてソロではありますが、3イニング連続だとダメージは大きいです。

いっぽうオリオールズのティルマンは、2回に満塁から押し出しという大ピンチがありましたが、イチローをインハイの球でショートフライに打ち取ってピンチを脱出。ほかにもハッとするような打球があったりしましたが、球に力があり、6イニング5安打2四球2失点。三振6。5月以降はずっと頼りになるピッチングをしてくれています。

守備でも見せ場が多々ありました。ティルマン自身のうしろむきキャッチ。そしてマクラウスがハフナーをセカンドでさしたプレー。

だからあとは、投手陣をどうやってもう一段階押し上げるか。それが最大の課題なんですよね。先発陣は、春先に比べると少しずつよくなってはきましたが、ブルペンも昨年があまりによすぎたせいか、あるいは春先に先発陣のカバーでかなり投げたせいか、まだ少しこわい。このへんをいかにうまく整備していくかだと思います。

あと、監督、選手ともに試合後コメントしていましたが、この日はファンがほんとにすばらしかった。ぐっと集中して試合に入りこんで、要所要所でまさにサポーターのような声援を送っていました。

チャンスでは、この “Seven Nation Army”チャント 。これ、昨年のプレーオフで初めてきいて、なんだ?と思っていたのですが、スポーツの応援でよく用いられるようですね。マイアミ・ヒートの応援歌と思っている人もいるようですが、べつにそういうわけではなく、ボルチモアでは2011年からレイブンズの応援に使われているそう。それが昨年のプレーオフで自然発生的に歌われたということみたいです。なんかかっこいいんですよね、あれ。混じりたい(笑)。

そんなわけで、わりと勝っても負けてもさらりと結果を受けとめてつぎに向かってきたO'sもこの日ばかりは珍しくみんなが興奮気味だったように思います。

とはいえ、ここがゴールではもちろんありません。ちょうど折り返し地点に到達しただけのこと。46勝36敗。まだまだ先は長いです。

その他の話題を。

◎チェンは復帰間近。

6/29に2Aブーイで、故障後初の実戦登板をしたチェン。この日はナショナルズ傘下のセネターズが相手で、同じくDL中のブライス・ハーパーとも対戦しました。結果は5回5安打2四球4失点。三振5。この4失点はすべて4イニングスめにとられたもので、5回はまた立ちなおったようです。投球数は79球で球速は91、92マイル。ときおり93マイル出ることもあったとのこと。痛みはまったくなく、本人は「すべての球種を試せたし、調子もよかった」とコメント。失点した4回は、変化球が決まらず四球でランナーをためて、ファストボールを打たれ、という流れだったようです。

ブライス・ハーパーとは3回対戦して、見逃し三振、四球、ショートフライ。

チームは、このあとシカゴでチェンを復帰させるか、もう1試合マイナーでの登板を課すか、検討中だとのことです。

【追記7/3 もう一度2Aで登板してから昇格することに決まったようです。つぎは90球投げるのが目標とのこと。】

◎和田も実戦。

6/29とあるので、チェンと同じ日。こちらは3Aで実戦登板して6回1/3を5安打2失点とまずまずのピッチング。しかし和田の名前、地元紙などでもなかなか上がらないんですよねー。おわかりのように、今、オリオールズはDLからの復帰組が多くて、そのたびにだれを落とすか頭を悩ませているところ。この入れ替えの波が一段落してから、和田の順番……かなあ。

◎ノーラン・ライモルドは明日復帰。

ハムストリング痛でDL入りしていたライモルドも明日復帰の予定。だれと入れ替えになるのか……バレンシアが一番の候補かもしれませんが、ホワイトソックスでは左腕と3回対戦するようで、右打者のバレンシアをキープしたいという思惑をもある模様。ロスター関係ではサプライズの多いオリオールズなので、今回も蓋をあけてみるまでわかりません。

さあ、1日休みをおいて、あすからはシカゴでChiSoxと。そのあと7月中はまた先を見るとくらくらするような厳しいスケジュールが待っています。

Stay in the moment. Stay hungry.

目の前の試合を戦うことだけを考えて、一歩一歩進んでいってほしいです。

Go, O's.

【追記7/3】

「投手陣の整備」と「ロスター関係のサプライズ」が実現(^_^;;

朝起きたら、カブスのスコット・フェルドマン+スティーブ・クレベンジャー⇔ジェイク・アリエッタ+ペドロ・ストロープ+ $388,100というトレードが成立していました。(お金はインターナショナル・サイニング・ボーナスの一部だそうです。よくわからないけど。)くわしくはこちらを。

フェルドマンは、昨年までレンジャーズの便利屋(ってことばは悪いけど)としてフル回転してました。あるときはロングリリーフ、あるときは先発、与えられた役割をもくもくとこなす仕事人。今季はカブスに移籍して、先発として7勝6敗、3.46 ERA, 6.6 K/9, 2.5 BB/9, 0.99 HR/9 と、非常にまっとうな成績を残しています。

クレベンジャーはマイナーの捕手。ボルチモアの地元っこで、小さいときからのオリオールズファン。3Aに合流しますが、今回のトレードでは「夢がかなった」と涙ぐむほど喜んでいるとのこと。

アリエッタは、いわずとしれた未完の大器。2009年にはBAのプロスペクト60何番だかにリストアップされたこともあり、昨年は開幕投手でした。90マイル中盤から後半のファストボール、大きなカーブなどスタッフはすばらしいのですが、2人のアリエッタが試合ごとに、あるいはイニングごとに交代するのが悩みの種で、どうしても克服できませんでした。いわゆる"Change of Scenery"というものが、たとえばクリス・デイヴィスに効いたように、力を持っているとしたら、アリエッタほどそれを必要としている選手はいないでしょう。がんばって、持てる才能を開花させてほしいです。

ペドロ・ストロープは、2011年夏、上原⇔デイヴィス+ハンターの歴史的トレードのあと、8月にマイケル・ゴンザレスのPTBNLとしてレンジャーズから移籍しました。(その年は、ゴンゾーがワールドシリーズロスターに入り、コウジがはずれるという皮肉……。)制球がネックと言われていたストロープ、トレードされた年と昨年終盤まではすばらしい投球でセットアッパーをつとめ、オリオールズの初のポストシーズン進出に大きく貢献しました。

今春はドミニカチームの一員としてWBC優勝に大きく貢献しましたが、レギュラーシーズンが始まってからはどうにも制球さだまらず。一度腰をいためてDL入りしましたが、復帰後もぱっとしないピッチングが続いています。カブスで調子をとりもどすことができるか。ケヴィン・グレッグとは1年たらずのあいだチームメートだったと思いますが、グレッグもトレードがほぼ確実と言われていますから、今回もまた短期間の再会に終わりそうですね。