Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

「みんな知っているか、上原のすごさを」――米紙のフィーチャー記事2題

あああ、チェン、チェーン、カムバック・チェーン!(古い)

前回(8/21)はレイズ相手に7回2失点とすばらしいピッチングだったチェン・ウェインですが、今日はBOS打線にめった打ちにあい、キャリア最短の3回1/3、8失点でノックアウト。チームも2-13で敗れてしまいました。いてて……(泣) 

チェンは「チームに申しわけない。今日は変化球が決まらなかった。野球人生最悪の登板だった」とコメント。しょうがないよ、チェン。そういうときもある。またつぎがんばってね! どうしようもない大差で負けたので、かえって切りかえがつくってものです。明日は登板のないチェンをオプションしてゴーズマンが昇格の予定。ブルペンで待機します。9月になるとプレーオフのないマイナーのチームは試合がなくなりますから、チェンも次回登板までにはもどってくる予定。ロスター拡大でちっとはチームにはずみが出るといいんだけどな(願)。

さて、きのうのエントリをあげてから、また上原のフィーチャー記事が出ました。かつてのチームメート、なつかしのグレッグ・ゾーン兄さんのコメントも出ていたりして思わず「わあ」と思ったので、7月末に出たべつの記事とあわせてご紹介します。ほかにも米紙にたびたびとりあげられるほど、今年の上原は(少なくともボストン界隈では)注目度が高いです。

ではまず7月末の記事から。知っている情報が中心ではありましたが、日本時代のことも調べ上げてまとめたなかなかの力作です。アメリカの記者が、こんな関心の寄せ方をしてくれたのはとてもうれしいことです。

Does anyone realize how good Koji Uehara is? Red Sox closer has felt pressure, but that was years ago

みんな知っているか、コウジ・ウエハラのすごさを

By Evan Drellich, MassLive.com

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on July 22, 2013 at 8:29 PM, updated July 24, 2013 at 2:34 AM

クローザーになってプレッシャーを感じるかときかれると、コウジ・ウエハラは、いつも通訳のC・J・マツモトを介してこうこたえる。

「前にもやったことがあるから、慣れてます」

強がりではない。

上原は日本で8回オールスターに選出されている。まだ成し遂げていないのは、アメリカでのオールスター、およびワールドシリーズへの出場ぐらいだ。

(中略)

今年の6/10から7/20まで、上原は20試合に登板し、20イニングで失点1、四球2、三振29という成績を残した。

(中略)

負担を懸念する声もあったが、チームは不安を感じていない。監督のジョン・ファレルはつぎのように語る。

「6日連続で登板に備えることもできるほど、調子はいい。今年にかぎったことではないよ。テキサスにいたときもボルチモアにいたときも、非常に球数が少なかったし、質のいいストライクを投げるからね。スプリットで打者を惑わせるから8球~11球ぐらいで1登板終えることもめずらしくない。おかげで2連投、3連投ぐらいならお手のものだ。もちろん体調しだい、上原との話し合いしあいだが。上原はコンディションを維持するために、毎日きちんとしたトレーニングを積んでいる」

フェンウェイ・パークでクローザーを務めることが大きなプレッシャーにならないのは、上原の経験によるところも大きい。上原は日本でいちばん有名な球団で長らくエースを張り、また国際舞台でも活躍した。

2002年10月9日、バリー・ボンズ日米野球で2HRを打った。

しかし翌日は3三振。ボンズはその前年の2001年にHRの年間記録を塗り替えたばかりで、選手としても絶頂期にあった。

そのボンズから3三振を奪ったのが上原だ。しかも、やはり前日に2HRを打ったジェイソン・ジアンビからも2三振を奪っている。「フォークボールにやられた」というのが当時のジアンビのコメントだった。

上原は、日本のヤンキースともいうべき読売ジャイアンツのエースだった。2000年と2002年には日本シリーズで優勝している。クローザーを務めた年もある。

さらに2004年、2008年にはオリンピックに出場し、2006年には第1回WBCに出場。投球回、奪三振防御率(1.59)は、第1回大会でトップの成績だった。

38歳にしてレッドソックスのクローザーを務めるのは、日本一注目度の高いチームでエースを務めるのとくらべて大変かどうか、上原にきいてみた。

「人気チームで投げていたし、とくに日本代表で投げて、そのクローザーも経験したことは大きなプレッシャーでした。そのときに比べれば……」

2009年、34歳になって渡米した上原だが、もっと前に来ていたらどうだったのだろうか。じっさい、大学を卒業した24歳のとき、上原は渡米寸前までいっている。エンゼルスから300万ドルのオファーを受けたのだ。しかし、最終的にことわった。

「アメリカに来るチャンスはありましたが、リスクも大きかった」と、長年アメリカを拠点にスポーツニッポンの記者を務める奥田秀樹氏は言う。「読売ジャイアンツでプレーするチャンスも手にしていたわけですから。当時は野茂と伊良部がアメリカでプレーしていましたが、大学を出たばかりの選手が成功するかどうかはだれにもわからなかった」

