Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

O's: ロケットスタート(?)のあと必死に貯金を守る

開幕から1か月たちました。

オープン戦で開幕10連敗をやったあと、レギュラーシーズンに入ると驚きの開幕7連勝。じつはショウォルター監督は安定感を旨とする監督なので、オリオールズの監督に就任してからさほど大連勝はなく、この7連勝が最長。

ふだんあまりやらないことをやったので、このあと大連敗なんかしないといいなあと思っていましたが、4月13日に初黒星がついてからは、しっかり通常運転に(笑)。11勝12敗で、開幕時のタンス貯金をどうにか維持しております(ひとつへってるけど)。

きょうの時点でHR数は43本でアリーグトップ。メジャー全体では、メッツ、カージナルスについで第3位です。

とくにきのうのアスレチックス戦での、マチャド、アルバレス、スコープ、トランボ、リカード、マチャド(グラスラ)の6本塁打はすごかった。(動画はビデオ。音が出ます。)

Goodbye, home runs! ALL of them. #VoteOrangehttps://t.co/w527tX4Fof— Baltimore Orioles (@Orioles) 2016年5月9日

「ホームランでしか点が取れない」といいますが、タイムリーがみんなホームランになっちゃうんだから仕方ないじゃない?(いやらしいって)

まあ、よくも悪くもオリオールズの究極の形のひとつではあります。現時点でマチャドとトランボが9本ずつ、デイヴィスが8本でつづき、スコープも5本。例年どおり、パワーではどこのチームにもひけをとりません。

「でも三振が多くて粗いんじゃない?」というツッコミが当然くるわけですが、今年は若干の改善が見られています。

    2015(シーズン通算)  2016(現時点)               

三振率 22.2 %(リーグ2位)  21.8%(リーグ7位)

四球率 7.9% (リーグ13位)  8.5%(リーグ6位)

出塁率 .307 (リーグ12位)  .330(リーグ2位)

どの数字もすこしずつ良化しています。とくに出塁率は大幅な改善。まだ30試合消化時点なので、あまり喜びすぎるのもどうかと思いますが、試合を見ていて、凡退する打席でも相手投手にできるだけ多く球数を投げさせようという意識は見られますし、チームをあげて出塁率強化をうたってきた成果が多少は見られるのかなと思います。

では投手陣はどうでしょう。こまかい数値はいろいろありますが、わたしはセイバーな人じゃないので防御率(ERA)だけ。

    2015(シーズン通算)  2016(現時点)   過去2週間

全体  4.05(リーグ7位)   3.63(リーグ5位) 3.41(リーグ5位)

先発  4.53(リーグ14位)   4.35(リーグ7位) 3.29(リーグ4位)   

救援  3.21(リーグ3位)   2.45(リーグ2位) 3.68(リーグ8位)

スマホで見るととちゅうで切れちゃうかな? もしそうだったらごめんなさい。

開幕ロスターのときも書いたと思いますが、やはりオリオールズ投手陣は、リリーバーがひっぱる形。ただ、去年壊滅的だった先発陣にも改善が見られます。とくにここ2週間は、ややお疲れ気味のリリーフ陣を先発陣がカバーする形。ひとつひとつの試合を見ても8日のアスレチックス戦でティルマンが6回1/3、3失点、前日の同カードでヒメネスが8回2失点と、少しずつ長いイニングを投げられるようになってます。この傾向がつづくといいんですけどね~。

なかでも特筆すべきは、5月5日のヤンキース戦でマーくんと投げ合ったケビン・ゴーズマン。日本の報道では当然のことながら、マーくんがすばらしいピッチングだったのに「不運にも」勝ち投手になれなかったということしか語られませんでしたが、不運だったのではなく、ゴーズマンも同じくらいすばらしい投球をしたから、見ごたえのある投手戦になり、どちらにも勝ち星はつかなかったんですよね(試合は、アルバレスのサヨナラ犠飛オリオールズが勝利)。

8 IP, 0 ER, 98 pitches. @KevinGausman isA) DominantB) EfficientC) #ASGWorthyD) A, B & Chttps://t.co/92AvEJi4su pic.twitter.com/pFf6T3jbPJ— Baltimore Orioles (@Orioles) 2016年5月6日

(ツイート下部のリンクでビデオにつながります。)

96マイルの速球、それより10マイルほどおそい「スプリットチェンジ」。この日はどちらも効果的でした。

肩の腱炎で3週間ほど出遅れ、4/25日の初登板以来まだ3試合しか投げていませんが、イニング数も5回、6回、8回とのばし、ERAも1.42。

いよいよ真のゴーズマン到来か? ……まだ3試合じゃなんともいえないけど、昇格したてのころのように、ただただ速球をど真ん中に投げ込んで打ち返されていたころから見ると、ずいぶん大人になった印象。とにかく健康をたもって、投手陣をひっぱっていってほしいです。

その他の話題を。

◎ガヤード、ハーディがDL。

ガヤードは4/22日のロイヤルズ戦で、2回4失点でマウンドをおりたあと、肩の炎症でDL入り。ただ、筋肉や靱帯への損傷はなくて、今週末にもキャッチボールを開始する予定だとのこと。今季、4試合でERA7.00と、クオリティー・オファーを受けた投手としてはさみしい出来なのですが、故障がいえたら復活できるでしょうか。してもらわないとこまるけど。

ハーディは、5/1日のホワイトソックス戦で、自打球をあてて、右足を亀裂骨折。4~6週間とも6~8週間ともいわれますが、まあ2か月はかかると思っておいたほうがよさそう。この2年ほど腰や肩の故障に悩まされるなか、今季は好調なスタートを切っていたので残念ですが、しっかり治してほしいです。

◎マチャド、主にショートへ。打撃は依然好調。

ハーディのDLにともなって、マチャドがショートに入り、ライアン・フラーティーがサードへ。ただ、3Aからはショートをまもれるポール・ヤニシュも呼ばれたので、左投手のとき右打ちのヤニシュがショートに入るという布陣も今のところ1度だけ試しています。

昨年、ハーディーが腰痛(だったかな)で開幕に出遅れたとき、やはりマチャドがショートに入りましたが、けっこう内野陣の連携ミスが多くて、やはり司令塔のハーディー(守備位置などを常に指示しているようです)がいないと不安定になってしまうのかなと思ったことがありました。でも今年は、今のところうまくこなせてます。内野守備に関しては不安ありません。

で、マチャド、バッティングは.350/.403/.691でOPSは1.094(リーグ1位)。すばらしい。HRも9本でリーグ2位、二塁打15本(リーグ1位)、打点22です。とにかく体調を維持しながら輝きつづけてほしいです。

◎マーク・トランボ、好調を維持。

マチャドと同様、打線を牽引しているのが、トランボ。FAじゃなくて、マリナーズのサラリーダンプによるトレード(⇔スティーブ・クレベンジャー)だったんですよね。こんなにうまくはまるとは思いませんでした。.325/.378/.598、HR9本、打点24(リーグ4位)。心配された外野守備もどうにかこなし、最後の守りはリカードかライモルドが入るという形が多いです。

◎心配なアダム・ジョーンズ

マチャド、トランボと対照的に元気がないのがアダム・ジョーンズ。現在.200/.269/.274、HR1本(!)という成績。DL入りせずにすませたものの、4月初旬に脇腹を痛めた影響がまだあるかもしれません。出ながら治したい人だし、守備の貢献度は大きいので、これからだんだんあげてきてほしい(切実)。オリオールズが、ヒットは打てているわりに今ひとつ点が入らないのは、ジョーンズの不調も大きいなあと。デイヴィスはもともと打率低いけどHRは出てるし、その前後のマチャド、トランボは好調なので、ジョーンズが上がってくれば鬼に金棒なんですけどね。

