Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

O's:後半戦持ち直し12勝15敗&キムのこと

オリオールズ、前回のエントリのあと3月10日にNYYとひきわけ、翌11日に負けてオープン戦開幕連敗を10まで伸ばしました。しかし12日のフィリーズ戦で初勝利をあげると、後半はぐんぐん持ち直して結局12勝15敗5分け。オープン戦の勝敗はあまり関係ないといいつつも、そこそこ形になってよかったです(笑)。

連敗中と1勝後の成績をかんたんに見てみましょう。

3/1-3/11 0勝10敗2分け 得点39 失点87

3/12-4/1 12勝5敗3分け 得点132 失点105

得点がぐんとアップしたことがわかります。試合数がちがうので1試合あたりに直すと

3/1-3/11 3.25 得点/試合 7.25失点/試合

3/12-4/1 6.6 得点/試合 5.25失点/試合

得点が倍に増え、失点は2点減りました。よくも悪くも、これが2016年オリオールズの形になるんじゃないのかなという予感がします。先発投手が5回ぐらいまでどうにかこうにか投げ、先取点をとられてもあまりくじけずにリリーバーにつなぐうちに、打線が長打でごつんごつんと点をとり、リリーバーが抑えていくという形。それでうまくいけば勝つし、先発陣が崩れすぎれば無理、ということですね。あんまりきれいな勝ち方はできないかもしれないけれど、あきらめない心があればなんとかなるかもしれん、と。(笑)どんなシーズン予想だ。

ちなみにスプリングトレーニングは、各チーム試合数がちがうし引き分けがあるのでなんともいえないのですが、勝率だけで見ると、オリオールズは、マーリンズドジャースレッドソックス、アスレチックス、ロイヤルズ、メッツ、ジャイアンツ、カブスパドレス、パイレーツ、ブレーブスの11球団より上に来ました! さてレギュラーシーズンで、これらのチームはどんな戦いを見せるのでしょうか。勝ち星がふた桁に届かなかったメッツ(8勝17敗)、パイレーツ(8勝21敗)、ブレーブス(6勝20敗)は大丈夫か? WS優勝候補最右翼と目されるカブス(11勝18敗)はどんな戦いを見せるのか。興味津々です。

さて、前回のエントリでは、ガヤードとの契約をフィジカルのせいで変更したり、デクスター・ファウラーを取り逃したりといろいろドタバタだったキャンプ前半のようすをお伝えしましたが、後半はそれに輪をかけてぐちゃぐちゃでした(-_-;; キム・ヒョンスとの関係がこじれてしまったのです。

オープン戦7試合、21打数ノーヒットのあと、23打数ノーヒットまで記録をのばし、24打席めでようやく内野安打を打ったキム。その後ぽちぽちとヒットが出て.178でスプリングトレーニングを終えました。しかし長打はなし。本人も、初めて対戦する投手ばかりだから、とコメントしていたように、アジャストするには少し時間がかかりそうだなという状態でした。

しかしそれ以上に問題なのは、おそらくディフェンス。スプリングトレーニング中にキムのプレーを数回にわたって視察した他球団のスカウトが、その守備についてつぎのようにのべたというのです(ソース:ボルチモア・サン)。

「一歩目が遅いし、判断が悪いから打球の下に入るとき遠回りする。肩も弱いし、足もさほど速くない。あまり動きが機敏ではないね。よほど打たないと、ものにならないだろう」

……うううっ。

思い出すのは(古傷をほじくり返すようですが)中島裕之。彼の場合はキャンプ中に肉離れをして、そのまま3Aに居残ったものの、打てない上にやはり守備の評価が低くて2Aにまで落ち、結局その年の8月にDFAされて40人ロスターからはずされています。契約もキムが2年7MIL、中島が2年6.5MILと、だいたい同じレベル。しかしひとつ大きな違いがあります。それは、キムの契約には「同意なくしてマイナーに落とさない」という条項が入っていること。それが今回もめることになった最大の原因といっていいでしょう。

