上原、クローザーをはずれる。でも最後まで投げつづける。【9/12 登板!】
ここのところ、オリオールズが好調なこともあってちょっと上原エントリをさぼっていたのですが、やはり書いておきましょう。
7月18日のロイヤルズ戦から13試合連続で無失点登板を続けていた上原。
ひさびさに失点したのは、8月16日のアストロズ戦でした。10-6と4点リードで登板。かんたんに2アウトをとったあと、グラウンドに観客の乱入があり、以降、HR-ヒット-死球(珍しい!)で満塁にして、最後をようやく一ゴロで締めた試合。(本人ブログ)
これでなにかのバランスが崩れたかのように、以後、投げるすべての試合で失点しています。
8/19 エンゼルス戦 2安打1失点
8/22 マリナーズ戦 5安打5失点
打たれ方も悪かったのですが、外野の深すぎるポジショニングや、バックホームなどすべてがぐだぐだで、この試合に関しては、チーム全体が機能不全という感じでした。
8/25 トロント戦 1安打無失点
3-0とリードの9回、先発バックホルツのあとを継いで1死満塁で登板。セカンドゴロでひとり打ち取ったあと、エンカルナシオンに2ベースを打たれて同点に。失点はすべてバックホルツについています。このあと延長で勝ちましたが、ボストン地元紙でも「来季も保有するならもう休ませるべき」という記事が載るように。
9/2 ヤンキース戦 2安打1失点
中8日あいて、9-3と5点差での登板。先頭のマッキャンにHRを打たれ、1死からヘッドリーにヒットを許しましたが、イチローを三振に、エルズベリーをセカンドゴロにとって試合終了。復調のきっかけになるといいと思ったのですが……。
9/4 ヤンキース戦 2安打2失点
4-3と1点リードの9回。先頭のテシェイラに落ちないフォークをひっぱたかれてライトへ同点HRを浴びると、1死後、ヘッドリーに、やはり落ちないフォークを打たれてサヨナラHR。いちおう動画にリンクを貼っておきますが、くやしいので見てません(笑)。
ファストボールはそんなに悪くないような気がするのです。思ったところには投げられていないかもしれないけど、空振りもとれていました。だから、ほんとに故障とかではないと思います。でも、フォークが――というか、スプリットが、死ぬほど落ちない。浮く、とか、すっぽ抜けるとかじゃなくて、プレートのど真ん中の、いつもなら打ち気をさそっておいて最後にそこからストンと落ちるはずのところに、そのまま居続ける。スローで見るとちゃんとはさんで、腕も振っているのに。こんなことがあるんだなと思いました。
昨年1年間、そして今年もおおむね、意のままにあやつってきたスプリットが、まるで反乱を起こしたかのように動かない。
ピッチングって、なんて微妙で奥が深いんだろうとあらためて思います。ジェフ・サリヴァンじゃないけど、今の上原の苦しみを見るにつけ、昨年のパフォーマンスのすごさがよけいにきわだって感じられます。いや、そういうふうに書くとまるで昨年だけがとびぬけてすごかったと言っているみたいだけど、そうではなくて、今年も春先からずっと制球に苦労しながらどうにか折り合いをつけ、ここぞというところではスプリットを落として結果を出してきたわけです。そのスプリットが、これほどまったく落ちないとは。
そして今日(9/5)の試合前、レッドソックスのファレル監督は、当面、上原をクローザーからはずし、代わりにムヒカがクローザーをつとめることを発表しました。ただし、何度かとりざたされているように、今季残り試合を休養させることはしないようです。
「コウジと話し合って彼も理解してくれた。2、3日間を置いて体勢を立て直してから、少し楽な場面で投げて、調子を取り戻してほしい」
なお、失点しはじめてからの6試合の防御率は19.29、対戦打率5割(28打数14安打)だとのことです。知りたくもないけど(^_^;;
そしてこの決定をうながしたのは、どうやら上原本人だったらしいという情報も。
Koji told Masashi Yamazaki of the Tokyo Sports Press that he requested the team remove him from the closer's role b/c he wasn't performing.— John Tomase (@jtomase) 2014, 9月 5
Carlos Yamazaki of Tokyo Sports spoke with Koji and pitcher told him it was his request to be taken out of closers role— Rob Bradford (@bradfo) 2014, 9月 5
「結果が出ないからクローザーからはずしてほしいと、自分から申し入れた」と、東スポのカルロス山崎氏に語った、という話。
山崎氏は、ボストン在住のジャーナリスト。東スポで上原をフィーチャーした『中継ぎピッチャーズバイブル』を連載し、最近ではテレ東の月一上原インタビューにも登場していらっしゃいます。
もちろん、上原のほうからいわなくてもチームはそういう決断を下したかもしれないけれど、昨年度のWS優勝の立役者のひとりですから、プライドを尊重しようとしたら、逆にシーズン全休なんていう選択肢もあったかもしれません。上原はそれがいやで、自分からチームにとって一番飲みやすい形を提案したのかなあと想像します。
マリナーズ戦での5失点のメルトダウンを見たとき、わたしは、疲れているならあとはお休みでもいいんじゃないかと思いました。
でも、昨日、今日の流れを見て、上原はきっとこの落ちないスプリットをなんとかしたいのだろうと、まだまだ探究心も闘志もいささかも衰えていないのだとうれしくなりました。ブログでも黒田の投球や、錦織の全米オープンに刺激を受けたと書いていますし。
きのうは山本昌が49歳で勝利投手になったし。39歳なんて、まだまだ若いぜよ。裸一貫、巻き直しじゃ~!