ジョーイ・リカード奮闘中

スプリングトレーニングで4割近く打ち、開幕1週間から10日ほど驚異の活躍を続けた、ルール5ルーキーのジョーイ・リカード。プレーもさることながら、このちょっと昔の青春映画スターのようなはにかんだ笑顔がたまりません(笑)。

Only thing more surprising than 1st HR for Joey Rickard was ensuing curtain call. #orioles https://t.co/twYRPRcnGD pic.twitter.com/9J1TQjkXJ8— Eduardo A. Encina (@EddieInTheYard) 2016年4月8日

(4月8日、初ホームランのあと、カーテンコールにこたえたシーン。)

その後さすがに研究され、疲れも出たのか、ノーヒットの日も増えて、ちょいちょいスタメンからはずれる日も出てきましたが、最近またマルチヒットが出るようになって.286/.328/.411。ヒットにならない打席でも、足の速さでゲッツーを防いで、得点の端緒になったりと、記録に出ないプレーも多いです。

守備は、見た目と足の速さから想像されるほどうまくはなくて、ダイブしてとりそこなうところを3、4回見てますが、おそらく経験をつめばもっとよくなるでしょう。きのうはこんなファインプレーも(画像はGif。音出ません。)

In addition to his home run, @JRickard35 made this spectacular play in left. Watch: https://t.co/6bnRNw8qzD pic.twitter.com/5qfdLfM8k7— Baltimore Orioles (@Orioles) 2016年5月8日

ふつうじゃんっていわないで~(笑)。これからどんどんうまくなりますから。

◎コンタクトヒッター、キム・ヒョンス

開幕前、3A行きを承知せずにひと悶着あったキムですが、いざ開幕してみると、右投手のときのスタメンや代打での起用など、かぎられたチャンスで23打数11安打というしっかりとした結果を残しています。四球も3つ。先日のヤンキース戦(ゴーズマンが先発して1-0でサヨナラ勝ちした日)には、サヨナラにつながる内野安打を打って、最後、チームメートと喜び合う姿がありました。見ていると、ほんとにバットに当てるのはうまいです。ただ二塁打が1本だけと、今のところ強い当たりが少ないのも事実。ホームランを打てとは言わないので、せめて外野を抜くような当たりが増えてくると、もう少し出場機会も増えるんじゃないかなあと思います。

◎ティルマン、好調。

前回のエントリでもリンクを張ったのですが、不調だった昨年にくらべると球速がアップしているというクリス・ティルマン。

あいかわらず立ちあがりが悪くて、はらはらするピッチングなのですが(笑)、昨年はそのまま崩れて立てなおせないことが多かったのに対して、今年はしっかりまとめることができています。現時点では4勝1敗、ERA 3.05。ティルマンが好調を維持できるかどうかが、今季のチーム成績に大きくかかわってくるような気がします。がんばってくれ~。

……とまあそんなわけで、たまにしか書かないのでどうしても長くなってしまうわけですが、じつはもうひとつファクターになりそうなのが、雨天順延の多さ。これまでじつに4試合が順延になって、そのうちダブルヘッダーで消化したのが1試合のみ。2試合は、休日をつぶして行われることがすでに決まり、残りの1試合はまだ日程が組まれていません。

先週、ザック・ブリトンが軽度の足首ねんざをして、サポーターをつけながら登板していることもあり、この時期の中止は恵みの雨ともいえるんですが、その分、あとからきつくなるんですよね~。

それやこれやいろいろ含めて、今季は、手応えのなかった昨シーズンとはちがうし、かといって開幕からつっぱしった14年ともちがう。今のところレッドソックスと追いつ追われつやってますが、下のほうにいるチームも、まだまだ巻き返してくるでしょう。なんとかがっつりと混戦に食らいついていってほしいと思っています。

Go, O’s!

【5/12追記】

なんと、「ジョーンズが心配」と書いたとたん、5/10~11日のツインズ戦で10打数6安打、HR2本、5打点の大当たり。このシリーズではしばし冷えていたクリス・デイヴィスにも当たりが戻ってきました。やっぱり中軸が打つと点が入るな~(当たり前)。どうかこの調子で。

オリオールズ&コウジ、無事に開幕

フリーランスワーカーのかなしさで、ずーっと書かないかと思うと、いきなりうるさいほどエントリをあげてますが、どうぞご容赦を(笑)。

メジャーリーグ2016が開幕し、オリオールズ上原浩治も幸先のよいスタートを切りました。

まずはオリオールズ

4/4 @カムデンヤーズ vsツインズ 3X - 2 ○ 勝:ブリトン

Running down the Orange Carpet, a cherished Orioles tradition. #OsOpener pic.twitter.com/c1RwxH7pf4— Baltimore Orioles (@Orioles) 2016年4月4日

オープニングセレモニー、動画もどうぞ。

9番スタメンで最後に紹介されたルーキーのリカードは、先輩たちから「ころばないようしっかり足をあげてオレンジカーペットを走れ」と百回ぐらいアドバイスされたようです。一歩一歩かみしめるように、楽しそうに走ってました。

4日は天気が悪く、ご近所のヤンキースは雨天中止。オリオールズはこのオープニングセレモニーのあと1時間40分ほど中断しましたが、その間たいして雨はふらず、ところが試合をはじめて2イニングで雨が強くなってまた2時間ほど中断。それでもどうにか最後までやりとげました。はじめの中断がなければ5イニングぐらい一気にできていたはずなんですが……。両先発とも2回で降りてしまったのがざんねん。でも、お天気が相手では、なかなかどんぴしゃの判断はむずかしいです。

すばらしかったのはクリス・ティルマン。打者6人と対戦してなんと三振5という立ちあがりでした。

ファストボールは力強く、制球も○。カーブもいいところに決まっていました。楽しみにしてもいいですか?

おなじみ、ファングラフのジェフ・サリヴァンがさっそく、ティルマンの平均球速が、不調だった2015年に比べると1.6マイルアップしているという記事を書いていました。→〈The Best News for the Orioles Out of Opening Day〉

ティルマンが中断までの2回で降りたあと、3回から5回までを投げたタイラー・ウィルソンも2安打無失点のナイスピッチング。大きな駒になりそうです。

マイカル・ギブンズは、6回は目の覚めるような投球でしたが、7回は長打2本で1点をゆるし、なおも二、三塁というところで降板。回またぎの仕方をおぼえなくてはなりません。

打つ方ではトロンボが5打数4安打とすばらしい出だし。ルーキーで9番にすわったジョーイ・リカードも初打席でメジャー初ヒットを放つと、つぎの打席では足を生かした二塁打。はやくも観客から「ジョーイ、ジョーイ!」というチャントが巻き起こるほどの人気をつかみました。このまま突っ走ってください。

そして最後はマット・ウィーターズのサヨナラ安打。これでツインズ戦の連敗を8で止めました。(そう、対ツインズ、昨年は一度も勝ってなかったんですよ!)

