ブックレビュー:『田中将大、ニューヨーク・ヤンキースの超新星』
ゆえあって、新刊を読みましたのでご紹介。
『田中将大、ニューヨーク・ヤンキースの超新星』マイケル・パート著/堤理華訳/作品社
えー、ふだんはニューヨーク界隈には見向きもしないのですが(笑)その理由はおいおい説明するとして。
目次などは出版社のサイトに出ています。
田中投手は、もちろんまだメジャー1年めを(それもDLに2か月入っていたから、かなり短いシーズンを)終えたばかり。
だから、ある意味、内容は軽めです。
でも、1年目の足跡をまとめてあるだけでなく、メジャーにわたった日本人投手の系譜やポスティングシステムの成り立ちなどもざっくりとまとめてあるし、まーくんが対戦する相手球団の沿革(レイズ、ブリュワーズ、ブルージェイズetc…)などもかんたんではあるけど記されています。
ブリュワーズって、もと、シアトル・パイロッツだったんですね~。そういえばジム・バウトンの『Ball Four』でかなりくわしく語られていたっけ。
あと「レーナ・ブラックバーンの泥」のような、メジャー豆知識的なことも(いや、豆知識じゃなくて基礎知識か?)1章とって記してあります。(あー、知ってるよ、という人もたくさんいらっしゃると思いますが。)
ですので、メジャーリーグを見なれていて、ふだんからバスター・オルニーや、ケン・ローゼンタールのツイートをフォローし、NYタイムズやポストも読んでるよ、という方にはちょっと物足りないかもしれないけれど、まーくんの移籍をきっかけにメジャーリーグの試合を見るようになった方(2009年のわたしがそうであったように)には、とても手際のよいまとめであり、メジャーリーグ紹介の1冊だと思います。
ひとつ文句を言うとすれば、さきほど「相手球団の沿革も記されている」と書いたけど、オリオールズのことは書いてないんですな、これが。オリオールズ戦で負けた話は当然出てくるのですが、オリオールズがどういう球団かとか、2014年に地区優勝を果たしたのはオリオールズであるとか、ヤンキースは2位だとはいえ12ゲーム離されていた、ということはひとことも書かれていません(`⌒´)
なんですかね。よっぽどくやしかったんですかね。ぶつぶつ。
でも、この本を読もうという方は、(わたし以外は)だいたいまーくんファンか、ヤンキースファン(あるいはメジャーリーグ全般のファン)だと思いますので、そんなことはどうでもいいですよね(笑)。読みやすく、コンパクトに書かれていますので、おすすめです!
でもって、なぜわたしがこの本を読んでいたかという理由がこちら。
魂、売りました……。(売ってません。仕事は仕事(笑))
いや、でもね、やっぱり面白いんですわ。訳すそばから人に話したくなります。現在、がんばって作業中。
ぶじに最後までたどりつけるようがんばります。
【追記 3/3】
ちょうど今日、米ヤフースポーツのジェフ・パッサンが、田中投手のインタビューをまじえた記事を流していました。
ケガの原因は投球フォーム、というこちらの記事です。
「投球フォームが固まっていなかったなと。正しいフォームでバランスよく投げれば、しっかりした球が投げられますから。むりやり強い球を投げようとしなくても、いいフォームで投げられればいいと思っています。
フォームについて完全に満足することはありませんね。体調は毎日ちがうので、体の声をきいて、日々微調整をしたり、ときには大きく変えたりしないとなりませんから。完ぺきなフォームというものにはなかなかたどりつけません」
田中投手の言葉を通訳さんが英語で伝え、それをわたしがまた訳しているので、例によって元の言葉とはずれていると思いますが。
アメリカ人は、靱帯に損傷があったら(たとえ部分的損傷でも)痛みをがまんしながらやるのはいやだから、早めに手術をしてすっきりしてしまおう、と考える傾向があるし、日本人は(この記事の中に引用されている村田兆治の言葉が典型的だけど)できるだけ体にメスを入れることを避けようとする傾向があります。
上原は、2011年に右ひじ屈筋腱の(よくマスコミでは「靱帯」と報道されるけど、靱帯ではない)部分断裂のあと、手術だったら引退かなと頭によぎったたところを温存療法で乗り切り、有名になった超音波治療器での日々の治療などで無事に投げ続けています。やはりアメリカ仕様のフォームの調整も行っていて、歩幅をせばめ、脚に負担がかかりにくいフォームにした結果、巨人時代から毎年のように悩まされていたハムストリングのケガは、ここしばらく発症していません。
また、マリアノ・リベラもごく若いころ右ひじ靱帯に部分断裂が見つかって、クリーニング手術(ショウォルター監督が「マリアノもTJを受けている」と言っていたことがあるけどTJではなかったらしい)を受けています。
ただ、中4日で回す先発投手でそれが可能なのかどうか。
(そういえば巨人の菅野も似たような立場ですよね。オープン戦の投球などを見ると、菅野の場合はまだヒジが痛いか、あるいは痛くならないようにかばっているかしてるんじゃないかと思えます。)
まーくんにとって、あらゆる意味で、とても大切なシーズンになりそうです。