上原もそのことはよく心得ていた。

「契約を結んだわけではないけど、一時はかなりアメリカに気持ちがかたむいていました。でもスカウトの方から、100%の自信がなければ来るなといわれたんです。あのときはまだこちらで活躍している日本人選手も少なかったですし」

当時、巨人が上原に5億円の契約金を支払ったという朝日新聞の報道もあった。契約金が日本残留の決め手になったのかどうかは定かでないが、報じられた金額はエンゼルスのそれよりも大きかったことになる。

(注:5億円の契約金にかんしては、巨人、上原ともに否定しています。上原については、ほかにもメジャー行きの密約説など数かぎりない無根拠の噂がありましたが、密約に関してはその後の歴史的事実によって真実ではなかったことが証明されています。契約金も、上原がもらってないっていうならほんとにもらってないだろうと、わたしは思っています。ちなみにこの部分にかんしては、記事を書いた記者の方ともツイッターで少しやりとりをしましたが、他に裏金について書かれた資料はなかったから、さらりと触れて強調しなかったとおっしゃっていました。)

1999年、上原はアナハイムではなく日本のプロ野球選手になり、NPB生活を通じて最多となる20勝をあげた。防御率は2.09、奪三振179で、セリーグの投手三冠を総なめにする。けっきょく上原は日本における10年間のプロ野球生活で通算112勝62敗、防御率3.01という成績を残した。

渡米した2009年は先発投手をつとめた。翌2010年にリリーフに転向したが、それ以降のK/BB は9.84。メジャーリーグのリリーバーの中では他を大きく引き離して第1位の成績だ。2位がセルジオ・ロモの6.04。ほかに6を越えている投手はいない。またWHIP(ヒットと四球で1イニングに許したランナー)も0.77で1位である。

さらに日米の記録を通算すると、上原のK/BB は1,805イニングで6.87。メジャーリーグ通算記録1位はトミー・ボンドの5.03だ。(注:1000投球回以上)

上原は、日本では松坂大輔松井秀喜ほど多くのファンがいるわけではない。アメリカでクローザーを務められることは十分証明したものの、日米のファンともに上原に関してはそれぞれ断片的な印象しか持ちあわせていないのだろう。すべてを合わせれば、すばらしく優秀な投手像が立ち現れるのに。

しかし上原は、優秀なクローザーらしく、「たられば」話には興味がないようだ。

「ぼくはそういう考え方はしません。過去は過去ですから。すんだことは、もういいんです」

つぎは昨晩出たボストン・ヘラルドの記事。こちらにも「日本のヤンキース」が登場します(笑) なぜレッドソックスの記事なのにヤンキース。でもやっぱり、ヒゲを剃らなきゃいかんとか、なにかとおかたいあのチームカラーは、同じ伝統球団でもやっぱりボストンじゃなくNYYに似ているのかな。うん、そうだね。(自問自答)

Koji Uehara fits in as Red Sox closer with pizazz

Tuesday, August 27, 2013 By:Scott Lauber

今季レッドソックスは、ジョエル・ハンラハンとアンドリュー・ベイリーというふたりのクローザーが手術で今季絶望となり、一時はクローザーさがしで世界中をかけまわるはめになるのではないかと思われた。

しかし、グレッグ・ゾーンは知っていた。

グレッグ・ゾーンは、2009年、上原浩治ボルチモア・オリオールズと契約したとき、オリオールズの捕手として選手生活の晩年を過ごしていた。当初、上原は先発を務めていたが、上原のファストボールとスプリッター、そして落ちついたマウンドさばきを見て、ゾーンは、上原にはべつの役割が務まると感じていた。

「初めて投球を見たときから、クローザーになれる器だと思っていたよ」現在、トロントのテレビ局で解説者を務めるゾーンは言う。「球もいいし、日本で厳しい場面で投げてきているからマウンド度胸がある」

それから4年。上原はリリーバーとして自己最高のシーズンを送り、毎度マシンのように効率よく無失点で9回を締めくくって、試合後のハイタッチでもマウンド上に劣らないエネルギーを発散させる。そんな姿を見てもゾーンは少しも驚かない。

6月にクローザーに指名されてからの上原の防御率は0.32。14のセーブ機会で12のセーブをあげている。だがほんとうにすごいのは、その間の三振37に対して四死球が2つしかないこと。そして1登板で20球以上投げたのが、27登板中わずか1度しかないことだ。

「あんまりすごすぎて、たまにあり得ない期待をしてしまうよ」左腕リリーバーのクレイグ・ブレズロウはいう。「たとえば登板するたびに三者三振とか、それを10球で片づけるとか。とてつもない期待なんだけど、いつもそれに近いことはしてくれる。ぼくの記憶にあるかぎりでも最強のリリーバーだね」

