Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

オリオールズの2017年が開幕

4月3日(月:現地)オリオールズの2017年シーズンが、本拠地カムデンヤーズで幕をあけました。

  

「オレンジカーペット」を走って登場するオリオールズ独特の開幕セレモニーではジョーンズ、マチャド、ブリトンへの拍手が特に大きかったです。キム・ヒョンスは、昨年は、キャンプ大不振でロスター入りのときもめたこともあって、ブーイングが出たりもしましたが、昨シーズンしっかりした成績を残したので、今年は盛大な拍手をもらいました。よかったね。最後のJJハーディーの紹介ではファンもみんな声をそろえて「J・J・ハーディー!」。いいな。わたしもやりたい(笑)→動画もどうぞ。

 

当ブログ、冬のあいだすっかり休眠してまして、ロスターの出入りなどもぜんぜん書き留めていなかったので、そこらへんもざっとさらいながら、開幕ロスターを記しておきます。

 

【捕手】2人

 

ウェリントン・カスティーヨ

ケイレブ・ジョセフ

 

マット・ウィーターズがFAでナショナルズに移籍し(寂)ウェリントン・カスティーヨをFAで獲得しました。2017年は600万ドル。ウィーターズが契約先を見つけるのにだいぶ苦労し(きまったのは2月に入ってから)、それでも1500万ドルのサラリーを勝ち取ったことを思うとだいぶお得と言えるかもしれません。WBCではマチャドと同じドミニカ代表として、打つほうでもよく活躍していました。

 

ケイレブ・ジョセフは、昨年はケガもあって(ファウルチップでこうがん破裂という……(>_<))打棒がふるわず、132打数で打点なしという不名誉な記録を残してしまったのですが、守備面ではカスティーヨより上と言われています(→FanGraphsの記事)。今年のオープン戦でもたしか打点2ぐらいで、あまり打ててはいないのですが、カスティーヨのバックアップをしながら、バッティングのほうももう少し本来のものを取り戻してほしいです。

 

内野手】5人

 

マニー・マチャド

JJハーディー

ジョナサン・スコープ

クリス・デイヴィス

ライアン・フラハティー

 

ハーディーはぎっくり腰でキャンプは少し出遅れていましたが、開幕戦には無事に出場。昨年と今季の打席数が合計 1150に達すれば来季の自動オプションが発動するそうですが、昨年はケガで438打席しか立たなかったので、数字的にはほぼ無理だろうとのこと。1400万ドルのチームオプションもありますが、まあそういうことを抜きにしても、グラウンドの司令塔であるハーディーが健康で出続けることは、チームにとっても大切です。

 

スコープは、WBC日本戦でHRを打つなど大活躍。でも翌日のニュースではほぼカットされてました(^_^;;

日本戦以外ではあまり打てていなかったのですが、シモンズとの併殺コンビはオランダの大きな強みでした。オリオールズでもまずは頼りになる守備を。そして昨年HR25本のパワーに、ちょびっとの選球眼が加わるといいな。

 

デイヴィスは昨シーズン初めに左手の親指を脱臼し、その影響が1年中尾を引いたとシーズンオフに初めて明かしました(MASN)。左打者にとっては押し込むほうの手ですから、パワーダウンもむべなるかな。それでもHR38本打ったんだからすごいといえばすごいのですが。今年はその故障もすっかり癒えたそうなので、期待したいところです。

 

マチャドは、WBCの一次ラウンドでMVPを獲得。二次ラウンドでは、なんといってもあのアダム・ジョーンズにHRをもぎとられたシーンが一番印象に残ってますが、とにかく3月から彼のプレーを見られたのはうれしいことでした。

そして今日も、このプレー。

 

 

は~。何度でもリピできる(^-^) ただ、左手を内側にかなり折り曲げてしまったので、試合後はがっつりアイシングしていたようです。幸い今日は試合がないので(へんな日程ですよね)、一日しっかり休めて悪化させないようにしてください。

マチャドは、18年オフにFAになります。そのため、もしオリオールズの成績がふるわなければ今夏にもトレードするんじゃないかといった気の早い言説もありますが、今年はないだろうな。なんとかエクステンションをと心から願ってはいますが、財政的に厳しいのもよくわかってる……でもそのことを考えたら、今、目の前にいるマチャドのプレーを楽しめなくなるので、将来のことは切り離して今年のマチャドを愛でたいと思います。

 

【外野手】7人

 

アダム・ジョーンズ

キム・ヒョンス

セス・スミス

マーク・トランボ

ジョーイ・リカード

トレイ・マンシーニ

クレイグ・ジェントリー

 

さっきマチャドのところでも触れましたが、アダム・ジョーンズは、WBCではアメリカチームのキャプテンとしてがんばりました。優勝おめでとう! やはりなんといってもペトコパークでのHRキャッチですね~。

