Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

『屋上野球』 & 夢の球宴

HRダービーって、1ラウンド見るとだいたいおなかがいっぱいになるのに、それでもなんとなく見ちゃいます。

今年も2ラウンドめ以降、なかなか数字を伸ばせない選手たちのなかで(スタントンがまさかの0本とか)、ひとりだけガンガンかっとばすヨエネス・セスペデス。すさまじい~。何度でも言いますが、わたし、セスペデスのメジャー初HRを2012年の東京ドームでの開幕2戦めに目撃しました。ちょっと自慢です(笑)。

昨年、オールスター出場の最後の1枠に挑みながら投票で敗れた上原は、今年は、ヒジの故障でDL入りしたマーくんの代替という形で出場権を得ました。なんだか皮肉な展開のようですが、マーくんは、DL入りせず元気に投げ続けていたら、日曜日のオリオールズ戦で登板することになっていましたから、どっちみちオールスターでは投げられなかったでしょう。じつはそのために当初から上原の代替選出は事実上決まっていました。初のオールスター選出、すなおに喜びたいと思います。投げたい気まんまんのようなので、ファレル監督が舞台を用意してくれることを祈ってます。

さて、このあと、上原のオールスター出場に関するボストン・グローブ紙の記事をご紹介するつもりですが、その前にひとつ宣伝をば。

みなさま『屋上野球』という雑誌をご存知でしょうか?

わたしは3月の東京野球ブックフェアで初めて手にとって、「日本ではじめての文化系野球雑誌」というキャッチフレーズを見て驚愕しました。だって、当ブログのうたい文句も「文系野球ブログ」なんですもの。

読んでみると、当ブログよりさらに野球の周辺をぐるぐる回って味わいつくそうというおもむきの雑誌。おもしれ~、と思っていたら、なんとツイッター経由で声をかけていただき、第2号で野球小説の座談会に出席させてもらいました。

こちらがその第2号の目次。一番最後のほうの「『守備の極意』が面白すぎる!特別座談会」というのがそれです。

じつはまだ現物を手に取っていないので、ほかの記事は読んでいないのですが、ユニークな切り口での特集はとても楽しみ。

『守備の極意』も、野球小説というよりは、野球をネタにした文学としてとてもおもしろいので、興味のあるかたはぜひぜひ手に取ってみてください。関連情報のところにリンクを貼っておきます。

さて、オールスターです。

上原にとって昨年は到達できなかった夢の舞台。39歳での初出場は史上6番めの遅さだそう。共同通信の記事から本人のコメントをひろっておきます。

「1度は経験したかった。うれしい。こつこつとやってきて、ワールドシリーズ、オールスターを経験できる。努力して損はなかった」「真剣にやらないと1アウトも取れない。生半可な気持ちではできない」「いつもと同じようにブルペンでは緊張すると思う。しっかりと準備したい」[2014年7月15日:日本時間]

うんうん、よかった~!「努力して損はなかった」という言葉に背筋が伸びます。そうだよね。わたしももっとがんばらないと。

ボストン・グローブ紙では、おなじみのピート・エイブラハムさんが、多くの選手たちからコメントをとって、読み応えのあるフィーチャー記事を書いてくれました。

Red Sox’ Koji Uehara eager to get into All-Star Game

まず何よりも写真がとーってもすてきなので、ぜひリンク元をクリックしてごらんください。カズくんとダルビッシュの写真を撮るコウジパパです。

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サッチェル・ペイジは1952年に46歳でオールスターに初選出された。しかし試合は5回で降雨コールドになり、ペイジは試合に出られなかった。翌年、ペイジはふたたびオールスターに出場し、ようやく登板を果たす。けれども39歳で初出場するコウジ・ウエハラは、そんな危険はおかしたくないと思っている。

「7回にひとり対戦するだけで十分だから」と、上原は冗談めかして言う。華やかな雰囲気を少しでも味わえれば、それでいい。

「メジャーのオールスターに出場することを目標にしてきたわけじゃないんで。自分が選ばれるとは思ってもみなかった」

それでも上原はアメリカン・リーグのほかのスター選手たちとともに、ホテルの大広間で、8歳になる息子のカズとともにテーブルについていた。すぐそばにはチームメートのジョン・レスターがいて、向かいにはエンジェルスのスター、マイク・トラウトが陣取っている。少し先のほうにはデレク・ジーターもすわっている。

「コウジが出られてうれしいよ」テキサスでチームメイトだったタイガースのイアン・キンズラーが言う。「彼はオールスターにふさわしい。メジャーのなかでも一番過小評価されている選手のひとりだと思うよ」

2010年にオリオールズでリリーフに転向してから、上原は球界屈指のリリーバーであり続けている。4シーズンでERAは1.93、9回あたり11.7個の三振を奪う。それでもここまでオールスターには出場できなかった。

主に中継ぎを務めていたこともその原因のひとつだろう。昨シーズン途中にレッドソックスでクローザーに就任するまでは、14個しかセーブを挙げていなかった。

投球スタイルにも理由がある、とレッドソックスのジョン・ファレル監督は語る。

「スピードだろうね。投球成績はだれにも負けない数字を残しているが、パワーで圧倒するタイプではない。球速は88~90マイル。90マイル後半の球で押すような強烈なイメージがあるわけじゃないから」

しかし100マイル投手のひとりであるクレイグ・キンブレルも、上原の出場を喜んでいる。

「このあいだ対戦したとき彼のピッチングを見たけど、すごかったよ。スピードはさほどじゃないけど、変化がすごい。スプリットがとんでもない落ち方をする。それにクローザーとしてきちんと勝ち試合をしめくくってるんだから、方法なんて関係ない」

