Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

連日の史上初:クレイジー、クレイジーWS 【ビデオ追加】

走塁妨害によるサヨナラゲームというWS史上初のプレーがあったかと思えば、その翌日にはけん制アウトで試合終了というこれまたWS史上初のプレー。(1404試合で初めてだそうです。Wow.)

その両方でマウンドに立っていたのが上原浩治。なんなんでしょう、ほんとに! あまりにもすごすぎます(笑)。せっかくなので、いろいろな記事を紹介しながら、もう少しこのプレーを楽しみたいと思います。

前エントリで牽制アウト場面の動画を紹介したので、こちらではGIF画像のページを。

じつは、あまりに何の前ぶれもない牽制だったので、走者だけじゃなくTVカメラも虚をつかれていました(^_^;; ふたつめの画像が中継中の画面。きれいなおねーさんを映しているうちに牽制プレーが発生し、あわててカメラを振ったという次第。上はリプレイの画像。それにしてもきれいに逆をついてます。

同じ場面を今度はスペイン語の実況で。FOXテレビはジョー・バックの淡々とした語りなので今イチ興奮が盛りあがらないのですが、スペイン語実況は熱い! 正直、ぜんぜんわかりませんが、いいんですw(Increible!〈インクレイーブレ:信じられない〉だけわかった。)

ピックオフされたランナーは、ルーキーのコルトン・ワン。TV画面でもベンチでがっくりと肩を落とす姿が映し出されましたが、クラブハウスで涙を流す場面もあったようです。試合後にはこんなツイートを。(#CardinalNation に、申しわけないとしかいいようがありません。でもぼくは毎日グラウンドで必死に戦っています。)

おかしいのは、みんな上原が事前の打ち合わせとか、下調べがあって牽制したんじゃないか、ランナーの動きを察知したんじゃないかと思いたがっているのに、当の上原がそれをあっさり受け流していること。NHKのインタビューでは解説の田口さんが「ランナーの動きが見えた?」とたずねましたが、上原は「見えてないです。1回も牽制せずに同じリズムで投げていたので、ちょっとはさもうかなと思って」と答えています。またアメリカのメディアは「ワンのスカウティングレポートを読んだ?」とたずねて「ぼくはスカウティングレポートは読みません」という答えをもらっています(笑)。(ただ、「バッターのスカウティングレポートはちゃんと読んでいる」とマサチューセッツ地元紙のドレリッチ記者がフォローを入れています。)

これらもろもろを盛り込んでみごとな第4戦のドキュメントをまとめたのが、おなじみのジェフ・パッサン。たいへん面白い記事だったのですが、時間の関係で全部は訳せないのでかいつまんでご紹介したいと思います。

How the Red Sox made history with the World Series' first game-ending pick-off

◎数日前に選手たちを集めておこなわれた、レッドソックスのスカウティング・ミーティングで、コルトン・ワンについても報告があがっていた。曰く「このところ自信をつけてリードが大きくなっている。スキあり」

ただし、上原は各バッターへのアプローチについては通訳を介して注意深く聞くものの、それ以外の箇所(ベースランニングなど)は基本的にスルー。第4戦の牽制は「カンと技術のたまもの」だった。

◎あの牽制の意図は、ちょっとリズムを変えて打者のベルトランに「ファストボールかスプリットかどっちだ」と迷わせるヒマを与えたい、というもの。しかも上原によれば「ナポリがベースについているかどうかはっきりとはわからなかったけど、信じて投げた」。それがたまたま、ワンが逆足に体重をかけたタイミングと重なった。ボストンにとっては僥倖。カージナルスには大惨事。「カンです」と上原は語った。

◎前日の守備妨害によるサヨナラが、この場面にも直接影響を及ぼしていた。あの走塁でふたたび脚を痛めたアレン・クレイグが上原から大きな当たりを放ったものの、一塁止まりだったからだ。もし二塁まで到達していれば、牽制されることもなかっただろう。塁に出るとすぐさま通算32試合しか出場経験のないルーキーのコルトン・ワン(23)と交代。1999年、上原が日本でプロデビューを果たしたとき、ワンは9歳だった(!)。

◎フィールド上では、途中出場で一塁に入ったナポリが長打警戒でベース近くに守っていた。上原から牽制が来ることは特に予想していなかったし、秘密のアイコンタクトがあったわけでもない。そもそも上原の牽制自体にあまりなじみがなかった。「だって上原が投げるときはほとんどランナーが出ないから」(たしかに!)

