Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

ユンとヒメネス:O'sチーム史上初の契約2題+クルーズ

バルフォアとの合意を健康診断で破棄し、バーネット(フィリーズへ)、アローヨ(D-バックスへ)には逃げられ、あらゆるメディアから「オフの補強失敗ワースト1」のレッテルを貼られていたオリオールズ。でも、ぎりぎりまで待って、粘って、ドラフト指名権を差し出して、ついに2人の投手と契約を結びました。どちらも「チーム史上初」です。

まず1週間前の2月13日、韓国のKIAタイガーズからFAのユン・ソンミン(尹錫珉 (27))と合意しました。固定給が3年合計$5.75mil。先発試合数などにもとづくインセンティブで、最大$13.075milまでいくそう。詳細はこちらに。2015年、16年は、本人の同意なしに3Aにオプションできないことも盛り込まれているそうですが、今年はそのかぎりではないとのこと。本人は先発が希望ですが、スプリングトレーニングでどれだけ適応できるかにかかってきそうです。もしうまく適応して先発の座をつかみ、最大限のインセンティブが発動するほど働いてくれたら、それはそれでお買い得の契約になりそう。でも、先発でなくとも、ロングリリーフや終盤のリリーフなど、うまいぐあいに自分の居場所を見つけてくれるといいなと思います。

ユンはオリオールズのチーム史上初の韓国人メジャーリーガー。O'sと韓国人選手といえば2年前、韓国の高校生金聖民(キム・ソンミン)投手と契約しようとして、韓国球界から「正式な手続きを踏んでいない」と非難され、最終的には契約を白紙に戻し(金自身は韓国球界から除名処分になって、現在は日本経済大学に所属)、オリオールズは韓国内でのスカウト活動禁止という騒動が記憶に新しいところ。でもって今回も、合意が発表される前日の12日に、ユン自身がオリオールズの帽子をかぶったセルフィー(自撮り)をツイート、番記者が確認に終われるというちょっとした騒ぎがあり、チームも「合意はない」と発表したので、またも韓国の選手とは縁がないまま終わるのかと思ってしまいました。

しかしフェルドマンとハメルが抜けたオリオールズにとって、先発投手の補強は今オフを通じて最大のテーマでしたし、ユンにとっても先発の機会のあるチームは限られていたようなので、双方の利害は一致していたのでしょう。翌日無事に合意が発表され、メジャー一厳しい(?)フィジカルも突破(昨年、右肩に炎症があったようなのでわりと本気で心配しましたw)。18日に正式に入団発表が行われました。

この記者会見のなかでデュケットGMは、ユンが今季のFA投手のなかでは最も若い27歳であること、それでいながら韓国ではプロ9年のキャリアがあるベテランで、すばらしい成績を残していること、制球力があることなどをあげ、期待感を表明しました。

ユンの成績やポテンシャルについては、例によって人頼みですがFar East Divisionさんの記事にリンクを貼らせていただきます。またスポナビブログでもデータから見る韓国野球(2013年度版)」さんがこちらの記事でユン・ソンミンをとりあげておられますので、リンクを張らせていただきます。

なお、ユンの背番号は18。和田から受け継ぎました(うっ、うっ(; ;))「海外では18はエースナンバーだから」と、デュケットGMは説明していましたが、韓国でもそうなんですかね。

契約が遅くまでずれ込んだので、ビザが未取得だとのこと。韓国には戻らずカナダで取るようで、2週間ほどかかるそうです。今のところ本人は、キャンプに合流していっしょに練習を行っています。

スプリングトレーニング開始ぎりぎりの補強はこれにとどまりませんでした。ユンの入団発表の前日、2月17日には、インディアンズからFAになっていたウバルド・ヒメネスとの合意を発表。4年$50milというオリオールズのFA史上最高額の契約です【「FAの投手に対するチーム史上最高額」でした。コメント欄でご指摘いただきました。ありがとうございます】。しかもヒメネスは、インディアンズからクオリファイング・オファーを受けていますので、ドラフト1巡目の指名権を手放さなくてはなりません(オリオールズが手放すのは全体17番目。インディアンズは、1巡目と2巡目のあいだの指名権を手にします)。

またオリオールズが他球団からFAしていた投手と4年以上の契約をするのもチーム史上初。 金額もあわせ、いろいろな意味で、思い切ったな!と思わせる契約です。

オリオールズの背中を押したひとつの要因は、いわゆる「2年間の期限」だといわれています。これは、マット・ウィーターズとクリス・デイヴィスが2年後の2015年オフにFAになるから向こう2年が勝負どきということ。世間では、オリオールズにはこのふたりは引き留められないと決めつけられているんですよね(泣)……この期限云々についてはあとで少し補足します(※)。