しかし驚くにはあたらない。

上原は日本のヤンキースともいうべき読売ジャイアンツで10シーズンを過ごし、2004年と2008年にはオリンピックに出場している。

それにくらべたら、レッドソックスのクローザーになるほうがプレッシャーは少ない。

ジャイアンツで投げるのはそうでもありませんでしたが、国のために投げるのはすごいプレッシャーでした」と、上原は通訳を介して語る。「オリンピックやWBCはプレッシャーがあった。そのときにはあまり考えなかったけど、ああいう経験がいま役立ってるのかもしれませんね」

(注:このあと、2006年のシーズン前にエディー・ベインという当時のエンゼルスのスカウトが契約を持ちかけたという話に触れ、上原が妻子を米国に連れていくのをためらったと記されていますが――息子さんは2006年の3月に生まれていますからシーズン開始時だと新生児ですもんね――それより何より巨人はがんとしてポスティングを認めなかったので、たとえそういう話が実際にあったとしても、本人の意志よりは球団の意志のほうが大きな障壁だったのではないかと思われます。)

「上原は当時(2006年?)からスプリッターを投げていて、これならメジャーの打者を手玉に取れるだろうと思われた」昨年、レッドソックスのスカウトに就任したエディー・ベインは語る。「今はさらにキレが増しているから、あのころ、今のような球を投げていたら引き合いはさらに多かっただろうね。でも日本にとどまりたいという話はほかの人からも聞いていたので、無理強いはしたくなかった」

レッドソックスのチェリントンGMは、上原に惹かれたのは日本でもメジャーでも「活躍しないという年がなかったから」だという。テキサスで2シーズンを共に過ごしたナポリも上原に太鼓判を押し、レッドソックスは上原と$4百25万ドルの契約を結ぶにいたった。

投球スタイルの「シンプルさ」(by ブレズロウ)も上原の魅力だ。持ち球は88~91マイルのファストボールと、強力なスプリッター。ストライクゾーンにどんどん投げ込むので、打者はバットを振るしかない。ブレズロウはいう。

「彼が投げるところを見ていると、オレにもできそう、って思う。でもそうはいかないのにはちゃんと理由があるんだろう。人は、上原の年齢や登板負荷のことをとやかくいうけど、シーズン後半に入ってますますよくなっているように見えるよ」

それについて上原は、ファレル監督とニエベス投手コーチのおかげだと語る。肩をつくったらかならず登板するよう気をつけてもらっているのがありがたいと。ブルペンでウォームアップしてから投げずにおわったのは、今季2試合しかない。

登板を終えると上原はチームメートといせいよくハイタッチやグータッチをしてまわる。日本人選手の多くはもの静かでストイックだが、上原は非常に外向的だ。

オリオールズ時代も、上原は英語のいいまわしをおぼえるのに積極的だった、とグレッグ・ゾーンは語る。なんでもかんでもおぼえようとするので、チームメートが、クラブハウスで使われる言葉はえげつないから、外で使わないようにと釘を刺すほどだった。上原はボルチモアに家を買い、チームメートの一覧表をロッカーの上に貼りつけて、チームにとけこもうとしていた。

「みんな一発でコウジのことを好きになったよ」と、ゾーン。「独自のプログラムを貫いたり、チームから距離を置いたりするタイプじゃない。初めから輪の中に入ろうとしていたからね」

上原も語る。「チームの一員になるのは、ぼくにとって大切なことなんです。ちがう文化のなかに入るんですから、他の選手とかかわって、ぼくといて楽しいと思ってほしい」

そして上原は、もうしばらくこのチームにいることになる。55登板を果たして、来季も4百25万ドルで残留することが決まったのだ。

そうか、上原にずっと執心だったエンゼルスのスカウトがボストンに来たのか! 今気がつきました。なるほど。

それからグレッグ・ゾーン――涙もののなつかしさ。過去のエントリにリンクを張っておきましょう。(ウィーターズの捕手防御率が悪くてガスリーが組みたがらないって、今見るととんでもない記事だなw)上原のメジャー初勝利のときの捕手で、生活面でも何くれとなく支えてくれた、根っからのいい人です(会ったことないけど(笑))。トロントで解説者をしているので、ときどき上原ブログにも写真が載ったりしますね。

あともうひとつ、きのうツイッターで教えていただいた記録もいっしょに記しておきましょう。

「上原の2013年のWHIPは、MLB史上4番めの低さ(50イニング登板以上)」というもの。該当する22,910例(!)のなかで上から4番めですって。クリックして元のツイートを見ていただくと、10位までの記録が画像で出てきます。1番、2番はおなじみのデニス・エカーズリー、3番は去年のクレイグ・キンブレル。これもすごい! 10位に斎藤隆の名前もあります。

さて、と。きのうわたしは「敵のクローザーが出てこない展開に」と書いたのですが、それって「大敗」っていう意味だったんですね――って、ちがーう!(>_<) ボストンはうんと余裕があるんだし、今日レイズも負けたんだから、オリオールズはなんとしても勝たないとALEastの火が消えちゃいます!(そんなもん、あったんか)

とにかく、なんでもいいからがむしゃらにがんばってほしい。

これだけ上原推しで最後の結びだけオリオールズっつうのも不思議ですが、明日はいい試合を期待します。

Go, O's!