Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

クリス・デイヴィスと再契約

おたがい、ほかに選択肢はないでしょう、とだれもが思っていたのになかなか進展しなかったクリス・デイヴィスとの交渉がついにまとまり、オリオールズはとうとう清水の舞台から飛び降りてしまいました(笑)。

.@Orioles, @CrushD19 reportedly agree to 7-year, $161 million deal. Club has not confirmed. https://t.co/sX0XgL7D8L pic.twitter.com/mKxCCQFPxN— MLB (@MLB) 2016, 1月 16

第一報は、最近CBSをやめて独立したジョン・ヘイマンの、16日(現地)のツイート。

Breaking: Chris Davis is heading back to the Orioles. sides are in agreement.— Jon Heyman (@JonHeyman) 2016, 1月 16

その契約内容は7年161mil。単純計算すると、1年あたり23milで、これはもちろんオリオールズ史上最高額。

ただ、じつはかなりおもしろい契約なので、単純計算はあてはまりません。これについては、あとでくわしく書きます。

そもそも、11月のウィンターミーティング中にオリオールズがデイヴィス/ボラスに出したオファーは7年150milでした。そして、このウィンターミーティングでは、おどろくほどデイヴィスの名前があがらなかった、と、各社の記者が報じていました。

お金のあるチームはファーストが埋まっていて、ファーストを探しているチームはお金がない。そのため暮れごろからは、ボラスが「外野も守れる」と各チームにアピールを始め、オリオールズは、ほかにオファーしているチームがないのに延々と答えを引き延ばすボラスに対して、しだいにいらだちをつのらせていきます。

それが顕在化したのが、ここ数日の動向。オリオールズが、やはりまだ行き先の決まっていないセスペデスに5年90milのオファーをしたのです。これに乗じて、ボルチモアの〈ジミーズ〉というシーフードレストランが、「オリオールズに来てくれたら、クラブケーキとカニを生涯無料にするよ」なんていう太っ腹なおさそいをしたり(下のツイートではクラブケーキにしか触れていませんが、カニの分も別ツイートでありました(笑))。

Believe the hype, @ynscspds. New York's pizza has NOTHING on our crabcakes. Free for life if you sign with @Orioles! pic.twitter.com/GFH7nymwpm— Jimmy's Seafood (@JimmysSeafood) 2016, 1月 15

これで、デイヴィスもあせったんでしょうかね。

「いや、おれもカニ好きだし」みたいな?(違)

そのせいかどうかは知りませんが、このあと急転直下、デイヴィスとの再契約が決まったのでした。

しかもその金額が、当初の150milを上回る161mil。ほかに正式なオファーを出しているチームがなかったのに上積みを引き出すなんて、ボラスのボロ勝ちじゃん!……と、だれもが思ったわけですが、契約内容をよく見ると、それなりにオリオールズ側の意向もくんだ形になっています。

まず、昨今はやりのオプトアウトはなし。オリオールズは早い段階で、オプトアウトへの反対を表明していました。(基本的に成績がよかったらさっさとFAになってもっといい契約を求め、成績が悪化したらそのまま居座るという仕組みですので、球団のうまみは少ないような気がします。なんでこんなにはやってるの?)

つぎにノートレード条項は、全球団に対するものではなく、限定的なもの。

そして、何よりもすごいのは、161milのうちの42milが、「後払い」だということ。契約期間の2022年までは、年17milずつ(ちなみに、アダム・ジョーンズが、今年と来年16.3milで、再来年は17.3mil)。そして2023~32年が年3.5mil、33~37年が1.4milずつ。後払いの分には利子がつかないので、インフレを加味すると、ひとことで「161mil」というよりは、オリオールズの負担が若干軽くなります。こんな形をとってでもボラスが「総額161mil」という数字にこだわるのは、人がかんたんに話題にするのは、あくまでも総額だから、というのがFangraphsの分析(昨年のシャーザも基本的に同じ形です)。そうやってクライアントと自分の価値を高めるわけですな。

それにしても、2037年に払い終わるときには、デイヴィス51歳だそうで、年金というか、終身雇用というか、アンジェロスオーナー、そんなにデイヴィス好きだったんだ……ってちょっとびっくりしました。

さて、この契約はかしこい投資になるのでしょうか。それを判断する最も大きなポイントは、これからの彼のパフォーマンスですが、懸念材料としてよく指摘されるのが、三振の多さと、成績の浮き沈みの激しさ。それにくわえてこちらのジェフ・サリバンの記事では、ボールをひっぱる率が年々上昇しているという指摘がなされていました。

たしかに2013年に大爆発したときは、あらゆる方向へHRを飛ばしていたのですが、2014年は、引っ張った打球がことごとくシフトにはまって凡打になり、そこから調子をくずしていった感があります。昨年も出だしはひっぱってシフトにはまる、というパターンが多かったのですが、逆方向への打球が出るようになってから調子が上向いていきました。

来年以降も、反対方向へのいい当たりがどれだけ出るかというのは、デイヴィスにとって、ひとつのバロメーターになるかもしれません。

そして、この契約を生かすもうひとつの要因。それは投手陣の整備です。

2015年は、デイヴィスがHR王をとったのに81勝81敗の5割がやっと。その最大の原因は、先発投手陣の不振でした。

このオフ、ウィーターズ、オデイ、デイヴィスとコアメンバー3人が再契約し、さらにトランボ、キム・ヒョンスと契約して、攻撃陣とリリーフ陣はそれなりに整備されたと思うのですが、先発陣は、チェン・ウェインが、マーリンズと5年80milの契約を結んで去ってしまったため、去年よりさらに手薄になっています。

昨年投げていないディラン・バンディやハンター・ハーヴェイに期待するのは、いくらなんでも無理があるので(いや、もちろん期待はするのですが、そこにすべてをかけるのではなく、「若手が出てきたらめっけもの」というぐらいにはしておきたい)最低でもひとりは外部からとりたいところ。残っている投手たちのなかで、ガヤードは、QOを受けているのでドラフト指名権を失うし、フィスターは2年20milを求めていると言われ、希望の価格帯におさまらない。

かといって、これだけ投資したのに、投手陣が手つかずではすべてがむだになってしまう……。

う~ん……。でもまあ、あまり深刻に考えてもおもしろくないので、だれかひとりぐらい来てくれるといいな、と期待しながら待つことにしましょう。

でも、ほんとうののぞみは、ディラン・バンディとハンター・ハーヴェイが、1年間投げ続けられる体力をつけることなのよ~! それが実現したら、明るい光のさすところへいけると思うんですけどね。ほんと、がんばっておくれよ若者たち。