2014年は、開幕戦に勝ったあと4連敗してますから、喜びすぎるのもいかがなものか、なのですが、今年も「喜べるときに喜ぶ」というスタンスを貫いてまいります(笑)。

喜びついでにもうひとつ。お約束のこれ。

#OpeningDay was SWEET! #IBackTheBirds pic.twitter.com/LclySE20El— Orioles on MASN (@masnOrioles) 2016年4月5日

これを見た瞬間、ファンのだれもが「うそ!!」とびっくりしました。

というのも、今春キャンプインしたころ(ちょっと元記事が見つかりませんが)、「安全面に考慮してパイ投げは中止」というショウォルター監督のお触れが出ていたから。おそらくは、ガーンと顔面にたたきつけることでむち打ちになったりしないように、ということだと思うのですが、だれもが「わかるけど、パイ投げ担当のアダム・ジョーンズはさびしいじゃん……」とちょっと気になっていたのも事実。でも心配ご無用。パイはきっちり復活していました(^o^)

もっともジョーンズにいわせると、あれはパイじゃなくて「ケーキ」なんだそうw そういえば、なんかレイヤーになっていて、高そうです(笑)

そしてショウォルター監督は「チームを掌握できない」と記者団を笑わせていました。

今年もラブリーです(^-^)

さて、いっぽうの上原は、4/4の試合が「寒波のため」中止になり、4/5の開幕戦の8回に登板して、インディアンズを三者凡退にしとめました。6回までプライスが2失点。7回は田澤が投げてこちらも無失点。4-2とリードしての登板です。寒そうで、完全防備の選手もいるなか、半袖の上原。若さアピールしてまっせ。

4/4 vs @インディアンス 6-2 ○ 勝:プライス

1 キプニス 3球めスプリットでセンターフライ。

2 リンドア 3球めファストボールでレフトライナー。

3 ナポリ  6球め外いっぱいのファストボールで見逃し三振。

ナポリってインディアンズにいるんですね。知らんかった。長らくチームメートで、そのパワーをよく知っている相手なので、慎重に変化球で攻め、最後は外いっぱいのストレート。ナポリはボールと思ったようで審判をにらんでいましたが、ストライクのコールでした。

昨年の開幕時は、制球に苦労していた印象がありましたが、今年は立ちあがりから制球がよさそう。ただ、寒いこともあってか、球速は去年よりさらに落ちてMAX86マイル。ナポリを三振にとったファストボールは85マイルでした。そしてナポリへの初球、2球めは、81マイルの見慣れない球。Game Dayではスライダーという表示になっていましたが、縦にドロンと曲がる球ふたつで1-1のカウントを作っていました。ときおりそういう見慣れない球も織り交ぜながら、暖かくなるにつれ、もう1マイルぐらい球速があがってくるといいなと思います。

このあとキンズラーが9回をぴしゃりとしめましたが、7回タズ、8回コウジ、9回キンちゃんの球速差はえぐい! 全員右投手だけど、右、左とスイッチする以上に目先が変わります。いやですね。

そんなわけで、今年はキンちゃんに何かがないかぎりは8回担当になりますが、そのおかげでまたベンチでのハイタッチが復活。今日はその映像はありませんでしたが、今季限りで引退する同い年の、そして今日1号HRを放ったパピとのハグが見られました。

Isn't this a sight for sore eyes, Koji & Papi hugs for everyone! #redsox #kojiuehara #davidortiz https://t.co/cxbkfopU0i— The Morning Hangover (@TheMorningHang) 2016年4月5日

今年もこういうシーンがたくさん見られるといいな。Go, Koji!

オリオールズ2016年開幕ロースター

はー、やっとここまでたどり着きました(笑)。今日、開幕を迎えたチームもありますが、オリオールズは明日、4月4日開幕。

現地3日の夜12時をもってようやくロスターが確定したので、それを記しておきましょう。

まずはこちらを。

With #OpeningDay rosters set, here are all the Top 30 prospects starting the year in #MLB: https://t.co/76JoQ0dw9R pic.twitter.com/OdZisEgKya— MLB Pipeline (@MLBPipeline) 2016年4月3日

毎年、マイナーが枯渇した最弱のフランチャイズと言われつづけているわりに、今年はチームトップ30プロスペクトの中から5人が開幕25人ロースターに入りました。これはドジャースと並んでメジャー最多。もちろんそのなかには、ルール5でレイズから獲得したリカードも入っています(ほかはライト、ウィルソン、ギブンズ、バンディ)。

オリオールズの場合、いわゆるトップ中のトッププロスペクトは少ないんだけど、ケイレブ・ジョセフのように、年齢がいってからしぶく花開く人もいるし、いわゆる「格付け」からもれた人材をうまいこと使っているといえるかもしれません。スプリング・トレーニングでは、マイナー10年めで26歳のガラベス・ロサ(SS/OF/2B)が打ちまくって、ショウォルター監督から熱い注目を浴びていましたし、世間的には”out of nowhere”としかいいようがないところから、メジャーで活躍する選手が出てくるということもあるんじゃないかなと期待しています。

ではロースターの紹介を。

☆野手 13名☆

【キャッチャー】2名

ケイレブ・ジョセフ(右)

マット・ウィーターズ(両)

ウィーターズは、オープン戦でHRもあり、また、守備シフトに対して再三バントヒットを決めるなど、小器用なところも見せています(笑)。ただ、最後の試合もヒジ痛で退くなど、一昨年TJを受けたヒジの状態がまだ完璧ではなさそう。今年もジョセフのサポートが大きくものをいいそうです。

内野手】5名

一 クリス・デイヴィス(左)

二 ジョナサン・スコープ(右)

遊 JJハーディー(右)

三 マニー・マチャド(右)

U ライアン・フラハティー(左)

DH/ ペドロ・アルバレス(左)

デイヴィスは、打撃はこれからかな。少しずつあったまってます。マチャドは、打撃、守備ともに準備万端の印象。

ショートのJJハーディは、昨年、肩の痛みがスイングに影響して、がくっと成績を落としました(打率.219、OPS.564)が、ケガがいえて、今年はオープン戦から.265と元気。

セカンドのジョナサン・スコープは、今春.349/.379/.571、4本塁打12打点と好調で、守備でもハーディと組んで難しいダブルプレーをよく決めていました。ブレイクアウト待機です。

ペドロ・アルバレスは、今のところ、一発もあるけど三振も多く、開幕してからのお楽しみといったところ。ただチームにはすんなりとけこめたと、インタビューなどではくりかえし語っています。

そしてスーパー・ユーティリティーのライアン・フラーティーは、オープン戦で.333と好調を維持。2011年12月のルール5ドラフトでカブスから獲得され、今年でメジャー5年め。外野もふくめ、あらゆるポジションを高いレベルで守れる、地味だけど頼りになるやつです。

【外野手】5名

ジョーイ・リカード(右)

マーク・トロンボ(右)

アダム・ジョーンズ(右)

ノーラン・ライモルド(右)

キム・ヒョンス(左)

前エントリで記したとおり、キム・ヒョンスがロスターに入り、オープン戦で.313、HR4本と好調だった招待選手のザビエル・エイヴァリーは、ロスター入りがかないませんでした。エイヴァリーはもともと2008年の2巡めでオリオールズにドラフトされた選手。2012年にちょっとだけメジャーにあがりましたが、その後いろいろなチームのマイナーを渡り歩いて、今年マイナー契約で帰ってきました。以前に比べるとパワーをつけたなという印象。そのうち昇格のチャンスがあるかもしれません。

ライモルドも、毎年のようにマイナー契約からはいあがってきます。今年はキャンプ前半打撃不振だったのですが、最後の5試合で打ちまくって開幕メジャーをつかみました。様子のわかっている選手だから、ある意味チームも安心なんでしょう。

ジョーンズは、ほどほどに温まった状態で開幕。トロンボは.290と春じゅう好調でした。開幕してからもお願いします。

そして、なによりも一番のびっくりは、レイズから昨年12月のルール5ドラフトで獲得したジョーイ・リカードの大活躍でしょう。こちらが、2015年12月にルール5ドラフトで指名された選手たち。リカードは8番めだったんですよね。オリオールズのドミニカ地区のスカウト(なのかな?)をつとめるフェリペ・アルーJr.が、リカードウィンターリーグでのプレーを見て、強くすすめたのだそう。オープン戦では .397/.472/.571(うち二塁打6)と打ちまくっただけでなく、四球8、盗塁5と、オリオールズに欠けている選球眼や走塁の資質を見せつけ、スプリングトレーニングの話題をかっさらいました。同時に、彼の活躍によって、キム・ヒョンスのポジションがなくなったという面もあります。さすがにシーズンが開幕して4割の打率を維持するのは無理でしょうが、臆することなく持てる力を発揮して、外野の一角を完全にうばってほしいです。ジョナサン・スコープと同じ91年生まれで、今年25歳になるという若さ。わくわくする選手です。

