Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

上原:ライナー直撃でMRI待ち→骨折判明 (>_<)

上原、8月7日のデトロイト・タイガース戦で、イアン・キンズラーのピッチャーライナーを右手首に当てて負傷しました。当たった瞬間の画像がこちら。

Koji's wrist, if you missed it https://t.co/rUmnsCL7OD— Sox Lunch (@Soxlunch) 2015, 8月 8

こちらもどうぞ。まず、音にびっくりします。それから、ボールがたいして跳ねてない(だから自分でひろって処理した)のも、こわいです。手首にまともにあたったということがよくわかります(>_<)

それにしても、よくぞ一塁をアウトにしたものです。ちょっと低かったけど、ほぼストライクの送球をする、そのプロ根性のすごさよ。

そもそもこの試合、上原が出るような試合展開ではありませんでした。試合結果だけ見ると7-2でレッドソックスが勝ち、セーブ上原、となっているのが不思議。5点差で9回に入り、マウンドには8回から投げていたマスターソンがそのままあがったのですが、先頭にツーベース、つぎのアビラを歩かせ、一人三振にとったものの、4人めのゴーズも歩かせて一死満塁。ここで上原の緊急登板になったのでした。

しかし、5点差でHRが出てもまだ1点リードがあるわけですが、それでもセーブってつくのね。あ、これか「迎える打者2人に本塁打を打たれたら同点または逆転される状況」。なるほどね。

上原は、マウンドにあがると、まずホセ・イグレシアスを、スプリット、ファストボール、ファストボールで三球三振。最後はアウトハイの速球でした。キンズラーにはスプリット2球で空振りをとって追いこんだあと、ファウルを2球。そしてイグレシアスを振らせたようにファストボールで決めにいったところ、ライナーを打たれ、とっさに手を出してしまいました。体の反応なんですね。

セーブをあげてから痛みのためマウンドにしゃがみ込む形になった上原。トレーナーにつきそわれてやっとひきあげると、そのままベンチ裏でX線の検査を受けました。結果はシロで「骨折なし」の判定。それでもかなりの腫れがあり、その日はこんな状態に。いつも上原の顔文字をおもしろがって、顔文字込みで翻訳をツイートしてくれるピートさんのツイートでお届けします。

Translation from Koji: "This situation is. Have been pretty swollen. >_<. " https://t.co/nLH7f5Rk9M— Pete Abraham (@PeteAbe) 2015, 8月 8

翌日にはサポーターはとれたようですが、腫れはかんたんにはひかず(本人ブログ)、また痛みも続いているということで、チームを離れ、ボストンに帰ってMRIを受けることになりました。今はその結果待ちですが、そんななかでも相変わらず「つかみはOK」なのが大阪人上原浩治です。

だいたい日本人選手って、たいていは現地の報道より日本での報道のほうが細かいことまで報じられるし、報道量も多いものですが、上原の場合、それが逆なことが多いのが笑えます。今回も、スポーツ紙各紙はあっさりとした報道ぶりなのに、ボストングローブもボストンヘラルドも、本人のコメント入りのフィーチャーストーリーになっていました。そのなかでボストン・ヘラルド紙の記事が面白かったので久々にご紹介しましょう。

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Koji Uehara ‘glove’ comment is quote of the year

「ボールを投げたら、あとは体全体がグラブだと思ってますから」

――コウジ・ウエハラ

2015年のレッドソックスには、ワールドシリーズ制覇はできそうにない。MVPや新人賞の投票で名前があがる選手もいないだろう。ジョー・ケリーには申しわけないが、サイ・ヤング賞もむりだ。

だが「今年の名言」ならどうだろう?

それはもうコウジ・ウエハラのコメントで決まりだ。

8月7日、コメリカパークで、レッドソックスは7対2で勝利をあげた。タイガースのイアン・キンズラーがピッチャー返しのライナーを放ち、それが上原の右手首を直撃したが、上原はすばやくボールをひろって一塁のトラビス・ショーにストライク送球をした。スリーアウト、ゲームセット。

しかしそのあと上原はマウンド上で痛みにもだえ、レッドソックスの選手がいつもの通り勝利のハイタッチを行うかたわらで、ジョン・ファレル監督とトレーナーが上原のもとへ駆けつける事態になった。

幸い、コメリカ・パークのベンチ裏でのX線検査の結果、上原は骨折なしと診断され、記者団の取材を受けた。

キンズラーのライナーについて質問が飛ぶと、通訳のCJ松本が上原に日本語でたずね、上原が日本語で答える。それを松本が英語に通訳すると、そのフレーズはまたたくまにツイッターで拡散された。

「ボールを投げたら、あとは体全体がグラブだと思ってますから」

Koji Uehara:"I consider my whole body to be the glove once I release the ball." #RedSox— Steve Buckley (@BuckinBoston) 2015, 8月 8

しゃれているし、パンチがきいているうえに、すばらしくシンプルだ。同時に上原のマウンド上での意識や、投手が5番めの内野手であるという、忘れられがちな事実についても語っている。そう、投手にだってゴールドグラブは与えられるのだから。

翌日、ファレル監督もあらためて上原を賞賛した。

「あの打球をアウトにしたことに驚いたよ。すごい当たり方だったからね。本能的な動きだったんだろう」

あのコメントはどう思いました?