  

WBCのカラフルなマークの真ん前で、観客の手には星条旗。演出してもなかなかこうは行かないんじゃないかというほどよくできた絵です。しかも観客ひとりひとりの表情が生き生きしていて、左から3人めのやけにクールな表情の人がおもしろいと話題になったりもしました(笑)。

 

ジョーンズはサンディエゴ出身なので、あの試合はまさに地元。ジョーンズ自身にとっても特別な思い出になったことでしょう。翌日のニュースでだいぶ流れたようなので、アメリカの一般の人たちが初めて「WBC」に目を向けた瞬間にもなったんじゃないかと思います。

 

セス・スミスは1月にヨバニ・ガヤードとのトレードでマリナーズから移籍してきました。開幕戦では1番ライト。足が速いイメージはなかったんですが、オリオールズでは何でもありです(笑)。正直、彼のことは「発音の難しい人」というぐらいしか知らないのでこれからの活躍を楽しみにしてます。

 

あとキャンプで目立ってマイナー契約からロスター入りしたのがクレイグ・ジェントリー。もちろん世に言う「ばりばりのメジャーリーガー」だったわけなので、驚きではないのですが。2年間脳しんとうの後遺症に悩まされていたのだそうですね。知らなかった。足が速く守備もいいので、オリオールズの欠けた部分を補うピースになってほしいです。

 

トレイ・マンシーニは、昨年セプテンバーコールアップで初昇格したプロスペクト。他球団のスカウトからも、オリオールズの野手のプロスペクトではマンシーニがひとり図抜けていると言われるほどバッティングでは卓越したものがあり、昨年は5試合で3HRを打って、その片鱗を見せました。一塁専でしたがオフに外野の練習を始めて今季は外野手登録。開幕戦では代打でセンター前ヒットを打ちました。一塁にはデイヴィスがいるし、外野も混み合ってるので、ロスターの都合だけで今季は上がったり下がったりするかもしれないけれど、いつの間にか中心的な存在になってそうな気もします。

 

マーク・トランボは、FAでどこかとるでしょうと思ったら意外にあまり声がかからず。けっきょく1月末にオリオールズと3年契約(総額3750万ドル)を結びました。昨年のHRキングだし、クオリファイング・オファーの額が1600万ドルだったことを考えると、年1200万ドル強というのはお買い得に思えます。

そして開幕戦は5番DHでサヨナラHR! 今さらながら、戻ってきてくれてありがとう。

 

 

それにしても外野手7人ってね……(^_^;; 現在のオリオールズの弱点ではあるので、打てるやつ、守れるやつ、走れるやつをこうやってパズルのように組み合わせながら1年間やれたら最高なのですが、4人め、5人めの先発が必要になる時期には誰か落とさざるを得なくなります。ジェントリーはオプションがありませんから、やはりワリを食うのはリカードマンシーニかな。キャンプが終わっても競争は続きます。

 

【先発投手】3人

 

ケヴィン・ゴーズマン

ディラン・バンディ

ウバルド・ヒメネス

 

開幕3戦めまでに休みが2日という変則日程のおかげで、4人めの先発が必要になるのが9日、5人めが必要になるのが15日とされています。4人めには風邪でDLスタートのウェイド・マイリーが来る予定。もう体調は万全で、近々2Aで調整登板の予定。15日に昇格するのは2月に金銭トレードでメッツから移籍したガブリエル・ユノアか、昨年4月にやはり金銭トレードでカージナルスから移籍した左腕ジェイソン・アキーノのどちらかになる予定。ふたりともオープン戦好調だったので、15日に昇格しなくても、今季のいろいろな局面で何度か先発することになるでしょう。いつの間にかふたりそろってローテ入りしていても驚きません(笑)。

 

ゴーズマンは開幕戦5回1/3、5安打4四球2失点。103球というのがね。もう少し制球をよくしてイニング数を投げてほしいですが、開幕戦は特殊だし、成熟ぶりは見られます。2戦目に投げるバンディは、力投型で2巡め以降に打ち込まれる場面が目立つので、スタミナや配球など、今年はいろいろ経験を積む一年になりそう。カットボールも解禁したようだし、とにかく健康で投げ続けてほしいです。

 

ブルペン】8人

 

ザック・ブリトン

ダレン・オデイ

ブラッド・ブラック

マイカル・ギブンズ

ドニー・ハート

タイラー・ウィルソン

ヴィダル・ヌーニョ

オリバー・ドレイク

 

ブリトンは開幕戦でさっそく回またぎして2イニング投げ、「きょうはショウォルターも出し惜しみしなかったね」と、昨年のプレーオフ以来定番となっているジョークがまた注がれたわけですが、去年のあれは敵地ですから……ってかいいんですよ、もう。たしかにショウォルター監督は、ときどき保守的な采配をすることがありますが、どん底だったチームを建て直し、毎年最下位予想される中、過去5年間アメリカン・リーグ最多の勝ち星を挙げているんですから、ファンはもう気にしてません。