◎キャッチャーのデイヴィッド・ロスは、打者ベルトランの攻め方で頭がいっぱいだった。サインを出そうと顔をあげたら、上原がくるっと体を回転させて絶妙の牽制球を投げるところ。しかもランナーのワンは足をすべらせて戻りきれなかった。

◎ワンはロッカールームですわりこみ、頭をかかえ、涙を浮かべながらインタビューを受けた。「いい牽制だった。足がすべっておしまいだった」

チームメートからいくら言葉をかけてもらっても、20年かかって初のWSにたどりついたベルトランが打席にいるというのに、打つ機会を奪ってしまったという思いは、そうかんたんに慰めがつくものではない。

◎「あんなプレーで試合が終わるなんてことはそうそうあるものじゃない」とジェイク・ピービ。「そういう機会自体めったいにおとずれないしね」

ふつうは、もっとこまかいことが鍵になるものだ。どのコースに投げるか。配球はどうするか。その他、スカウティング・ミーティングでコウジ・ウエハラが耳を傾けるかもしれないし、傾けないかもしれないような、もろもろのことがらが。だがしかし、これは「意外性のワールドシリーズ」だ。あり得ないことが現実になり、カンが勝負を決める。そしてあと3試合、ベースボールがどれだけクレイジーなものか、われわれは目の当たりにすることになるだろう。

前日のサヨナラ走塁妨害の試合と同様、どうしてもそこにばかり注目が集まってしまいますが、6回に飛び出したゴームズの3ランもすごかった。この日、ゴームズは腰の張りでスタメンをはずれたビクトリーノに代わって急遽出場。スタメンを告げられると、鏡の前でひげにブラシをかけ、目を丸くしたデンプスターに向かって「オレの輝くときがきた」と言ったのだそう(笑)(ソース)。おもしろい。

さらにこの逆転した6回の前には、オルティーズが選手全員を集めてゲキを飛ばす場面が。昨年のジャイアンツのハンター・ペンスを思い出します。その姿は、HRを打ったゴームズに言わせると、まるで「24人の幼稚園児が先生を見つめてるみたいだった。全員が耳をかたむけていたよ」

これができるチームは、強いと言わざるを得ません。

さあ、これで2勝2敗。人はつい「流れが……」と言いたくなるものですが、今ワールドシリーズにかぎっては、流れなどあってなきがごとしです。ツイッターでは#HowGame5WillEnd というハシュタグで「オルティーズのサヨナラランニングHR」とか、「9回表にコウジ・ウエハラが満塁HRを打って、その裏にトリプルプレー」とか、わけのわからないクレイジーすぎる第5戦の予想が行われていますが(笑)、大勢の人たちがこのシリーズを楽しんでいるのはまちがいないようです。

【11/10追記】

コメント欄で触れたMLBネットワークの上原の牽制に関するビデオにリンクを貼って、中身をかんたんに書き出しておきます。解説はかつてのブリュワーズの投手、ダン・プレザックです。

司会:コウジ・ウエハラはスカウティングレポートは読まなかったそうですし、牽制で刺そうとしたわけでもないようですが、そんななかでどうやってあのプレーが生まれたんでしょうか?

プレザック:いい牽制の鍵はふたつ。すばやいターンと、短いテークバックです。昨夜のコウジがそう。せっかくすばやくターンしても、ぐるっと大きく手を回して投げていたのでは間に合いません。タイミングがすべてです。耳の横からダーツを投げるような動きですばやくボールを投げていますね。コウジはターンと送球の両方を完ぺきに行いました。

司会:あの牽制におけるウエハラのねらいはなんだったんでしょう。

プレザック:投手はカンが働くものです。右投手からは一塁ランナーは見にくい。でもセットでかまえたとき、肩越しにランナーの様子を多少うかがうことはできます。コウジはおそらくウォンがリードを広げようとしているのを感じたんでしょう。そこですばやくターンして牽制した。ウォンはちょうど足が宙に浮いているところで、戻りきれませんでした。

司会:打席にはベルトランがいました。

プレザック:2点差ですから、重要なのはベルトランがホームに帰れるか否か。一発で同点になるチャンスもありました。試合後にウォンは、ヒットが出たら一塁から生還しようと考えたと語っていましたが、一塁ランナーは関係ない。重要なのはバッターランナーだったのです。そういう若いランナーのスキを、コウジはすばやいターンと送球でついたわけです。