「ああ、体全体がグラブだというコメントだね。あれは初めて聞いたよ」

プロとして30年間野球をしているファレル監督でも聞いたことがないという。

あの日上原は、ボストンのメディアの取材を受ける前に日本の取材陣とも話をしていた。日本の様々な媒体で仕事をしているジャーナリストのキヨコ・タニグチ(谷口輝世子)によれば、上原は、日本の取材陣に対してはこのコメントをしなかったそうだ。

言語の壁があるため、上原は、ほかのレッドソックスのスター選手に比べると、日々記事に取りあげるのが難しい。それでもこの日のようにときどきキラリと光るコメントをする。

上原は、2013年ワールシリーズでの活躍で、またレッドソックスの勝利の儀式となったデイヴィッド・オルティーズとのじゃれ合いで、ファンの記憶に刻まれている。しかしこの日、負傷しながら取った最後のアウトのおかげで、ファンの目には上原の沈着冷静な一面も焼きついたことだろう。ファレル監督はこう語る。

「その冷静さは、いろいろな場面で目にしてきたんじゃないかな。勝負のかかった場面で、コウジは感情に左右されずに、自分の球を投げきることができる」

上原のつぎの登板がいつになるかはわからない。当面、故障者リスト入りはしない予定だが、ファレル監督もいうとおり「昨晩ほどではないが、まだ少し腫れている。きのうよりはずっと元気だけどね。いつ投げられるようになるかはまだ未定だ。今夜(8日土曜日)はまず登板しないだろう」

タイガースもレッドソックスも優勝争いから脱落しているので、あのプレーそのものは忘れられてしまうかもしれない。しかし上原が次回フェンウェイパークで登板するときには、きっと拍手喝采を浴びることだろう。

ひょっとすると、そのうち上原のボブルヘッド人形も作られるかもしれない。大きなグラブの上に上原の頭がのっかっているやつが……。

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上原は翌日にも「ゴールドグラブを取ろうと思って」といって、地元記者たちをおもしろがらせています。

Koji improved but sore. Unavailable today and probably not tomorrow. "I was trying to win the Gold Glove," he said. #RedSox— Pete Abraham (@PeteAbe) 2015, 8月 8

きついときこそジョークを連発するのは、アメリカ精神と大阪精神の共通点なのかも?

ちなみにあの「体全体がグラブ」という発言は、日本で投げていたころにも何度か口にしていました。たまたま手元にある記事からちょっと抜粋。2004年4月15日の中日戦です。

「7回無死一、二塁のピンチでも、井上のピッチャー返しの打球を左太ももに当てながら、併殺に仕留めた。「オレは体全体がグラブだから。どこに当ててでも、絶対に止めたるで」常々口にしている言葉通りの気迫だった。(報知新聞)」

ただ、日本でも他の選手が言っているのを聞いたことはないので、きまり文句ではなく、上原オリジナルなのでしょう。それがアメリカの人にこんなに受けるなんて!(笑)

ともあれMRIもシロでありますように。手首の柔軟性は、ファストボールを投げるにもスプリットを投げるにも不可欠なので、可動域含めすべてが早く万全の状態まで回復するよう祈っています。

【11日午前3時追記】

やはりDL入りするようです。正式発表はまだなのですが、MRIのあとなのでひょっとして亀裂骨折でも見つかったんじゃあるまいかと……。また朝に追記します。

【午前8時追記】

やはり骨折が判明してしまいました(>_<) 右手の遠位橈骨亀裂骨折(a non-displaced distal radius fracture)です。亀裂骨折と訳していいのかどうかわかりませんが、non-displacedなので折れた骨がもとの位置のままずれておらず、整復や出術が必要な状態ではないということでしょう。この図は、高齢者が転んだりして起こる遠位橈骨骨折を説明しているので、骨がずれてそうですが……。

オフィシャルサイトの発表では done for season(今季絶望)とされ、治るまでの期間とリハビリ期間を合わせて考えたら、まあそれが現実的なのかなと思わないでもありませんが、上原自身はこうツイートしていました。

いやいや皆さん、まだ今シーズン終わってませんから。復帰することを目標に頑張ります!— KOJI UEHARA (@TeamUehara) 2015, 8月 10

この気持ちがあるからこそ、あそこでボールをひろって一塁に投げられたのですね。さすがは一流のアスリートだなと思いました。なので上原に敬意を表して、まだシーズン成績のまとめは行わずにおきます。ある意味、これで8月のトレードもなくなったと思うので、腰をすえてリハビリに専念していただきたいです。またあのしなやかな手首の動きから放たれる切れのよいボールを見ることを楽しみにしています!