 

じつはブリトンは、キャンプで脇腹の張りを訴えてスロー調整だったので、きのうもまだ制球に若干のばらつきが見られるような感じでした。でもシンカーは健在。昨年のような完璧な投球ができるかどうかはわかりませんが、故障さえなければ頼れるクローザーであり続けるでしょう。

 

ダレン・オデイは開幕直前に風邪をひき、ことによるとDLもあるかも……。快方には向かっているようです。

総じてブルペンは若く、オプションを持っている人が増えたので、また3A監督ロン・ジョンソンとショウォルター監督のホットラインがフル回転する一年になりそうです。

 

【DL】

 

ウェイド・マイリー(LHP)

クリス・ティルマン(RHP)

アンソニー・サンタンデル(OF)

 

先ほども記したようにマイリーは9日にDLから復帰予定。

ティルマンは昨年からかかえている肩痛がオフに悪化。キャンプ中にも一度痛みがぶり返して復帰予定が延びました。4月1日にブルペン入りして翌日も痛みがなかったので、8日にはバッティング練習で投げる予定。順調に進めば5月初めには復帰できると言われています。

 

サンタンデルは昨年のルール5ドラフトでインディアンス傘下から獲得した外野手。22歳。昨年は1Aで.290/.368/.494、二塁打42本、HR20本、打点95という魅力的な数字を残していますが、秋に右肩の手術を受けて回復途中な上、キャンプではひじに張りも出ていました。上でも書いたように、チームの弱点である外野は目下混み合っていて、もうひとりルール5で指名したタバレスはけっきょくレッドソックスに返却したので、DLスタートでゆっくり調整させたほうが都合がいいのはたしか。そうは言っても、秋までずっとDLというわけにもいかないだろうし、キープするのはなかなか難しいかもしれません。

 

こうしておさらいしてみると、オリオールズは今年もあちこちから目立たないピースをひっぱってきて、穴を埋めつつ、そこそこのチームにはなっているなと思います。先発陣がどれくらい持ちこたえるか、ブリトンを初めとするリリーフ陣がどれだけ安定した成績を残せるかが鍵かな。

マチャド、ジョーンズを初め、コアである選手の多くがFAになる2018年オフのことはほんと考えたくないんだけど、頭の隅にはありつづけるのがMLBチームを応援する上でのつらいところ。でもとりあえず今年は初の聖地巡礼が実現しそうなので(7月のカブス戦を見にいきます!)オリオールズにもがんばってほしいし、自分も元気でいなくちゃいけません。

ブログの更新はあまりしないと思いますが(おい!)ツイッターではうるさいほど応援してます。

今年もMLBを楽しみましょう!

上原、カブスへ(記事紹介編)

さてこちらでは、今オフに出た上原のフィーチャー記事を2、3ご紹介しておきましょう。

まずはボストンとの再契約がなくなったあとに出た「レッドソックスでのコウジ・ウエハラを振り返る」という記事。

GIFなども貼られていますので、興味のある方はぜひぜひ元記事をごらんになってみてください。要約でお伝えします。( )内は、主にわたしの補足とツッコミ。

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リリーバーの球速が上昇傾向にあり、ブルペンから出てくる投手はだれもが95マイル(152キロ)以上を投げる時代。2007年以来、リリーバーの平均球速は91.4マイルから93マイル(約150キロ)まで上昇した。

そんななかで上原は、平均88マイル(今季はたぶんもう少し低いですが)でありながら、9回あたりの奪三振率は2016年に12.1、キャリア通算でも10.7。しかもめったに四球を出さずにそれをやりとげる。2013年から16年までの平均与四球率は、9回あたりわずか1.47だった。

したがって三振と四球の割合をしめすK/BBもボストンでの4年間通算で7.86。メジャーリーガー平均は5.5だ。

(数字、元記事が間違っていたので、ちょっと修正しています。それと、2013年までの通算K/BBは8.74だったのですが、2015年が5.22、16年が5.73だったので、少し数字が下がってしまいました。★それでも通算K/BB 7.91は、100イニング以上投げた投手のなかで依然として史上1位です!★)

球速こそ遅いが、上原のファストボールは打者にとっては常に驚異だった。PITCHf/x が導入されて以降、1000球以上投げたリリーフ投手のなかで、上原のファストボールは、空振り率が20位だ。上位50人のうち平均球速が90マイル以下なのは、上原だけである。→データ(実は3位に球速87.75のダレン・オデイが入ってます。この記事、ちょっと数字のミスが多い(^_^;;)