そだそだ。リカードは、4/1日の試合のあと監督室に呼ばれたのですが、行ってみると部屋はまっ暗。それから電気がついてみたら、そこに全コーチ陣が集まっていて、開幕メジャーを告げられたそうです。粋なはからい……というよりは、コーチたちがみんな、リカードの喜ぶ顔を見たかったんでしょうね(笑)。今朝(現地3日)も、ショウォルターさんからこんなコメントが。

Buck on Rickard: "I’ve seen his face twice down the hall and it’s fun to look at. I’m living through him. That’s pretty cool. Fun to watch."— Roch Kubatko (@masnRoch) 2016年4月3日

リカードについて:廊下であいつの顔を二度見たよ。たのしいね。あいつの人生を共に味わっているようだ。なかなかすごいことだし、見ていてこちらまで愉快になる」

☆投手 12名☆

【先発】4名

クリス・ティルマン(右)

ヨバニ・ガヤード(右)

ウバルド・ヒメネス(右)

マイク・ライト(右)

休みの都合上、5人めの先発が必要になるのは4月10日から。ブルペンのヴァンス・ウォーリーかタイラー・ウィルソンのどちらかが行くと思われます。DLスタートのケヴィン・ゴーズマンは、4月19日からのトロント戦あたりで復帰予定。

オリオールズは、周知のとおり先発陣が最大の弱点とされています。チェンがいなくなって、左腕先発もいませんし(……エドゥアルド・ロドリゲス……ぐちぐち。まあ、彼もボストンでDLスタートですが。)

でも、ガヤードはそこそこやってくれそうだし、マイク・ライトも球はいいので、あとは打たれ始めたら止まらなくなるクセをなんとかしてくれれば……オープン戦を見ていると少し粘りが出てきたかなという印象。

ESPNのキース・ローなんかは「アリーグ東で、1チームだけはっきりと優勝争いにからまないのはボルティモア・オリオールズ」なんていいやがりましたが、わたしが見はじめた2009年と比較しても先発陣はそこそこマシなんですよ(笑)。だからそんなに悲観することもないんじゃないかと思ってます。

あともうひとつ。昨年 ERA 4.91 と不調で、今季に復活を期していたミゲル・ゴンザレスが、4月1日にリリースされました。オープン戦での ERAも9.78。最後の登板では5回1失点でしたが、毎回のようにランナーを出し、見ていて、これならタイラー・ウィルソンのほうが上、と思ったのも事実。でもエンゼルスのマイナーからメキシカンリーグを経て2012年にオリオールズでメジャーデビューした苦労人ですし、メジャー通算39勝33敗、ERA3.82はりっぱなもの。リリースのニュースを聞いたときには、ちょっとショックでした。オリオールズマイナー契約をオファーしたようですが、ゴンザレスはホワイトソックスとのマイナー契約を選んだとのこと。まだ31歳と若いですし、もうひと花咲かせてほしいです。

【リリーフ】8名

タイラー・ウィルソン(右)

ヴァンス・ウォーリー(右)

TJマクファーランド(左)

ディラン・バンディ(右)

ブラッド・ブラック(右)

マイカル・ギブンズ(右)

ダレン・オデイ(右)

ザック・ブリトン(左)

ブルペン陣で特筆すべきはディラン・バンディ。1昨年TJ手術を受け、昨年は脇腹痛や脚の肉離れなどに悩まされて、ほとんど投げていなかったのですが、今春はすばらしかった。何度か映像を見ましたが、150台中盤の速球と大きなカーブがあり、もう少し変化球で空振りをとれるようになったら、すごいことになりそう。ただ、ブルペンで厳しい場面でばかり登板していると、変化球を伸ばす機会が減ってしまうんじゃないかなと少し心配でもあります。とはいえ、とにかく今年は、健康体で投げ続けるのが一番の課題。結果はあとからついてくるでしょう。もうみんな早くバンディに先発してほしくて仕方がないので(笑)、イニング数をうまく制限しながらやれば、シーズン最終盤に何度かそんな機会も訪れるかもしれません。

タイラー・ウィルソンは、球はさほど速くないのですが、制球がよく、粘りがあって、今年は先発にリリーフにといろいろな役割でフル回転しそうな予感。オプションもあるので、ちょいちょい3Aに送り返されるでしょうが、がんばってください。

クローザーのブリトンは、オープン戦でも盤石。オデイは、ちょいちょいランナーを出していましたが、まあ大丈夫でしょう。ギブンズもおおむね好調と見ました。なので7-8-9回は、いい布陣です。前回のエントリでも書いたように、先発が5回、6回までなんとか試合を作れば戦えると見ています。

☆【DL】3名☆

ブライアン・マタス

ケヴィン・ゴーズマン

ジミー・パレデス

マタスは、腰痛と風邪で実戦不足。ゴーズマンは右肩痛でどきっとしましたが、腱の炎症ということでコルチゾンの消炎剤を注射したらだいぶよくなったとのこと。もうキャッチボールを始めていて、4月19日、トロント戦あたりからの実戦復帰をめざします。パレデスはキャンプが始まったころに手首の骨折が判明。こちらは時間がかかりそうですし、チーム状況によっては、復帰即DFAもあり得るかもしれません。

はー、ついつい長くなってしまいましたが、こうして2016年も始まります。

まあ、理想的なチーム編成とはいかないかもしれないけど、見ていておもしろい試合はしてくれるんじゃないかなと。今年もたのしく応援しますよ。

Go, O’s!!

O's:後半戦持ち直し12勝15敗&キムのこと

オリオールズ、前回のエントリのあと3月10日にNYYとひきわけ、翌11日に負けてオープン戦開幕連敗を10まで伸ばしました。しかし12日のフィリーズ戦で初勝利をあげると、後半はぐんぐん持ち直して結局12勝15敗5分け。オープン戦の勝敗はあまり関係ないといいつつも、そこそこ形になってよかったです(笑)。

連敗中と1勝後の成績をかんたんに見てみましょう。

3/1-3/11 0勝10敗2分け 得点39 失点87

3/12-4/1 12勝5敗3分け 得点132 失点105

得点がぐんとアップしたことがわかります。試合数がちがうので1試合あたりに直すと

3/1-3/11 3.25 得点/試合 7.25失点/試合

3/12-4/1 6.6 得点/試合 5.25失点/試合

得点が倍に増え、失点は2点減りました。よくも悪くも、これが2016年オリオールズの形になるんじゃないのかなという予感がします。先発投手が5回ぐらいまでどうにかこうにか投げ、先取点をとられてもあまりくじけずにリリーバーにつなぐうちに、打線が長打でごつんごつんと点をとり、リリーバーが抑えていくという形。それでうまくいけば勝つし、先発陣が崩れすぎれば無理、ということですね。あんまりきれいな勝ち方はできないかもしれないけれど、あきらめない心があればなんとかなるかもしれん、と。(笑)どんなシーズン予想だ。

ちなみにスプリングトレーニングは、各チーム試合数がちがうし引き分けがあるのでなんともいえないのですが、勝率だけで見ると、オリオールズは、マーリンズドジャースレッドソックス、アスレチックス、ロイヤルズ、メッツ、ジャイアンツ、カブスパドレス、パイレーツ、ブレーブスの11球団より上に来ました! さてレギュラーシーズンで、これらのチームはどんな戦いを見せるのでしょうか。勝ち星がふた桁に届かなかったメッツ(8勝17敗)、パイレーツ(8勝21敗)、ブレーブス(6勝20敗)は大丈夫か? WS優勝候補最右翼と目されるカブス(11勝18敗)はどんな戦いを見せるのか。興味津々です。

さて、前回のエントリでは、ガヤードとの契約をフィジカルのせいで変更したり、デクスター・ファウラーを取り逃したりといろいろドタバタだったキャンプ前半のようすをお伝えしましたが、後半はそれに輪をかけてぐちゃぐちゃでした(-_-;; キム・ヒョンスとの関係がこじれてしまったのです。