もうひとつは、マイナー組織が少しずつ充実のきざしを見せ、さらに国際市場での補強にも積極的に取り組んでいるため、ドラフト上位の使命権を手放す痛手が多少は軽減されるということ。

ユンの契約もその一環ですし、ほかにもたとえば1月末にはメキシコから17歳の一塁手カルロス・ディアス、そしてドミニカから16歳の三塁手ホマール・レイエスというふたりの若い内野手を獲得しています(MASN)。

ゴーズマン、バンディ、エドゥアルド・ロドリゲスを初めとする投手のプロスペクト陣に加えて、野手陣を海外FAで補う……こういう方法をとれば、ドラフト指名権を手放して補強を行うということもできると、デュケットGMは説明していました。

ヒメネスは2008年以来6年連続して30試合以上先発しています。年ごとに成績に上下があるため、それなりのリスクはあると言われていますが、それはどんな補強にもつきもの。入団会見によれば、ヒメネスはデュケットGMと最初に会談したとき、ウォレス投手コーチとも面談して、非常にいい印象を抱いたそう(動画)。ショウォルター監督のもとで野球をすることも楽しみにしているようです。まだ30歳ですし、なんか真面目そうだし、楽しみです。

さて、ヒメネスとティルマン、どちらが開幕投手になるのかわかりませんが、とりあえずヒメネスと考えると、現時点でのローテはこんな感じになるんでしょうか。

ヒメネス、ティルマン、チェン、ミゲル・ゴンザレス、ノリスorユン

まあ、チェンは膝を手術していますし、ゴンザレスも軽い腰痛があったりするようなので、まだまだ流動的ですが、悪くないです。

ていうか、わたしがオリオールズを見始めてからは、一番それらしいローテなんじゃないでしょうか。

で、さらにゴーズマンが3Aに控えてスライダーをみがき、バンディもTJからの復活をめざしてトレーニングを続けてくれれば。マイナー契約ながらアセベスもいますしね。層はだいぶ厚くなりました。ザック・ブリトンはどうなるんだろう。

ちなみに先ほどのローテですが、「ひとりWBC」ともいえるほど国際色豊かです。ヒメネスから順に記してみると、ドミニカ、USA、台湾、メキシコ、USA or 韓国。

キャンプ地、エド・スミス・スタジアムのクラブハウスには、ショウォルター監督の発案で、ロスターにいる選手たちの出身国の国旗がかかげられているそうです。さまざまなチーム、さまざまな国から集まってきた選手たちが、少しでもチームに溶け込みやすいようにという工夫のひとつです。

(※)二年間の期限について、少し補足。先ほども触れたように、ウィーターズとデイヴィスがFAになったらオリオールズは優勝を狙えるチームではなくなる、というのが世間の見方のようなのですが、ゴーズマンやバンディ、ロドリゲス、マイク・ライト、ハンター・ハーヴェイという投手たちが実りのときを迎えるのはおそらくそのころからなんですよね。だから2年たったらまたいいチームが作れるじゃん、と思っていたら、ジェフ・サリヴァンが同じ趣旨のことを書いていました(A Few Thoughts on the Orioles and their Window)。ですよねっ。

その他の話題も少し。

◎スプリングトレーニングは順調に進行中。

バッテリー組が13日に集合だったのですが、その時点ですでに野手組も大半の選手がキャンプ地にいて、ノックやバッティング練習を続けていました。正式には昨日、現地19日が、全体練習初日。大きな契約が続いたこともあって、非常にいい雰囲気でトレーニングが始まっているようです。2/21のMASNの記事よりトレーニングの動画を。

ダニー・バレンシアとのトレードでロイヤルズから移籍したデイヴィッド・ロウがオリオールズのスプリングトレーニングについてこんなことを言っていました(ソース)。

「初めからすごく密度が濃い。走る量がはるかに多いし、すべてがきちんと組織的に行われている」

現時点で監督は、ロウをレフトの一番手と考えてチャンスを与える方針のよう。STの試合ではリードオフマンも任せるつもりのようです。

◎マチャドはタイムテーブル設けず

すでにノックやバッティング練習も行っていますが、まだ横への動きとベースランニングは禁止されています。「とにかく悪化させないことがこの春の主眼」とショウォルター監督も強調するように、開幕にこだわらず完璧な状態にすることを最優先させるもよう。3月なかばにまた主治医の診察を受けて、すべての動作が許可されたらそこから試合に出て……ということになるでしょうから、開幕DLの可能性もあるかもしれません。MASN(2/21)よりノック動画も。横の動きがないので、心なしかつまらなそう(笑)。