なぜこんなことが可能なのか。答えのひとつが、きわめてすぐれたな決め球スプリットの存在だろう。このスプリットの42%という空振り率は、PITCHf/x が導入されて以降の時期では、第4位。上原は常にファストボールとスプリットを組み合わせて、打者を手玉にとってきた。

ほとんど変化しない、糸を引くようなファストボールと、PITCHf/x導入後、タテ横の変化率第3位に位置する上原のスプリット。野球界でも最も打ちにくい球のひとつだ。しかもその2つをほとんど同じ割合で混ぜてくるので、打者は見極めるのが困難。

結果として2013年から16年までのPWARP(ベースボール・プロスペクタス考案の投手のWAR)で上原は5.99と、リリーフ投手全体の10位にランクインした。

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つづいてカブス界隈から「上原と契約。つぎの10月へ向けてさらなるブルペン補強」という記事をざっくりと。

カブスは今オフに元ロイヤルズのクローザーウェイド・デイビスをホルヘ・ソレアとの1対1のトレードで獲得。今季はヒジの故障などで2度のDL入りをしたデイビスだが、ポストシーズンでの経験も十分。9回から逆算すれば、彼がクローザーをつとめるのは間違いないだろう。その前をつとめるのがへクター・ロンドンとペドロ・ストロープ。ロンドンはかつてTJ手術を受けた経験があるが、過去3年間で77セーブを挙げている。ストロープもオリオールズからの移籍後84ホールドを記録しており、マドン監督の信頼は厚い。

そして今度加入した上原はクローザーとして93セーブをあげた実績があり、左打者も.183と抑え込んでいる。多少の懸念があるとすれば、開幕直後に42歳になるというところか。

これでカブスには過去4年間のワールドシリーズで最後のアウトを取った投手のうち、3人がそろうことになった。(2013:上原、2015:デイヴィス、2016:モンゴメリー

◎エプスタイン球団社長のコメント「人間は183日間で野球を162試合もこなすようにはできていない。新労使協定でシーズンが4日ほど長くなるが、それでも層の厚さは必要だ。今年は野手陣の厚みがあって助かったが、来シーズンへ向けて、ブルペンにも同様の厚みをもたらしたい」

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よく読み直してみたら、あまり上原のこと書いてなかった(^_^;; まあいいか。これから、これから。

そして最後はまたボストンから。上原のことが大好きだったボストン・グローブのピート・エイブラハムさんからの惜別の記事です。(うう、夕飯食べてるあいだに、FullCountさんの記事が出ちゃった。まあしょうがない。)

「上原の貢献を忘るなかれ」

来年4月28日からの3日間、レッドソックスフェンウェイパークシカゴ・カブスを迎える。それは話題が盛りだくさんの3連戦になるだろう。

将来の殿堂入りが確実なテオ・エプスタインが、久しぶりにフェンウェイの芝生を踏み、みずからが獲得したすばらしい若手選手たちを目の当たりにする。

元エースで、2014年に不可解な形でチームを去り、今回初めてボストンに戻ってくるジョン・レスターは、勇者のような歓迎を受けるだろう。気むずかし屋のジョン・ラッキーにもレッドソックスファンから温かい拍手を送られるはずだ。

そして上原浩治のことも、特別な思いで迎えてほしい。上原は12月14日水曜日、カブスと正式に契約した。

上原はレッドソックスに在籍した4年間にめざましい活躍をした。79セーブを挙げ、4年間の平均奪三振率は11.6。226イニング投げて、与えた四球(敬遠をのぞく)はわずか37。

レッドソックス史上、226イニング以上投げた投手はこれまで201人いるが、そのなかで上原のレッドソックス在籍中の防御率 2.19よりもいい数字を残しているのはスモーキー・ジョー・ウッド(1.99)、サイ・ヤング(2.00)、アーニー・ショア(2.12)、ダッチ・レオナード(2.13)の4人だけ。しかもこの4人はいずれも1919年にベーブ・ルースが登場する以前のいわゆる「デッドボール時代(飛ばないボールの時代)」に在籍した投手たちで、今よりずっと投手有利な環境で投げていた。

2013年、上原がいなかったら、レッドソックスがワールドチャンピオンに輝くことはなかっただろう。上原は、ベイリーやハンラハンらがつぎつぎと故障するなか、6月にクローザーに就任。それ以降、防御率0.41、22回のセーブ機会で20セーブという成績を残した。

しかもあの年、クローザーになってから許した四球は2個、ホームランは1本だけ。

ポストシーズンでもその働きは変わらなかった。13回2/3で失点わずか1、16個の三振を奪い、与えた四球はゼロ。相手打者の対上原の成績は52打数8安打、打率.154だった。

上原はチームメートにも人気があった。言葉の壁を越えて、クラブハウスのムードメーカーになっていた。また2013年には38歳で73試合に登板、チームメートの尊敬も勝ち取った。

