Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

上原、ピンチの登板で13セーブめ

ひさびさの上原エントリです。MLB.jpで7月初めから「上原浩治の投球解説(全球映像付き)」という、本人ブログと映像の連動企画が始まったので、ゲームログにかんしてはすっかりおまかせモードになっちゃいまして――と、人のせいにしてみる(^_^;; こちらのリンク集にも入れましたので、まだごらんになっていない方はぜひチェックしてみてください。 

さて、いよいよ今季も残り30試合ばかりとなりましたが、なんとオリオールズvsBOSは9試合も残されています。1/3やん! だれがどう見たって、大きな意味を持つ対決になるのは間違いありません(ユーウツ(-_-;))。明日からがその第1弾。その前に、先日上原が13セーブめをあげた試合をちょっと振り返っておきましょう。

8/24 BOS - @LAD 4-2 上原、13セーブめ ERA 1.24

この試合、初回に4点を先制したBOSは、レスターの好投でそのまま7回まで4-0とリード。しかし8回1死からクロフォードを歩かせると、そこで田澤に交代します。田澤はプイグにヒットを打たれて一、二塁としますが、つぎのエリスを三振にとり2死に。ここでまたブレズロウに投手交代。ところがそのブレズロウがAゴンにツーベースを打たれて4-2と2点差に。さらにつぎのハンレー・ラミレスも歩かせて2死ながら一、二塁。

この場面でBOSは上原を投入します。

ランナーのいる場面での登板は、あの4点差を追いつかれた7/6のエンゼルス戦以来。しかもリードした展開で、8回途中からの交代完了を目指すのは今季初めてです。(8/13には敵地でのトロント戦で打者4人に投げ、勝利投手になっていますが、このときは延長戦。同点の10回2死ランナーなしからの登板でした。その後チームが勝ち越して、勝ち投手になっています。)

さて、ドジャースのバッターはAJエリス。初球、スプリットで空振り。

上原は今季前半のオリオールズ戦(4/11)とテキサス戦(6/5)、ランナーのいる場面で、それぞれジョーンズとアンドルースという元同僚に初球を狙われ、タイムリーを打たれています。二人とも、上原が積極的にストライクを取ってくることを知りつくしているがゆえの初球狙い。したがって最初の入り方は大きな課題でした。この場面で落ちついてスプリットを投げ、しかも空振りをとれたのは非常に大きかったのではないでしょうか。

2球めは低めいっぱいのファストボールで見逃しストライク。エリスが審判に確認を求めましたが、手元で伸びがあるのでカウントがとれたのでしょう。この初球、2球めはどちらもほれぼれするような球でした。

そのあとは外のファストボールでボール、スプリットでファウル、アウトローにはずれるスプリットでボール。2-2。

そして5球め、アウトローのファストボールで空振り三振! 91マイルのみごとな球でした。コースはそんなに厳しくないかもしれないけど、スプリットをふたつ続けたあとだから、あたりゃしません。なにより本人もいうように気合のこもった球! すばらしい。

9回はイーシアを2ゴロ、ウリベをサードフライ、ヘアストンを2ゴロ(いい当たりで、ペドロイアのファインプレー)に斬ってとり、みごと3人締め。15球で4アウトをとって13セーブめをあげました。それにしても4人と対戦したのに15球ってほんとに効率的。

動画 ブログ

この登板は、わたしにとって、「おお!」という、ちょっと興味深いものでした。首脳陣とのコミュニケーションがうまく行っているのだろうなと想像させるものだったからです。

NHK-BSの〈ベストスポーツ〉で月1回放送してくれる上原の特集コーナー『全力通信』。先日放送された7月分のなかで、あの4点差を追いつかれた7月6日のエンゼルス戦について、上原はこんなことを語っていました。(逐語の書き起こしではなく、わたしがまとめたものです。)

「自分からじゃなかったので(補足:回の頭からの登板ではなかったということ)、『ないのかな』という気持ちがあった。2アウトでプホールズとハミルトン。どちらかでひとつアウトをとれればと。ぼくの力不足です」

上でリンクを張った、そのときのエントリを参照していただければわかりますが、このとき上原は5日で4登板ぐらいしていたので、そもそも投げずにすませたい日だったのです。そこへもってきて4点差、9回2死。登板はないだろうと思っても不思議ではありません。ところがあれよあれよという間に満塁になって緊急登板、そしてセーブ失敗。降板後、こんなことがあったそうです。

「ベンチに帰ってから、『出すなら頭から出してくれ』とコーチに思いきり言った。ピンチにいくなら(むしろ)回の頭からと。だからそのあとは、(セーブのつかない)4点差でも(回の頭から)行くようになった」

おお。なんか、こういうことって使われる側は言葉を飲みこんでがまんしちゃいそうだけど(特に日本人は)、はっきり言ったんだな。さすがや、上原!  たしかにこのあと7/23のレイズ戦、7/27のオリオールズ戦などでは、いずれも4点リードの9回を締めくくっています。(すでに肩を作っていたところに点差が開いたり、逆に8回に点差を詰められそうになって肩を作ったからそのまま投げたということでもありましたが。)

でもってこの番組を見たあと、ドジャース戦の直前に、もうひとつ気になる試合がありました。

8/20 BOS-SFG 2-3

サンフランシスコジャイアンツにBOSがサヨナラ負けした試合。3回までに2点先取したBOS。先発のピービが6回2/3まで1失点と好投していましたが、僅差で球数も90球を越え、ブレズロウに交代。この回と7回を抑えます。