じつはわたし、これ、海外(とくにアジア)のリーグから渡米した選手にはふつうについているものだと思っていました。というのも、上原のオリオールズ時代の契約にもついていたし、2014年にやはり韓国から入団してメジャー昇格を果たさないままとちゅうで契約を解除して、韓国にもどったユン・ソクミンの契約にもついていたと記憶しているからです。ユンの場合は、ビザの発給が遅れてオープン戦で投げる機会がほとんどなく、自然な流れで3A行きを承諾。しかし3AでもERA 5.74とまったく結果を残せず、けっきょく上に呼ばれる機会がないまま、2015年にキア・タイガースから4年8.2MILドルの契約をもらって帰国したのでした。

ところがベースボール・プロスペクタスのこのサイトで、30球団の選手たちの契約を“consent”(同意)をキーワードにして検索してみたら、「本人の同意なくしてマイナーに降格しない」という条項が入っていたのは、現役選手のなかではキムと、オリオールズ時代の上原の契約だけだったんですよね。まあこのサイトがすべてを網羅しているのかどうか知りませんので、確かなことはいえないのですが、わたしが思っていたほど一般的な条項ではないのだなと。でも上原の契約に入っていたということは、デュケットさん発ではなく(上原を獲得したのは、アンディ・マクフェイル)、オリオールズという球団の伝統??? 今オフ流行の「オプトアウト」は、頑としてはねつけたデュケットさん(というか、オリオールズ)なのに、こんな条項を盛り込んでいるのはなぜなんでしょう(^_^;;

さらに、デュケットさんには、もうひとつ言いたいことがあります。たしかにユンは、その場の流れもあって降格をすんなりのんでくれましたが、キムにも同じ手が通じるものとかんたんに考えてはいけません。そもそも騒ぎが大きくなったのは3月27日にケン・ローゼンタールによる「オリオールズがキムを韓国に送還?」という記事が出てから。これもよく読むと、「こういう手もあるし、こういう手もある」と言っているだけなのですが、世間的には「オリオールズがメディアにリークしてキムに圧力をかけている」と受け取られてしまうわけですよ。(本当のところはどうなのか知りません。)

ボストンのGM時代から韓国の選手を獲得して、韓国にはくわしい、という触れ込みではありましたが、2012年のキム・ソンミン問題のときも手順をまちがえて相手を怒らせた。そして今回も、本人との話をしっかりつめる前に、意図的かどうかはともかくとして、メディアにリークしてしまった。日本人もそうですが、アジアの選手は、手続きとか体面とかを重んじる傾向が強いのだから、もっと国民性を学ばないと! 

あと、キム・ヒョンスに関していえば、今年、イ・デホ、パク・ピョンホのふたりが好調で開幕メジャーをつかんだというのも3A行きを固く拒否する要因になっているんじゃないかと、わたしは想像しています。自分の国から3人渡米して、自分だけマイナーで開幕なんて、絶対にいやじゃないですか? わたしだったらいやです(笑)。しかも契約上、メジャーに残れる権利があるのだったら、なんとしてもそれを前面に押し出すことでしょう。

ただ、オリオールズの立場も記しておくと、上ではコンスタントに打席を与えられないので、下で経験をつんでほしい、というのが純粋な本音でしょう。それで、もしキムがいい成績をあげれば、上でチャンスを与えるのにやぶさかではないはず。というのも、ショウォルター監督が就任してから、オリオールズは3Aの監督がひーひー言うほど、選手を激しく入れ替えて戦っているのですから。キムのエージェントのLeeco Sports Agencyというのは、韓国ベースなんですよね。いったいオリオールズというチームの特性をどこまで理解しているのか。

どうも今回の件は、双方が相手の文化を理解していないために起こったディスコミュニケーションという面が、とても大きいんじゃないかという気がしてなりません。

おそらくキムは、開幕をメジャーで迎えるでしょう。しばらくは代打中心で、そのうちぽつり、ぽつりと右投手のときにスタメンがあるかもしれません。そういう待遇に文句をいわず、手にしたチャンスを必死につかみとってほしい。そうすることでしか自分を証明することはできないのだし、そうやってチャンスをつかみとってビッグになった人はいくらでもいるんですから。