13年の主力選手の例にもれず、上原はCMキャラクターとしても活躍した。日本のサントリービールのCMに登場したおかげで、スプリングトレーニングの際、サントリーからビールが数ケース送られてきた。

上原は、チームメートにビールを配ってから、報道陣に、君たちの分はないよと軽口をたたいた。ところが4月のある日の試合後、わたしがインタビューを終えると、上原はビールをひとケース取り出し、英語でこう言ったのだ。

“Give it out to the guys,”(これ、みんなに配って。)

わたしが遠慮して、そんなにしてもらったら悪いと言うと、コウジはいいからいいからと手を振って、

「飲みなよ」と言った。

わたしはケースを控え室に運び、報道陣にビールを配った。そしてみんな、記事の締め切り前に、クローザーからの心づくしのサントリーをいただいたのだった。

上原は、ファンの人気者でもあった。彼が88マイルのファストボールと消えるスプリッターですいすいと1イニングを切りぬけていく様は、見ていて楽しいものだった。そしてデイビッド・オルティーズが上原をかつぎあげ、だれもが幸せな気持ちで家路につく。

いつの日か終わりが来るのは避けられない。だが少なくとも終わり方はなごやかなものだった。レッドソックスは上原にオファーを出したが、上原は時間をかけて決断することを望み、チームはそれを待たずにタイラー・ソーンバーグをトレードで獲得したのだ。

正しい決断だったと言える。上原は過去2シーズン、長期間にわたってDL入りしたし、球の質にも少し衰えが見られた。登板数もこれまで以上に抑える必要があろう。ここでナショナルリーグに移籍するのは、いいタイミングだ。

上原は、きわだった投球をして、多くの友人を作り、チャンピオンシップを勝ち取った。ボストンへの置き土産としてこれにまさるものはない。4月にファンが温かい拍手で上原を迎えてくれることを望んでいる。

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いい記事だな~(じーん)。

やはりこの記事の肝は、ビールのエピソードですね。上原の人柄と、マメさと、ボストンで築いた人間関係が凝縮されていて、ちょっとうるっときました。エイブさん、ありがとう(:_;)

この記事にはもうひとつ、2006年以来レッドソックスのロースターに必ず日本人選手がいたのが、上原、田澤の移籍でついに誰もいなくなってしまうということが記されていました。2007年に松坂と岡島が在籍してからは、ずっと二人ずついたんですね。

さあ、カブスでも19番(→本人ブログ)。これもうれしいな。

なんていうんだろう。レッドソックスでワールドチャンピオンになって、契約した4年間をいい成績でまっとうして、FAになったとき、「もう一度チャンピオンに」と思えるのって、すごいなあとしみじみ思うのです。しかも口で言うだけじゃなく、チームがまだ決まらないうちから、こつこつトレーニングを始めている。プロのアスリートだから当たり前と思う人もいるかもしれないけど、メジャーリーガーだって、ひとりのふつうの人間ですからね。ひとつの目標を達成したとき、自分の身分が不確かなとき、それでもモチベーションを高めて日々の仕事をこなせるかどうか……胸に手を当てて考える。やっぱり上原さんは、ほんとうに野球が好きだし、ほんとうにストイックな根っからのアスリートなんだなとあらためて感じた今年のオフシーズンでした。

2017年、新たな挑戦を心から応援したいです。

【追記】

2014年に当時まだレイズにいたマドン監督が上原についてコメントしたときの記事があったのを思い出したので、関連情報のところにリンクを貼っておきます。

上原、カブスへ(時系列編)

 1週間ほど前から報道が出ていた上原のカブス入りが正式決定しました。

 

いや~、よかったよかった。年内に決まったのもよかったし、上原本人の望む「勝てるチーム」から求められたのも喜ばしいかぎり。あと、ナ・リーグも一度は体験してほしいなと思っていたので、それも地味にうれしかったりします。

 

最初の動きがあったのは12月6日でした。レッドソックスがトラビス・ショー他3名とのトレードでブルワーズからリリーバーのタイラー・ソーンバーグを獲得。BOSトップのデイブ・ドンブロウスキー氏が「上原にもオファーしていたが、再契約の道は閉ざされた」とコメントしたのです。シーズン終了時から、再契約の可能性は薄いと言われていましたが、このトレードで完全になくなりました。

 このコメントが流れた直後からツイッターにはボストンファンの「サンキューコウジ」のツイートが数多く流れはじめます。

 (コウジ・ウエハラが2017年のレッドソックスに戻ってこないなんて、さみしい。2013年のことと、あのスプリットは忘れないよ、コウジ)

 