8回は田澤。しかしスクータロとベルトにシングルを打たれ、ポージーの犠飛で同点に。

9回裏は同点のままモラレスが登板。シングルを打たれたあと二死までこぎつけたものの四球と死球で満塁に。打席には選球眼がよく三振の少ないスクータロ。

ここでBOSはまたまた投手交代。よし、Koji! と思ったファンも多かったでしょう。しかし監督の選択は、7月のピービをめぐる3チームトレードでタイガースから移籍してきた若手のヴィラレアル。そして誰もが予想したように、完全なる「位負け」でストレートの四球。試合終了。スクータロはいつものあの構えで立ってるだけでした。渋いったら、もう。

もちろんこのケースは同点で、しかも敵地です。かならずしもクローザー投入の場面ではありません。それでも、ストライクを投げられずに負けるんだったらコウジを出してくれと多くのファンが思ったのも事実。試合後のツイッターでもそういう声が多かったです。

一方私は、ファレル監督、まさか上原に遠慮して使わなかったんじゃないよね、と気になりました。エンゼルス戦のあと本音をぶつけた上原ですが、何度も言うように、あの試合はとても特殊な状況でした。たとえランナーがいたって、クローザーが行っても不思議じゃない場面なら、上原はこころよく登板するはずです。しかし、「監督、オレこのあいだああ言いましたけど、必要なときはいきますんで」とかんたんに意思疎通しにくいのが外国人選手のつらいところ。ちょいとややこしいテーマのとき、おたがいに話しあう前にマスコミにもれて、さらにややこしいことになっちまった前例なんていくらでもあるじゃありませんか。

そんなこんなで軽く気をもんでいたところへの、ドジャース戦、一、二塁での登板。なにか話しあいがあったのか、ただのあうんの呼吸なのか、わたしには知るべくもありませんが、ああ、気をもむ必要なんてぜんぜんなかったな、とほっとしたのも事実です。

絶好調のドジャースに勝ち越したばかりか、その3戦で先発完投が2試合、8回まで投げたのが1試合と、ブルペン陣も休養十分なボストン。あーやだやだ(^_^;; それでもオリオールズは、みずからの生き残りをかけて、明日からし烈なサバイバルレースに挑みます。がんばれ、Koji&オリオールズ(敵のクローザーを応援しつつひいきチームの応援をするのはとてもむずかしいので、クローザーが出てこない状況にするっきゃありませんのよ、オリオールズ。)

◎上原、来季もレッドソックス

8月13日、55試合めの登板を果たして契約が自動更新、425万ドル+出来高での残留が決定しました。あー、来年もAL東か、とも思ったけど、上原さんがハッピーなのでそれでいいです。

◎フォームのお手本、ジェイク・ピービがチームメイトに

7月30日のデッドラインぎりぎりのトレードでホワイトソックスからピービが移籍。昨日は好調ドジャースを相手に完投勝利。上原さん、ブログでも「さすがピービー\(^o^)/ 完投しちゃったよ」と賞賛。さらに「あの投球フォームも、アメリカに来てから肉離れで苦しんでたときに、「これだ」って思って真似てるぐらい好きだなぁ(o^^o)」と書いていましたね。動画を見ると、テークバックの小さいところとか、ステップの狭いところが似ているのかな。ていうより、ステップの幅は、アメリカの固いマウンドで脚に負担がくるのを軽減するために、ピービを参考にして狭めたのでしたよね。いろいろおもしろいです。

◎上原とTazに取材したこちらの記事がすてき。

J-Sportsサイト ナガオ勝司さんのコラムです。まだお読みでないかたはぜひ。

◎コラムといえば……

うちの上原さんも週ベに隔週連載されていた Welcome to the Show をはじめ、現在 Sankei Express に月1(?隔月?)で連載中の「上原浩治メジャーリーグ漂流記」など、ブログ以外にもさまざまな記事を発表していますが、上原さんのマネジメントをしている澤井芳信さんによれば、あれはすべて上原さん本人が執筆しているそう。しかも週ベの連載開始時に比べると最近は編集者による朱入れも少なくなり、確実に上達しているのだとか。週ベは隔週だったし、サンケイのはけっこうな分量なので、負担に思う人にはぜったいできない技だと思います。すごい。

◎すごいといえば……

あ、じつはわたくし先日の土曜日、その澤井芳信さんと、『野球部あるある』の著者、菊地選手の対談をききにいったんです。上原さんは試合前練習のアップが始まる前にかならず毎日2~30分バイクをこぎ、試合後(だと思うたぶん。でももしかしたら練習後、という意味だったかもしれません)にもまたかならず2~30分バイクをこぐのだそうです。それだけで地球を何周もできるほどの距離だそう。その日々の積み重ねがスタミナ向上につながり、体のキレにつながり、今季の好調をつくりだしているんですね。

知ってる話、知らない話、いろいろありましたが、うかがっていてますます上原さんを応援したくなりました。

ちなみに澤井芳信さんご自身、京都成章高校野球部で、松坂大輔と甲子園決勝で対戦し、ノーヒットノーランをくらったときの主将、というすごい経歴の持ち主で、甲子園話、社会人野球場などもすごくおもしろかったです。いや~、野球って(まあなんでもそうでしょうけど)ほんとに奥が深いですわ。