オープン戦7試合、21打数ノーヒットのあと、23打数ノーヒットまで記録をのばし、24打席めでようやく内野安打を打ったキム。その後ぽちぽちとヒットが出て.178でスプリングトレーニングを終えました。しかし長打はなし。本人も、初めて対戦する投手ばかりだから、とコメントしていたように、アジャストするには少し時間がかかりそうだなという状態でした。

しかしそれ以上に問題なのは、おそらくディフェンス。スプリングトレーニング中にキムのプレーを数回にわたって視察した他球団のスカウトが、その守備についてつぎのようにのべたというのです(ソース:ボルチモア・サン)。

「一歩目が遅いし、判断が悪いから打球の下に入るとき遠回りする。肩も弱いし、足もさほど速くない。あまり動きが機敏ではないね。よほど打たないと、ものにならないだろう」

……うううっ。

思い出すのは(古傷をほじくり返すようですが)中島裕之。彼の場合はキャンプ中に肉離れをして、そのまま3Aに居残ったものの、打てない上にやはり守備の評価が低くて2Aにまで落ち、結局その年の8月にDFAされて40人ロスターからはずされています。契約もキムが2年7MIL、中島が2年6.5MILと、だいたい同じレベル。しかしひとつ大きな違いがあります。それは、キムの契約には「同意なくしてマイナーに落とさない」という条項が入っていること。それが今回もめることになった最大の原因といっていいでしょう。

じつはわたし、これ、海外(とくにアジア)のリーグから渡米した選手にはふつうについているものだと思っていました。というのも、上原のオリオールズ時代の契約にもついていたし、2014年にやはり韓国から入団してメジャー昇格を果たさないままとちゅうで契約を解除して、韓国にもどったユン・ソクミンの契約にもついていたと記憶しているからです。ユンの場合は、ビザの発給が遅れてオープン戦で投げる機会がほとんどなく、自然な流れで3A行きを承諾。しかし3AでもERA 5.74とまったく結果を残せず、けっきょく上に呼ばれる機会がないまま、2015年にキア・タイガースから4年8.2MILドルの契約をもらって帰国したのでした。

ところがベースボール・プロスペクタスのこのサイトで、30球団の選手たちの契約を“consent”(同意)をキーワードにして検索してみたら、「本人の同意なくしてマイナーに降格しない」という条項が入っていたのは、現役選手のなかではキムと、オリオールズ時代の上原の契約だけだったんですよね。まあこのサイトがすべてを網羅しているのかどうか知りませんので、確かなことはいえないのですが、わたしが思っていたほど一般的な条項ではないのだなと。でも上原の契約に入っていたということは、デュケットさん発ではなく(上原を獲得したのは、アンディ・マクフェイル)、オリオールズという球団の伝統??? 今オフ流行の「オプトアウト」は、頑としてはねつけたデュケットさん(というか、オリオールズ)なのに、こんな条項を盛り込んでいるのはなぜなんでしょう(^_^;;

さらに、デュケットさんには、もうひとつ言いたいことがあります。たしかにユンは、その場の流れもあって降格をすんなりのんでくれましたが、キムにも同じ手が通じるものとかんたんに考えてはいけません。そもそも騒ぎが大きくなったのは3月27日にケン・ローゼンタールによる「オリオールズがキムを韓国に送還?」という記事が出てから。これもよく読むと、「こういう手もあるし、こういう手もある」と言っているだけなのですが、世間的には「オリオールズがメディアにリークしてキムに圧力をかけている」と受け取られてしまうわけですよ。(本当のところはどうなのか知りません。)

ボストンのGM時代から韓国の選手を獲得して、韓国にはくわしい、という触れ込みではありましたが、2012年のキム・ソンミン問題のときも手順をまちがえて相手を怒らせた。そして今回も、本人との話をしっかりつめる前に、意図的かどうかはともかくとして、メディアにリークしてしまった。日本人もそうですが、アジアの選手は、手続きとか体面とかを重んじる傾向が強いのだから、もっと国民性を学ばないと! 

あと、キム・ヒョンスに関していえば、今年、イ・デホ、パク・ピョンホのふたりが好調で開幕メジャーをつかんだというのも3A行きを固く拒否する要因になっているんじゃないかと、わたしは想像しています。自分の国から3人渡米して、自分だけマイナーで開幕なんて、絶対にいやじゃないですか? わたしだったらいやです(笑)。しかも契約上、メジャーに残れる権利があるのだったら、なんとしてもそれを前面に押し出すことでしょう。

ただ、オリオールズの立場も記しておくと、上ではコンスタントに打席を与えられないので、下で経験をつんでほしい、というのが純粋な本音でしょう。それで、もしキムがいい成績をあげれば、上でチャンスを与えるのにやぶさかではないはず。というのも、ショウォルター監督が就任してから、オリオールズは3Aの監督がひーひー言うほど、選手を激しく入れ替えて戦っているのですから。キムのエージェントのLeeco Sports Agencyというのは、韓国ベースなんですよね。いったいオリオールズというチームの特性をどこまで理解しているのか。

どうも今回の件は、双方が相手の文化を理解していないために起こったディスコミュニケーションという面が、とても大きいんじゃないかという気がしてなりません。

おそらくキムは、開幕をメジャーで迎えるでしょう。しばらくは代打中心で、そのうちぽつり、ぽつりと右投手のときにスタメンがあるかもしれません。そういう待遇に文句をいわず、手にしたチャンスを必死につかみとってほしい。そうすることでしか自分を証明することはできないのだし、そうやってチャンスをつかみとってビッグになった人はいくらでもいるんですから。

O's: オープン戦10戦、0勝9敗1分け(^^;;

オープン戦の成績って、シーズンにどれくらい反映されるものなのでしょう。

オープン戦だけ見てたら優勝! という勢いだったのが、開幕したらさっぱりというのはよく見るし、打ちまくっていた人がさっぱりというのもよく見かけます。オリオールズでも2011年のスプリングトレーニングに、捕手のジェイク・フォックスが10本塁打と打ちまくって開幕メジャーを勝ち取ったものの、シーズンに入ったらぱったり止まって(27試合でHR2本、.246)シーズン途中でDFAなんてこともありましたっけ。

あ、今ブログを振り返ったたら2013年のSTは3月25日の段階で17勝7敗だったのか。この年はシーズンでは85勝77敗で、あまりぱっとしなかったんですよね。逆に優勝した2014年は「負けがこんでいる」と書いている。レイズが13勝4敗とも(そしてこの年のレイズは77勝85敗)。

な~んだ、やっぱりオープン戦の成績って関係ないんだな。あはは、あはははは(こわれた)。

だってね、いくら関係ないといっても、3月1日にオープン戦が始まってから1勝もしてないって、あーた。そりゃあ気分がいいわけがないでしょう。かんたんにスコアだけ記しておきましょうか。

(@がついているのは、アウエー)

3/1 @ブレーブス 4-4

3/2  ブレーブス 4-11

3/3 @レイズ   3-10

3/4 @ジェイズ  3-4

3/5 @ツインズ  2-13

    レイズ   6-10

3/6 @レッドソックス 7ー8

3/7  ツインズ  0-3

3/8  レッドソックス 1-5

3/9  フィリーズ 4-8

ほとんどがデーゲームなので、まだリアルタイムで映像を見た試合はないのですが、なんというか朝起きてスコアをチェックして白目をむく毎日です(笑)。

勝敗はともかくとして、まず単純に見ても得点26、失点76ってのはあかんでしょう。まあ、主戦級の投手たちは、ヒメネスにしてもミゲル・ゴンザレスにしても、初戦に悪かったところを2戦めでは修正してきているので、「まだ春だから」という言い方もできるのですが、先発陣が一番の弱点とされているところにこれですから、どうしても、うん……そうだね、知ってた……という気持ちになります。

そして、もともと三振が多いところにもってきて、トランボ、アルバレスとさらに三振を補強した(違)打線。今んとこつながってません。もっとも、アダム・ジョーンズが.167、クリス・デイヴィスが.111で、ここらへんがあったまってこないと、なかなか点が入らないわけなのですが。(でもまあ、彼らは開幕に合わせてくれればいいです。)ポジる材料としては、昨年ケガで前半出られなかったジョナサン・スコープが好調(.357 三振1というのがいいですね)なのが目をひきます。昨年後半、パワーが開花しつつあって、アプローチもずいぶんよくなってきたように見えていたので、今年は楽しみ。

1月中旬にデイヴィスの記事を書いたあとのおもなトランザクションも、ざっとおさらいしておきます。

2/4 ヒデキ・オカジマとマイナー契約。そうだ、これがあったじゃないか!