@TeamUehara ありがとう、麹レッドソックスネーションはあなたを恋しくします。🙏🏻🇯🇵 It's done My Good bye to Koji @JRSox305 @ChelseaAdlerr @boston_girl79 @NvBoSox 😥 Above ⬆️— Mark (@Mark_15__) 2016年12月6日

 

うう、「麹」が泣かせるよ(:_;)

 

で、いくつかの報道によると、カブスはこの直後に上原へのオファーを出したとのこと。

そして合意の報道が最初に流れたのは12月9日、ニッカンが報じました。確認してないけど他より早くて、特ダネっぽかったです。

 このニッカンの記事がすぐ米国メディアの記者たちによってツイートされていきます。一番早かったのはたぶんボストン番のイヴァン・ドレリッチ記者。

 Source says Koji Uehara indeed on the brink of signing with the Cubs, although deal may not be final. Reported here: https://t.co/PUIdseiGeT

ニッカンの記事をそのまま貼って、あとはグーグル翻訳におまかせ(笑)。すごい時代だ。現地の記事もだいぶ探したのですが、9日は英語の記事でもソースはだいたいニッカンでした。

こうしてやきもき(&わくわく)しているわたしを尻目に(いや、関係ないだろ)、ご本人はこんな余裕のツイートを。

 いただきまぁす (o^^o) pic.twitter.com/mA439nxT7D

 これを見たときに、あっ、カブス入りはほんとなんだなと思いました(笑)。

 このあと週明け12日(月)までのどこかで、14日に放送の「伊集院光とらじおと」の対談を収録。12日に渡米。2日間フィジカルを受けて、14日に契約。15日に帰国という流れだったようです。とんぼ帰りですね。 

カブスとの契約内容は、1年600万ドル。オプションはなし。ほかにジョン・ヘイマン記者によれば日米間のビジネスクラス往復旅券が8枚。なぜ8枚なんだ。伊集院さんとの対談では代理人に「ホテルの部屋が浴槽つきかどうかチェックしてもらう」と言っていたので、そこも抜かりないでしょう。ただフェンウェイにひとつだけあったというウォッシュレットつきのトイレはどうでしょうねえ。リグレーフィールドにはどう考えてもなさそう。いっそトイレ改装もお願いしちゃいますか。

 ポストシーズンアンドルー・ミラーを初めとするリリーバーたちが大活躍したせいもあるのか、活況を呈している今オフのリリーバー市場。チャップマン(5年8600万ドル)、ケンリー・ジャンセン(5年8000万ドル)といったトップクローザーだけでなく、ミドルリリーバーも軒並みいい契約をゲットしています。今日は田澤がマーリンズと2年1200万ドルで契約しました。つぎの4月で42歳になる上原は、さすがに複数年はきびしいけど、600万ドルならふつうかむしろ若干安めに見えてくる。実際、もっと高額のオファーもあったとか。そのなかでカブスを選んだのは、ラジオでも言っていたように「先が長いわけじゃないんで、優勝をねらえるチームに行きたい」という、あくなき勝利への意欲と同時に、カブスのフロントからビデオレターをもらったからだと帰国時のインタビューで語っています。うわあ、どんなビデオだったんだろう。見たい! しかしカブスもやりますね。ワールドチャンピオンになったばかりなんだから黙っていても人が集まりそうだし、上から目線になってもぜんぜん不思議じゃないタイミングなのに、FAの選手にビデオレターを送って熱意をアピールするなんて。こりゃあ来年もきっと手ごわいチームであり続けるに違いありません。

 さて、これで安心して年が越せるわけですが、強いチームに入ったということはそれだけ競争も激しいということ。本人もラジオで語っていましたが「まずはメンバーとのたたかいが始まる」わけです。メジャー契約なのでスプリングトレーニングで結果を残さないと残れない、というわけではありませんが、オリオールズ時代のチームメートだったジェイク・アリエッタとペドロ・ストロープを除いてはほぼお初のチームに移籍するのですから、スプリングトレーニングはかなり大切なものになりそう。そう考えるとWBCはタイミング的にちょっと難しいような気がしますね。万が一出場するとなれば、もちろん全力で応援しますけど。

 最近まったく更新してなかったくせに、またまとめ書きしようとしていますが、つぎは契約に対する反応の記事をいくつかご紹介します。

(関連記事に、上原がレンジャーズに移籍したときと、レッドソックス入りが決まったときの記事をリンクしておきます。レンジャーズ移籍が決まった日に、ザック・ブリトンヤンキースタジアムで先発して初回9失点……(笑)なつかしい、いやなつかしくはないけど、感慨深い。時は流れるし、人は変われるし、チームも変われるんだ。ほんとにね。)

O's:地味なトレードのおさらい

今年もトレードデッドラインが去っていきました。

「ドッグデイズ~」のエントリで、先発投手の補強について、「6回投げられる選手だったら、誰でも今よりよくなるんで。クオリティスタートなんてぜいたくなことはいいません。6回4失点でいいです」と書きましたが、そのとおりの選手がやってきました。うん(笑)。その前のオンドルセクの獲得などもあわせ、オリオールズの補強をざっとおさらいしておきます。