◎チェンは元気

写真と動画を。右ひざをかばっているようすもなく、元気そうですね。去年は脇腹のケガで2か月離脱してしまったので、今年は故障なくがんばってほしいです。

【追記】   * * *

オフィシャルサイトに、チェンの短いインタビューが出ていたのでご紹介。「○○選手と2分間」というシリーズです。

好きな食べ物は:中国の鍋。いろんなものを入れて煮込みます。

好きな映画:『42』。

特技:4カ国語を話せること。日本語、中国語、台湾語、英語も話せるようになりました。(日本語が最初だ~(^-^))

野球選手になっていなかったら:陸軍に入っていたと思います。野球を始める前に考えたことがあるので。そこまで真剣にじゃないけど。台湾では軍隊は給料も安定していて、いい仕事です。

オフに行きたいところ:ヨーロッパ。以前、野球のツアーで行ったことがあります。でもあまり観光はしなかった。友人たちから観光すると楽しいときいているので、また行ってみたい。

宝物:『One Piece』のフィギュア。日本の有名なアニメです。十年ぐらい前、日本にいたときに集めました。いまは台湾の自宅に置いてあります。

        * * *

現時点ではこんなところでしょうか。

じつは、まだモラレスかネルソン・クルーズにいくんじゃないかという観測も根強くあります。そのときはまたこちらでご報告します。

Last but not least...(ひさびさに出た)

ソチ五輪、例によって一生懸命見てますが、真央ちゃんのフリーはほんとうにすばらしかった。前日のショートプログラムは本当に信じられない出来で、今季ずっとショートは安定していたのに、と、丸1日お通夜のような気分で過ごしたのですが、それを1日で払拭して、おそらくキャリアのなかでも最高といえるパフォーマンスをする強さ。3Aへのこだわりも、期待を真正面から受け止めて背負うこともぜんぶ含めて、たぶん真央ちゃんは少し不器用なくらい一番難しい道を選び続けてきたのだと思います。ときにはそれにつぶされることもあったわけですが、それでも屈しない勇気と強さを心から尊敬したい。4年前は悔し涙にもらい泣きしましたが、きのうは感動の涙でした。ありがとう。

【2/24追記】

このあとオリオールズは22日土曜日に、TEXからFAのネルソン・クルーズと1年8MILで合意しました。例によって健康診断を終えてから週明けに正式発表の見こみです。クルーズもクオリファイング・オファーを受けていますので、オリオールズは2巡め、全体55番め(だったかな)の指名権を失います。レンジャーズは1巡めと2巡めのあいだの指名をゲットします。クルーズにとっては14MILのQOを蹴り、ウィンターミーティングでマリナーズからもらったといわれる5年契約のオファーを蹴って、けっきょく8MIL。1年間、ヒッターズパークのカムデンヤーズでまき直しして、来オフにもっといい契約をとることを目指すわけでしょうね。オリオールズとしては、状況しだいではありますが、その時点でQOを出せば、今季失った指名権は一応とりもどせる?(ただし、ドラフトにかかる選手たちはちがうわけですが。)

まあ1巡めをてばなしてしまえば、2巡めは敷居が低くなるってものですが、最後の最後に清水の舞台から飛び降りたオフシーズンではありました。もっとも閉店まぎわに3割引きシールが貼られるのを見計らって買い物する主婦みたいでもありますが。……そう思うとデュケットさんが買い物かごぶらさげてる姿が浮かんできます(笑)。ちなみに、クルーズの契約に関していえば、シールを貼ったのは、クルーズ側だそうで、むこうからオリオールズにそういう話を持ちかけてきたようです。

サンタナは、安い契約に流れず、ドラフトが終わるまで待つという話も出ていますね。モラレスは現時点だとマリナーズに戻るしかないようですが、例年、STの試合がはじまるとケガ人が出てあわてて補強するチームもあるので、様子見がつづくのかも。でも選手はつらいだろうなと思います。(ヒメネスも会見で、「すごく長かった」と言っていました。)

【追記2/26】

コメント欄で、「アローヨには3年めをしぶって逃げられた」と書いたのですが、今日になって、オリオールズとD-Backsのオファーはきわめて似通っていたという報道がありました。ESPNのクラスニック記者のツイートによるとD-バックスとの契約は2年総額$23.5Mで3年めののチームオプションをあわせると総額$30M。オリオールズのオファーは2年$21.5M、3年めのチームオプションをあわせると$33M。ギャランティー分はO'sが2MIL低かったわけですが、やはりNLにとどまりたかった、ということなのかもしれません。