Hideki Okajima, 40, is newest member of #Orioles org after signing minor league deal. Read: https://t.co/Hc292WQgHl pic.twitter.com/0tVkmKlD0b— Tim Dierkes (@mlbtrorioles) 2016, 2月 4

スプリングトレーニングへの招待はないので、残念ながらこの記事のあとの動向はわかりませんが、一度ぐらい上で見られるといいなあ。上原の同級生オカジ、がんばってほしいです。

【4/4追記:3月末にリリースされてしまいました(報知)。メジャーキャンプから招待選手が続々とカットされてマイナーに配属になる時期なので、マイナーのロースターもいっぱいになってしまうのでしょうね。きびしいものです。】

2/4 パドレスからトレードでオドリサマル・デスパイネを獲得。交換相手はマイナーの投手ジーン・コズメ。 

2/21 ヨバニ・ガヤードと3年契約で合意の報道。そのあと得意のメディカルチェックでもめる。

2/24 外野手、デクスター・ファウラーと3年契約で合意の報道。

2/25 ガヤードと2年契約+オプションであらためて合意。20MIL+バイアウト2MILまでがギャランティー。3年めがあれば13MILという契約。

#Orioles' reworked deal w/ Yovani Gallardo is "done," per @masnRoch. Breakdown of new deal: https://t.co/OuloUPLqBu pic.twitter.com/b0Sw63UUw0— Tim Dierkes (@mlbtrorioles) 2016, 2月 25

これによってオリオールズはドラフト1巡め(全体14番め)の指名権を失うことになります(ただしチェンがマーリンズと契約したので、最初の指名は全体28番めだか27番めだか)。それを考えるとメディカルで慎重になったのも当然だと思うし、じっさい、過去にメディカルでもめて契約がぽしゃった例を見ても、単に難癖をつけているだけではないと思われます。でもケン・ローゼンタールは、ガヤードがクオリティ・オファーを受けていてほかに行き先がなかったから、オリオールズがそこにつけこんで買い叩いたという論調の記事を書いていました。(彼はかつてボルティモア・サンに勤めていて、オリオールズの内情にもくわしいせいか、ときどき妙に批判的になることがあります。)感心したのは、当のガヤードが、うらみがましいことを一切いわなかったこと。それが損なのか得なのかはわかりませんが、オープン戦が始まってからの彼に対する監督の評価などを見ても、偉ぶらない自然体の人であるようです。

2/26 オリオールズと契約するといわれたデクスター・ファウラー、急転直下、古巣カブスと1年契約。

こういう展開ってたまにあるものですが、謎なのは、エージェントのケイシー・クロース(マー君代理人でもありますね)が、オリオールズとメディアの先走った報道に対して「この仕事を25年間やってきたが、こんなに無責任な報道は初めて」と激しく非難したこと。ほんとうに? というのも、この前日に、ファウラーの友人であるアダム・ジョーンズが、ファウラー本人との会話をいくつかのメディアに話していたのです。”I spoke with him. He’s excited. He should be on his way here now.”(あいつと話したよ。喜んでいた。そろそろこっちに向かっているんじゃないかな。)

だから、完全な合意はなかったとしても、かなり近いところまではいったと想像されるわけで、ケイシー・クロースのオーバーリアクションには、15MIL以上のQOを蹴らせて結局半額で古巣に戻るという失敗から目をそらしたいということもあったったんじゃないかと邪推してしまいます。

そしてこの日は、どたばたの中でガヤードさんの入団発表記者会見が行われたりしていたのですが、そこにチームの主力選手の大半がかけつけて、ガヤードを喜ばせていました。たいせつなことですね。

3/10 ペドロ・アルバレスと1年5.75MILで契約。

#Orioles have announced one-year deal with slugger Pedro Alvarez. Get more details: https://t.co/niWgjxD3TB pic.twitter.com/GrPrxiMCsp— Tim Dierkes (@mlbtrorioles) 2016, 3月 10

内野は埋まっているので、主にDHということになるのでしょう。基本的には、左打者がほしかったというのが獲得の動機のようです。しかしデュケットさんも、毎年「出塁率」と呪文のように唱えながら、どんどん逆の方向へ行くな~(笑)。

あ、あともうひとつ。韓国からメジャー移籍したキム・ヒョンスがオープン戦7試合、21打席でいまだにノーヒットです。同じコリアンのパク・ピョンホがグランドスラムを打ったり、イ・デホマイナー契約だけど)もHRを打ったりしてアピールしているので、ちょっとあせってるんじゃないかなあ。ただ21打席中三振は3つだけで、出塁率の男という前評判はあながちはずれてもいなさそうなので、どうかもう少し気長に見てやってくださいという感じ。あの松井だって、5月ぐらいまで「ゴロキング」なんていわれていたのですからね。

さて、オリオールズは、ちょうど今からペドロ・アルバレスの入団会見です(現地10日正午、日本時間11日午前2時)。

マイナーリーグの試合も行われていて、ティルマンが2回無失点、ゴーズマンが3回無失点。勝ちそうな雰囲気もありますが、この試合はカウントされていないようなので、まだ連敗は継続中です(^^;; きょうのヤンキース戦がどうかな。

And here we go #orioles pic.twitter.com/NkoGTinN7r— Roch Kubatko (@masnRoch) 2016, 3月 10

というわけで、3月中旬のざっくりとした状況をお届けしました。このあと3月末の締め切り(わたしの)までまたしばらく書きに来られませんが、できれば開幕ロースターが決まるころにはまたエントリをあげられるといいなあ。いったいペイロールはいくらになるんだ? こんなにどかどかお金使っちゃって、払えるのか? これでマニー・マチャドをエクステンションしなかったりしたら、怒りますよ? それだけはちゃんとやってくださいね。なむなむ。

【追記】〈ボルティモア・サン〉にもちょうど今日、「オープン戦の成績とシーズンの成績は関係があるのか?」という記事が出ていました〈こちら〉。結論としては「ない」なのですが、記事のしめくくりがふるってます。「ただしこわいのは、オープン戦最悪の成績(9勝19敗)だった1988年が例の開幕21連敗の年で、54勝107敗という球団史上最悪の成績で終わったということだ。これはたぶん偶然ではない」。えーっ?(^^;;(^^;; やめてよもーーー。あ~あ、オープン戦の連敗記録っていくつなんだろう(苦笑)。(2009年のアストロズが、オープン戦開幕から19試合、0勝16敗3分けだったそうな。ちなみにこの年のアストロズは74勝88敗。くわばらくわばら。)

【追記2】きょうのアルバレスの会見にもガヤード、ティルマン、ゴーズマン、フラーティー(彼は大学時代、アルバレスとルームメートだったそう)、ゴンザレス、ブラッド・ブラック、スコープ、ハーディー、マチャド、デイヴィス、マタスが参加していたそう。こういうのは、ほんと、いいと思います。(アルバレスは初め、旧友フラーティーが会見室に入ってきたのを見て、冷やかしかと思ったけど、ほかのチームメートもぞろぞろやってきたので、感激したそう。アルバレスさん、なんかいい人っぽい。)