◎7月29日(金)ローガン・オンドルセクと契約

これにはびっくりしました。今季オンドルセクは、ヤクルトでクローザーをつとめていましたが、6月26日の中日戦で、首脳陣に悪態をつくなどして謹慎処分に。その後、謹慎は解かれたものの、7月21日に退団が発表されていました。その間の経緯は、フルカウントさんの記事によると、「7月17日に家族とともにアメリカへ帰国し、21日に契約解除。27日には自由契約選手としてNPBから公示され、29日(日本時間30日)にオリオールズがメジャー契約を結んだ」というものだったようです。

契約翌日、オンドルセクはこう語りました。(MASN):

「ここにこられてよかった。オリオールズは好調だし、ぼくにとってもチャンスだ。優勝を争うチームの一員になれてうれしい。ふしぎなものだね。日本ではちょっと意見の相違があって、ぼくと球団のあいだに食いちがいが生じてしまった。その後、アメリカに戻る機会があったから、そのチャンスをつかまえたんだ。オリオールズは、日本でのぼくの投球を偵察していたようだね。それで、うちのエージェントがいくつかのチームにコンタクトをとったとき、ぜひ来てほしいといってくれたんだ」

オンドルセクにとってはもちろん願ってもないチャンスだったでしょうが、トレードのコマが少ないオリオールズにとっても、実績のある海外FA投手がシーズン途中に出現したのは渡りに船だったはず。とくに昨年まで左打者を効果的に抑えていたブライアン・マタスが、不振のため5月末にトレードされてからは、対左用のリリーバーを求めて、傘下の選手たちをとっかえひっかえ昇格させて試していました。(マイリーとのトレードでシアトルに移籍したアリエル・ミランダもそのひとり。)メジャーでの過去の被打率を見ると、オンドルセクは、対左が.236で、対右が.257。本人は右投手ながら、左のほうが対戦成績がいい、いわゆる「リバーススプリット」の持ち主。ここらへんが獲得の決め手になったものと思われます。ちなみにオンドルセクと入れ替わりでDFAされたチャズ・ロウは、対右が.105なのに、対左は.333でした。

その後オンドルセクは、7月30日、31日のブルージェイズ戦に登板。計2イニングを完璧に抑えております(動画)30日は負けている場面、31日は、4点リードの9回でした。はじめはこうして少し楽な場面で投げながら、徐々に厳しい場面でも力を発揮してほしいです。

◎7月31日(日)ウェイド・マイリー(29)をシアトルから獲得。

今季、マイリーは7勝8敗、防御率4.98。メジャー通算では157試合で56勝54敗、防御率4.07。1登板あたりのイニング数は6.01。「6回4失点でいいです」というわたしの希望にぴったりの選手!(笑)

じつはこの少し前に「オリオールズがキャシュナー獲得をめざしている」という報道がありました。キャシュナーは通算防御率3.71の人なので、実績は上なのですが、今年は広いペトコパークでERA4.76。しかも1登板あたりのイニング数が4.9。あまりわくわくしないなあと思っていたら、けっきょくマーリンズへのトレードが決まりました。それも総勢7人が動くという大トレード。(ただしキャシュナーといっしょにマイアミへ行ったコリン・レイは、1日でケガしてパドレスに返却されることになり、パドレスからも1人返還されたので、最終的には5人。)

そこへ行くと、マイリーのトレードは、オリオールズの3A左腕アリエル・ミランダ(27)との1対1なのでとてもシンプルです。ミランダは7月3日のマリナーズ戦で、リリーフとして2回を投げ、4安打2失点ながら4三振を奪う投球をしています。このときマリナーズ首脳陣から「使えそう」という評価を受けたのかもしれませんね。

ミランダは、94、5マイルのなかなかいいファストボールを投げます。制球もまあまあ。でもデビュー戦では高めに浮いたファストボールを長打されていました。変化球は、スプリットチェンジのようなのを投げ、ふわふわとストライクゾーンに入って見逃し三振を取ったりしていましたが、全体的に高いし、切れはまだもう少しかなと思いました。でもデビュー戦の1試合だけではわかりません。全体としてはわりとまとまった投球をするので、経験をつんでいけば、先発かリリーフかは別として、十分上でやれるんじゃないかという感じ。ただ、今年のオリオールズにいても、上で経験を積む枠がないし、27歳とそれなりに年齢もいっているので、オリオールズがマイリーのサラリーを負担することも考えれば、トレードの対価としては妥当だと思います。