上原は、今より球速が出た時期もあったが、昔からけっして速球派ではなかった。

「ぼくは制球と球の見にくさで勝負するタイプですから」と、上原は通訳の C.J.マツモトを介して語る。「できるものなら速い球が投げたいけど、自分はこれでやっていくしかないんで」

その持ち球を大いに活用して、上原は今季も20のセーブ機会で18セーブをあげている。ERAは1.65。43回2/3で許したヒットはわずかに27本だ。

「ボストンで対戦して三振をくらったよ」と、元チームメートのアダム・ジョーンズが語る。「ファストボールが3つ来たのに、一度も真芯でとらえられなかった。信じられない。あいつのは『インビジ・ボール(見えない球)』なんだ。なんだかわからないけど、90-91マイルのくせに、94-95マイルの球みたいに感じられる。そのうえ、あのスプリットがあるだろう。あれは無理だぜ」

レッドソックスの捕手、デイヴィッド・ロスは、上原の球を受けながら笑いをかみころすことがあるという。

「バッターは、何の球がくるかわかっていても、どうにもできないんだ。コウジの制球はすばらしい。スプリットを両サイドにコントロールできるやつなんて、ほかにいないよ。上原は、ちゃんとねらったところに投げる。一か八かの投球はしない」

39歳での初出場は、史上6番めの遅さだ。2009年に、42歳という史上2番めの高齢で初出場を果たしたティム・ウエイクフィールドは、つぎのように語る。

「コウジが出場できてほんとうによかった。自分が出場したときも、ほんとうにすばらしい気分だったからね。オールスターの一員として、あのクラブハウスに身をおくのは特別な経験だよ。かんたんに到達できるものじゃないんだから」

ウエイクフィールドの生命線はナックルボールで、上原よりさらに打者を幻惑する投球スタイルだった。

「上原のピッチングは過小評価されていると思う。なにせ、レッドソックスは3人のクローザーを試してようやく上原にたどり着き、以来、上原は打者を圧倒しているんだからね。しかも少ない球数で効率よくアウトを取る。見ていて楽しいよ」

今季の上原の年俸は$425万ドル。チームでは12番めの値段だ。今季でFAになるが、上原の立場は特殊だと言える。メジャーではずっと好投を続けてきたが、来年4月に40歳になるからだ。

「でもあのスタイルなら40台になってももう2、3年投げられるだろう」と、アダム・ジョーンズ。「体さえ元気ならやれるんじゃないか?」

今シーズン不調にあえぐレッドソックスにとって、上原は貴重なトレードの駒でもある。しかしフロントはむしろ2015年も上原と契約したいと語っている。

上原は、インタビューではいつも陽気に答えてくれるが、FAの話題に触れると真顔になった。

レッドソックスではずっと楽しい思いをしていますからね。ワールドシリーズに出て、今回はオールスターにも選んでもらって。でもこのチームでなければいやだ、というのはありませんよ。ぼくを一番必要としてくれるチームならどこでもいい」

上原はボルチモアに自宅があり、レッドソックスのホームでプレーするときには、2年間ずっとホテル暮らしをしてきた。そして野球人生の終盤にさしかかった今も、自分が一番必要とされる場所を求めている。

だがさしあたって今は、とにかく15日の試合で投げることが一番の望みだ。ファレル監督は必ずや出番を用意してくれるだろう。上原がナショナルリーグのスター3人と対戦する姿が見られるのは楽しみだ。

「ぼくの投球スタイルは決まってるからね」と、上原。「速い球はないよ」

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トレードより再契約、というコメントがとても興味深いです。考えてみると年俸4~5MILなら再契約するほうがお得なんですよね。多少上がるにしても。ここの原文は「team officials have said they would prefer to bring him back in 2015.」となっているので、発言者は明記していないものの、実際にそういう声があがっているのだと思われます。オフィシャルサイトの記事でも、チェリントンGMが同じようなことを言っていました。「Uehara could factor into Boston’s plans for next season, when he will be 40.”Absolutely,” said Cherington. “I don’t see any reason why he shouldn’t be pitching at the end of the game next year the way he looks right now. He’s been as good as anyone in baseball.”(上原は来季で40になるが、ボストンの来季構想に入ってくることも考えられる。「もちろんだ」とチェリントン。「今のような調子で投げてくれれば、来シーズンクローザーを務めていてもまったく不思議じゃない。球界でも屈指の投手なんだから」)

そういえば、レッドソックスファンで有名な作家のスティーブン・キング(「キャリー」「シャイニング」「ミザリー」「スタンド・バイ・ミー」「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」「11/22/63」)が、上原の再契約を熱望しているという記事が、ちょっと前に東スポに出ましたっけ。曰く「今季が契約最終年だろ? レッドソックスは早く彼と契約を延長するべきだ。もちろん彼が39歳ということも知っているが、年齢の問題ではない。彼はこのチームで、彼がいるべき正しい居場所を見つけたんだ。彼がマウンドに上がればあっという間に試合終了だ。彼はまさに日本から来たマリアノ・リベラだ」……「正しい居場所を見つけた」っていうのが泣かせます。そうなんだよね。

ピービのトレードがあるのではないかと、ここしばらく噂されていますが、上原に関しては残留もあるのかなという気がしてきました。

しかし、それよりなにより、まずは明日です。ちゃんと出番を作ってね。ファレル監督、お願いします!

(関連記事として、昨年のオールスターのときのリンクを挙げておきます。)

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