【追記3】3/10日のヤンキース戦で、キム・ヒョンスさん無安打を23打席まで伸ばしたあと、24打席めにタイムリーヒットを打ちました\(^o^)/ さすがにほっとしていたようですが、本人以上にまわりが盛り上がったようです。ショウォルター監督も、パドレスの人から昨年のカン・ジョンホがやはり当初苦労していたことを聞いたりしたようで、ゆっくり見るつもりと語っていました。今日はアダム・ジョーンズにもHR。ちなみに試合は4-4の引き分けでした。無勝記録継続中です。(>_<)

クリス・デイヴィスと再契約

おたがい、ほかに選択肢はないでしょう、とだれもが思っていたのになかなか進展しなかったクリス・デイヴィスとの交渉がついにまとまり、オリオールズはとうとう清水の舞台から飛び降りてしまいました(笑)。

.@Orioles, @CrushD19 reportedly agree to 7-year, $161 million deal. Club has not confirmed. https://t.co/sX0XgL7D8L pic.twitter.com/mKxCCQFPxN— MLB (@MLB) 2016, 1月 16

第一報は、最近CBSをやめて独立したジョン・ヘイマンの、16日(現地)のツイート。

Breaking: Chris Davis is heading back to the Orioles. sides are in agreement.— Jon Heyman (@JonHeyman) 2016, 1月 16

その契約内容は7年161mil。単純計算すると、1年あたり23milで、これはもちろんオリオールズ史上最高額。

ただ、じつはかなりおもしろい契約なので、単純計算はあてはまりません。これについては、あとでくわしく書きます。

そもそも、11月のウィンターミーティング中にオリオールズがデイヴィス/ボラスに出したオファーは7年150milでした。そして、このウィンターミーティングでは、おどろくほどデイヴィスの名前があがらなかった、と、各社の記者が報じていました。

お金のあるチームはファーストが埋まっていて、ファーストを探しているチームはお金がない。そのため暮れごろからは、ボラスが「外野も守れる」と各チームにアピールを始め、オリオールズは、ほかにオファーしているチームがないのに延々と答えを引き延ばすボラスに対して、しだいにいらだちをつのらせていきます。

それが顕在化したのが、ここ数日の動向。オリオールズが、やはりまだ行き先の決まっていないセスペデスに5年90milのオファーをしたのです。これに乗じて、ボルチモアの〈ジミーズ〉というシーフードレストランが、「オリオールズに来てくれたら、クラブケーキとカニを生涯無料にするよ」なんていう太っ腹なおさそいをしたり(下のツイートではクラブケーキにしか触れていませんが、カニの分も別ツイートでありました(笑))。

Believe the hype, @ynscspds. New York's pizza has NOTHING on our crabcakes. Free for life if you sign with @Orioles! pic.twitter.com/GFH7nymwpm— Jimmy's Seafood (@JimmysSeafood) 2016, 1月 15

これで、デイヴィスもあせったんでしょうかね。

「いや、おれもカニ好きだし」みたいな?(違)

そのせいかどうかは知りませんが、このあと急転直下、デイヴィスとの再契約が決まったのでした。

しかもその金額が、当初の150milを上回る161mil。ほかに正式なオファーを出しているチームがなかったのに上積みを引き出すなんて、ボラスのボロ勝ちじゃん!……と、だれもが思ったわけですが、契約内容をよく見ると、それなりにオリオールズ側の意向もくんだ形になっています。

まず、昨今はやりのオプトアウトはなし。オリオールズは早い段階で、オプトアウトへの反対を表明していました。(基本的に成績がよかったらさっさとFAになってもっといい契約を求め、成績が悪化したらそのまま居座るという仕組みですので、球団のうまみは少ないような気がします。なんでこんなにはやってるの?)

つぎにノートレード条項は、全球団に対するものではなく、限定的なもの。

そして、何よりもすごいのは、161milのうちの42milが、「後払い」だということ。契約期間の2022年までは、年17milずつ(ちなみに、アダム・ジョーンズが、今年と来年16.3milで、再来年は17.3mil)。そして2023~32年が年3.5mil、33~37年が1.4milずつ。後払いの分には利子がつかないので、インフレを加味すると、ひとことで「161mil」というよりは、オリオールズの負担が若干軽くなります。こんな形をとってでもボラスが「総額161mil」という数字にこだわるのは、人がかんたんに話題にするのは、あくまでも総額だから、というのがFangraphsの分析(昨年のシャーザも基本的に同じ形です)。そうやってクライアントと自分の価値を高めるわけですな。

それにしても、2037年に払い終わるときには、デイヴィス51歳だそうで、年金というか、終身雇用というか、アンジェロスオーナー、そんなにデイヴィス好きだったんだ……ってちょっとびっくりしました。

さて、この契約はかしこい投資になるのでしょうか。それを判断する最も大きなポイントは、これからの彼のパフォーマンスですが、懸念材料としてよく指摘されるのが、三振の多さと、成績の浮き沈みの激しさ。それにくわえてこちらのジェフ・サリバンの記事では、ボールをひっぱる率が年々上昇しているという指摘がなされていました。

たしかに2013年に大爆発したときは、あらゆる方向へHRを飛ばしていたのですが、2014年は、引っ張った打球がことごとくシフトにはまって凡打になり、そこから調子をくずしていった感があります。昨年も出だしはひっぱってシフトにはまる、というパターンが多かったのですが、逆方向への打球が出るようになってから調子が上向いていきました。

来年以降も、反対方向へのいい当たりがどれだけ出るかというのは、デイヴィスにとって、ひとつのバロメーターになるかもしれません。

そして、この契約を生かすもうひとつの要因。それは投手陣の整備です。

2015年は、デイヴィスがHR王をとったのに81勝81敗の5割がやっと。その最大の原因は、先発投手陣の不振でした。

このオフ、ウィーターズ、オデイ、デイヴィスとコアメンバー3人が再契約し、さらにトランボ、キム・ヒョンスと契約して、攻撃陣とリリーフ陣はそれなりに整備されたと思うのですが、先発陣は、チェン・ウェインが、マーリンズと5年80milの契約を結んで去ってしまったため、去年よりさらに手薄になっています。

昨年投げていないディラン・バンディやハンター・ハーヴェイに期待するのは、いくらなんでも無理があるので(いや、もちろん期待はするのですが、そこにすべてをかけるのではなく、「若手が出てきたらめっけもの」というぐらいにはしておきたい)最低でもひとりは外部からとりたいところ。残っている投手たちのなかで、ガヤードは、QOを受けているのでドラフト指名権を失うし、フィスターは2年20milを求めていると言われ、希望の価格帯におさまらない。

かといって、これだけ投資したのに、投手陣が手つかずではすべてがむだになってしまう……。

う~ん……。でもまあ、あまり深刻に考えてもおもしろくないので、だれかひとりぐらい来てくれるといいな、と期待しながら待つことにしましょう。

でも、ほんとうののぞみは、ディラン・バンディとハンター・ハーヴェイが、1年間投げ続けられる体力をつけることなのよ~! それが実現したら、明るい光のさすところへいけると思うんですけどね。ほんと、がんばっておくれよ若者たち。

『コア・フォー ニューヨークヤンキース黄金時代、伝説の四人』

わたしにとって初の、野球ものの翻訳書が出ましたので、きょうはそれをご紹介します。

『コア・フォー ニューヨークヤンキース黄金時代、伝説の四人』(フィル・ペペ著 作品社

 人々は、待ちわびていた。

 若き救世主たちが登場するころ、名門の威信は地に落ちていた。

 一九九〇年一月一日、二〇世紀最後の十年が幕をあけたとき、つねに誇り高く、はなはだ傲慢で、高飛車だったかつての強豪ニューヨークヤンキースは、落ちぶれて、混乱と動揺と紛糾と機能不全のさなかにあった。