できれば今季が終了する前に、なにかしら手応えがつかめるといいのですが。
それにしても野球って、ほんとうに難しいなとしみじみ思います。だからおもしろいんですけどね。がんばれ、上原浩治!
【9/6追記】
本人コメントが出たので貼っておきます。
「戦力になっていない。精神的に時間が欲しいということで、外してもらうように申し出た」と説明。今季の残りを休養する可能性は「チームが戦っているので、自分だけ投げ出せない」と否定した。ファレル監督も「肉体的に問題なく、今季の登板を打ち切る必要はない」と話した。(日刊スポーツより)
本人ブログも更新されていました。ボストンでの上原は、ほんとうに選手とも監督ともうまくコミュニケーションがとれていると感じます。最後まで、応援します。
【9/13追記】
現地 9/12のロイヤルズ戦で1週間ぶりに登板して、久しぶりに1回を無失点に抑えました。
4-2と2点リードの8回ウラに登板。
1 いきなり青木との対戦、粘られましたが1-2からの7球め、スプリットでレフトフライ。ハーフスイング気味のバッティングで青木はくやしそうな表情。
2 インファンテを高めのファストボール3つで空振り三振。
3 ゴードンを5球めのスプリットでライトライナーに。空振りをとった3球めのスプリットがよく落ちて、これは解説のエカーズリーさん(多分)も、「そうそう、こういう落ち方をすれば心配ない」と納得のようす。5球めのスプリットはバットに当てられて、わりといい当たりだったけど、正面に飛びました。
まだファストボール、スプリットとも、ほんとうの好調時にくらべたら制球が今ひとつのような気もしますが、とにかく結果が出たのが大切。
スプリットが落ちるのがこんなにうれしいなんて(; ;)。ボストン系の番記者さんのツイートをいくつか貼っておきます。
As @TeamUehara himself might put on Twitter later tonight: *\(^o^)/*— Pete Abraham (@PeteAbe) 2014, 9月 13
(「あとでコウジも自分でツイートするだろうけど」と、コウジ流エモジを使いこなすピートさんです(笑))
Koji Uehara: “Today was a good step. … The media keeps reminding me how old I am. But they are all old, too.” @TeamUehara #redsox #AARP— Pete Abraham (@PeteAbe) 2014, 9月 13
こちらは上原インタビュー。「きょうは一歩前進した。メディアのみなさんは、いつもぼくの歳のことをいうけど、みなさんも歳でしょ」
あはは(笑)。さすが。ユーモア精神は健在であります。
ボストン・グローブにも記事が出ました。さらなるコメントをピックアップしておきます。
「ぜんぜん満足はしてません。バットに当てられてるから、まだ課題はあるなと。でもきょうは投げられたのでよかったです」
ファレル監督のコメントも。
「きょうはストライクゾーンを攻めていたね。彼は長いことそういう投球をしてきたわけだから。とにかくもう一度試合のなかで投げられたのはよかった。コウジにとってもいいきっかけになるだろう」
このあと何回かは中継ぎをさせて、できれば最後にもう一度クローザーで使ってからシーズンを終えたいとのこと。
もう残り少ないけど、納得のいく登板を重ねて、いい形で今季を終えられますように!