Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

上原、勝負の年へ

しばらくごぶさたしていた上原エントリ。じつはまだ2年契約のこともちゃんと書いていなかったので、あらためまして……。

昨年の10月30日、ワールドシリーズが終わって間もなく、レッドソックスは上原との2年18MILでの契約を発表しました。

ボストングローブ紙は、チェリントンGMの言葉をつぎのように伝えています。

「FA戦線が始まると、やることが山のようにある。上原とはまだ独占交渉権があるのだから、今のうちに確保しておこうということ」

ちなみにこの10月31日は、前年に上原がワールシリーズ第6戦をしめくくってレッドソックスがチャンピオンになってからちょうど1周年という日。当時 “Worst to First”(どん底から頂点へ)とうたわれたレッドソックスですが、そのあとまた「to Worst(ふたたびどん底へ)」が続くとは、だれが予想したことでしょう(^_^;;

2014年シーズンの上原は、6勝5敗、26セーブ、ERA2.52という成績。落ちないスプリットに苦心しながらも前半戦はしっかりと成績を残し、オールスターにも初出場。しかし8月後半からスランプに陥り、6試合(4回2/3)で被安打14(うちHR4)、10失点。9月4日のヤンキース戦で、2HRを浴びてサヨナラ負けを喫したあと、監督に直訴していったんクローザーをはずれ、1週間、走り込み投げ込みに費やしました。シーズン最後は、9月12日、16日、25日と3試合に登板し、なんとか無失点投球でシーズンを締めくくっています。

そんな上原との2年契約について、前記ボストン・グローブ紙の記事は、「リスクも大きい。上原は2015年の4月3日、開幕の3日前に40歳になる」としながらも、チェリントンGMのつぎのような言葉を紹介しています。

「シーズン最後の登板でコウジの調子をたしかめることができたし、ずいぶん話し合いもして状態を確認できた。その結果、健康面、投球面ともに、現在も、今後も大丈夫だろうという確信を得た。( “After that process, felt really, really comfortable with where he was and where he will be going forward both from a health and performance standpoint.”)」

きちんとしたパフォーマンスで締めくくったのはもちろんですが、渡米5年めのシーズンを終えた上原が、首脳陣とたいへん上手にコミュニケーションをとっていることがうかがえます。自分の現状を把握し、その対策をきちんと立てていることが言葉からも実際のトレーニングぶりからもうかがえたからこそ、球団は、40歳目前の上原に2年契約をオファーしたのでしょう。

年末のNHK-BSの「全力通信 総集編」に生出演したさい、上原は、9月に1週間休養をとったあとの、ロイヤルズ戦での登板についてこんなことを言っていました。

「久しぶりだから楽な場面で投げさせるって言ってくれてたのに、2点差の緊迫した場面で、しかも相手が青木(笑)。でも、そこでフライで打ち取れたのがよかった。あとはいい感じで終われたと思う」

また、6月末からクローザーになった2013年にくらべると、初めからクローザーだった2014年は、「最初から胃薬を飲んでいた」とも。さらには、7月末のファイヤーセールで主力の大半を失ったチームにあって、モチベーションを保つのが大変だったことも認めています

体力的、精神的にきつかった2014年。それでも2年契約を――それも正式にFA戦線が始まる前に――もらえたことは、まさに僥倖でした。本人も上記の番組で「そりゃあもううれしかったですよ。2年契約もないだろうなと思っていましたから。1年だったらもっといろいろな球団と交渉していたと思います」と語っていました。

けれども渡米後一番の高給を勝ち得て迎える来季は、ある意味、大きなプレッシャーとの戦いにもなります。気負わず、練習をしすぎず、まずはスプリングトレーニングを無事に、いいコンディションで乗り切ってもらいたいと思います。

ところで、なかなか落ちつき先の決まらなかったイチローが、先日、ついにマーリンズと契約しました。ありていにいえば、ベテランの控え外野手。入団会見があるだけでも驚きなのに(上原がボストンと契約したときは、たしか取材もなく、ひとりでひっそりとサインだけすませたはず)オーナー、球団社長、GMなどみんながそろって日本までやってくるのですから、異例どころの騒ぎじゃありません。

そんななかでイチローが、契約が今の時期までずれ込んだことについて「ペットショップで並んでいるかわいい子たちがどんどん売れていって、ちょっと大きく成長した犬は残っていく、みたいな状態ですかね。それでも飼ってくれる人がいたら、忠誠を尽くすと。そんな感じでしょうか」と語っていることに、「イチローでもそんな気持ちになるんだ」とびっくりしたし、ある意味新鮮でもありました。

イチローは1973年10月生まれの41歳。ひとつ下が1974年6月生まれの松井秀喜(2012年シーズン後に引退)。そして黒田が1975年2月生まれで早生まれなので、松井と同学年。上原は1975年4月生まれなので、黒田と2か月しか違わないけど、学年はひとつ下(しかも大学入学時に浪人しているので、大学の学年はたぶん2つ下。ややこしい)……という年のならび。こうしてみると、みんなそれぞれ人生の大きな転機を目の前にしてるんだなということを感じます。

しかし、アスリートとしては40歳はかなり歳ですけど、たとえば政治家だったらどうでしょう? 特に日本の政界なら、たぶんまだ青二才って言われます(笑)。企業でも(会社によるけど)課長とか部長とかが多い? つまりまだふつーに若いんですよね。先日の会見で、イチローはこんなことも言っています。

「-新しい環境に飛び込む気持ちは?

 イチロー:そんな重いものじゃなかった。こんなことは若いうちにしかできないと思うから。これは行くべきだって思いますよね。まだ平均寿命までは39年くらいあるので、そういう観点からとらえると、という意味です。野球選手としてという意味ではなくて」

この発想ができるのは、強いなと。

もちろん、20代の身体と同じではあり得ません。スポナビブログでも何人かの方が書いていらっしゃいましたが、おそらく動体視力などもそれなりに衰えているでしょう。去年は、これまでのイチローでは見なかったような、頭の上を越される守備などもちょくちょく見かけました。

それでも自分はまだまだ進歩できるという信念があるし、新しい環境に身を置く冒険心も当たり前のように持っている。

上原も、口では「もう歳だから」と、日本語でも英語でもしょっちゅう言ってますが(笑)、ぜったいにまだまだこれからだと思っている。そうでなければ、2年18MILなんていう契約は結べません。広島へ帰った黒田ももちろん同じ。

若者の挑戦はきらきらしていて、まぶしくて、ひきつけられますが、若きベテランたちの挑戦には、どこか自分を重ねてしまいます。

1年間、彼らが納得のいく戦いをできるよう、願っています。