――『コア・フォー』p.10

1982年から89年までの8年間に、なんとヤンキースでは11人もの監督が指揮をとりました。

82年から90年までのGMも7人。

長期政権にも、もちろんそれなりの弊害があるでしょうが、これだけひんぱんに監督とGM代わったら、チームとしての体をなしません。

そんななか、1990年にマリアノ・リベラドラフト外契約でひっそりと入団。同じ年のドラフトでアンディ・ペティットとホルヘ・ポサダが指名され(ふたりとも短大卒で、当時の「ドラフト・アンド・フォロー」制度により、入団は翌91年)、92年のドラフト(全体6番め)ではデレク・ジーターが指名されます。ヤンキース黄金時代への序章です。

本書の読みどころのひとつは、まずなんといっても、4人がそれぞれ紆余曲折をへてヤンキースの一員になり、メジャー昇格を果たして、初のワールドチャンピオンに輝くあたりのドラマ。これはヤンキースファンならずともわくわくします。

あとでくわしく書きますが、著者のフィル・ペペは、新聞記者時代、試合の記事を書かせたら随一といわれたそうで、1996年のブレーブスとのワールドシリーズヤンキース側から見ると3連敗4連勝)や、逆にチャンピオンを逃した2001年のダイヤモンドバックスとのシリーズなどは、文字だけで読んでも「うわー!」となります。

でもせっかくなので、ここでは96年WS第4戦、ジム・レイリッツの同点3ランのビデオをリンクしておきましょうか。日本だと巨人対近鉄日本シリーズ(1989)で駒田が「バーカ」といいながらベースを一周した場面が思い出されますが、何かをきっかけにがらりと趨勢がひっくり返ってしまうということは、そんなにしょっちゅうではないけれど、あるものなんですね~。だからスポーツはおもしろい。いっぽう、そんなふうにひっくり返ってしまいそうなことがおきても、力でそれを食い止めることもある。それが2001年のワールドシリーズ。どちらもスポーツのすごさの極みだと思います。

ちなみに1996年のWSに至る前、リーグ優勝決定シリーズではヤンキースオリオールズ(当時はデイブ・ジョンソン監督)が戦っているのですが、このときはオリオールズ界隈で今でもうらみがましく語りつがれている「ジェフリー・マイヤーのアシストホームラン」が飛び出しています。打ったのはジーター。このあとヤンキースは黄金時代をむかえ、かたやオリオールズは翌1997年に地区優勝したのを最後に、長い低迷期に入っていくわけです。

そして本書後半では、ときどき時系列をすっとばして、過去の名選手の話や、クローザーとは何かという話などを織り込みながら、「コア・フォー」の4人が頂点をきわめて、ゆっくりと現役生活の終盤へ向かい、引退していくところまでが語られます。リベラとペティットがマウンド上で抱き合う場面とかね。まだ記憶に新しいですが。

目次を画像であげておきます。ゆがんでるけどご容赦を。

 

おもしろいのは、わたしの愛するバック・ショウォルター監督がたびたび登場するところ。

まあ、コア・フォーが初めてメジャー昇格したときの監督なんだから当然なのですが。1995年の地区シリーズでマリナーズに負けて解任される(形の上では辞任なのかもしれませんが、事実上の解任)あたりは、訳していてめちゃくちゃ複雑な気持ちになりました。解任されずにそのまま96年も指揮をとっていればWS優勝監督になっていたかもしれないのに……でもそうしたら今オリオールズの監督をやってないだろうな……みたいな。そしてジーターの引退イヤーである2014年、ヤンキースタジアム最後の試合が、オリオールズ戦。9回裏1アウト二塁でジーターに打席が回り、一塁が空いていたにもかかわらず、ショウォルター監督はジーターとの勝負を選びます。結果はライト前サヨナラタイムリー。「なぜショウォルター監督は勝負を選んだのか」と本書にもちらりと触れられていますが、あのときオリオールズはもう地区優勝を決めていました。ですからショウォルターとジーターという、野球をリスペクトするふたりの真剣勝負が実現したのでしょう。

本書は、当初、2012年シーズンの終わりまで(第29章)を描いたものが出版され、その後、リベラとペティットが引退した2013年シーズンを「エピローグ」(本書では第30章)という形で付けたした新版が2014年に出版されました。

さらに日本版出版に合わせて、著者のぺぺさんは、「コラム 松井秀喜」と「最終章 デレク・ジーターの引退」を書きおろしてくださいました。

50冊も著書のある人なのですが、日本で訳書が出るのはこれが初めて。

その出版直前の12月14日、なんとぺぺさんは、80歳の生涯を閉じられたのです。びっくりしました。

#RIP legendary NY sports writer #PhilPepe -- a dear friend + @cbsradio friend who will be hugely missed. pic.twitter.com/k4IY0MchKy— Dan Taylor (@DanTaylorCBSFM) 2015, 12月 14

奥付の著者紹介にも記したのですが、26歳でヤンキース番記者になり、ロジャー・マリスによるベーブ・ルースのシーズン最多ホームラン記録への挑戦を追ったのが記者生活のはじまり。それから半世紀以上、ヤンキースの激動の時代を最前線で追いつづけ、コア・フォーの引退を見届け、本書のために松井とジーターの記事も書いてから亡くなった。お目にかかったことはもちろんありませんが、生涯現役とはこのことだなと思います。新聞記者生活の大半を送った「ニューヨーク・デイリーニューズ」紙の追悼記事にリンクをはっておきます。

自分の心おぼえにもうひとつ。

ヤンキースでは1979年の8月に、キャプテンで正捕手のサーマン・マンソンが、みずからの操縦する小型飛行機で事故を起こして亡くなるというたいへんな悲劇がありました。本書でもそのことには何度か触れられているのですが、おどろくほどさらりとさりげなく書かれています。

でもぺぺさんが亡くなったあと、記者として79年当時、「ニューヨーク・デイリーニューズ」に書いたマンソンの追悼記事が再掲されているのを読んではっとしました。ぺぺさんはマンソンととても親しかったそうで、出社したときにはショックのあまり頭をかかえこんで言葉も出なかったのですが、同僚に「今、きみが感じていることをそのまま書けよ」とはげまされて、記事を書いたのだそう。マンソンが、タフガイを装っていても、じつは繊細でナイーブな心の持ち主であること、家族を何よりも大切にし、少しでも休みがあれば自宅にとって返して休日を過ごすこと、そのために自家用機の免許をとり、球団関係者がはらはらするのをよそに、おおよろこびで飛行機を操縦していたこと。さらには、事故の一報を聞いて当時の監督ビリー・マーティンが「赤ん坊のように泣きじゃくった」こと(しかしそのビリー・マーティンも10年後に自動車事故で亡くなります)、のちに巨人にくるロイ・ホワイトが「ショックで口もきけない状態」におちいってしまったこと……等々。心にずんとくる記事でした。

50年も記者をやって、ひとつの球団をつぶさに追っていれば、それがたとえ大衆を楽しませるためのスポーツであっても、喜びや栄光とともに、あらゆるごたごたや、醜聞や、脱力、疲弊、そして時折おとずれる悲劇に立ち会わざるを得ません。それを真正面から浴びて自分のなかで消化しつつ、どこかで一番鋭い感情にはふたをしてクロゼットのすみにしまったんだろうなと、この記事を読んでふと感じたのでした。

そんなぺぺさんの語る『コア・フォー』。けっしてエモーショナルに盛り上げるところはないのですが、それでもぐっとひきこまれます。こまかな項目がたくさんありますので、興味のあるところだけひろい読みしてもじゅうぶん楽しめそう。ヤンキースファン以外のかたもぜひどうぞ。(訳者含む(笑))