じつはミランダ、明日、現地8月4日(木)に、シアトルでの対レッドソックス戦で先発デビューすることが発表されています。そしてマイリーも明日、オリオールズデビューなんですよね。なぜ同じ日になるかなあ(^_^;;

ウェイド・マイリー@防御率4.98は、キャシュナーと同じであまりわくわくしないんですが(^^;;ヒメネスの「ERA7.06」よりは明らかにいいし、ガヤードの「5.70」よりもやっぱりいいのです。ナショナルメディアからは黙殺されるトレードですが、現状よりは多少の向上が見込める、きわめて現実的でデュケットさんらしい補強だなと。しかもマイリー、7月の5登板では、失点が2,4,3,2,1で、登板回数は、6.2, 5.1, 6.1 6.0, 7.0とまあまあ。こんなマイリーをFangraphsの、おなじみジェフ・サリヴァンは「Innings Sponge(イニング数をスポンジのように吸収する男)」と表現しました(記事)が、まさに言い得て妙。

「優勝争いをしているチームで、マイリーの加入によってグレードアップするチームは、そうそうないが、それがオリオールズの悩みであり、また強みでもある」「マイリーは、特別な欠点もないが、特段にすぐれたところもない。全体として見れば、ローテ4番手あたりの、そして調子のいい日には3番手ぐらいに見えなくもない投手だ。 三振はまあまあ取るし、四球もさほど多くはなく、しかし特別制球がいいわけでもなくて、ホームランもそこそこ打たれる」

……思わず笑っちゃいます(笑)。それでも6回投げて、だいたい4点以内に抑え、たまにはQSもしたりしてくれれば御の字かなと。そんなトレードです(^^;; 

◎8月1日(月)スティーブ・ピアスを獲得。

今年は、31日が日曜日だったので、8月1日がデッドラインだったのですよね。その期限ぎりぎりに、オリオールズは12~15年にオリオールズで活躍し、今年はレイズで.309、ホームラン10本という成績をあげているスティーブ・ピアスを獲得しました。ピアスは1年契約ですし、クオリティオファーを受ける可能性はないので、売り手にまわったレイズとしては、放出が前提の選手。オリオールズのほうは、ルール5でレイズから獲得したジョーイ・リカードが親指の突き指でDLに入っている上、控えのノーラン・ライモルドも.237とインパクト不足、アダム・ジョーンズもたまに背中が痛くなったりするというわけで、頼れる第4の外野手がほしかったのだと思います。

こちらも1対1のトレードで、交換相手は1Aの捕手ジョナ・ハイム。守備がいいと言われ、ショウォルター監督のお気に入りで、スプリングキャンプで、ときどき試合に呼ばれたり、投手陣の球を受けたりしていました。こんな若者です。グッドラック!

Best of luck to @Jonah_heim6 who has been traded to the Rays. Thanks for the memories this season! #ShakeYourKeys pic.twitter.com/xqOJoQVyv7— Frederick Keys (@FrederickKeys) 2016年8月1日

……というわけで、地味な補強のおさらいでした。

ただ、8月31日まではまだウェーバーを通過した選手のトレードが可能です。過去、デュケットさんは8月のトレードも活発に行っています。

たとえば2012年にはジョー・ソーンダース⇔マット・リンドストローム。ソーンダースはこの年、テキサスとのワンデープレーオフ(テキサス先発はダルビッシュ)で勝ち投手になっていますから、結果的にたいへん重要なトレードになりました。優勝した2014年には、アレハンドロ・デアザとケリー・ジョンソンを8月のトレードで獲得しています。ふたりとも最後のひと月で、それぞれ活躍を見せました。きっと今も、デュケットさんは、地味に目を光らせていることでしょう。

その他の話題を。

◎ディラン・バンディに首ったけ

「究極の奥の手」と書いたとたん、思いっきり先発ローテ入りしているディラン・バンディ。最初のレイズ戦は、まるでリリーバーのようにはじめからファストボール全力投球で、3イニングめにはスタミナ切れを起こしてしまいましたが、インディアンス戦では5回1失点で先発初勝利。つぎのロッキーズ戦では5回までノーヒッターだったのですが、6回に崩れ、3失点で負け投手。でもすごくいいピッチングでした。そして昨日8月2日のレンジャーズ戦でも6回1アウトまでノーヒッター。前回の反省を生かして、安打を打たれたあともきっちり落ちついて抑え、7回1安打無失点とダルビッシュに投げ勝って、みごとな勝利を飾りました。現在防御率 3.05。

目下、59イニングですから、あと2回も投げれば、シーズン当初に上限と言われていた70イニングを越えそうだし、100イニングも軽く越えてしまいそうな勢いなのですが、どうやらもう首脳陣は「行けるところまで行こう」と腹をくくったように見えます。それだけ今のバンディはすばらしい。立ちあがりの悪い投手が多いオリオールズにあって、バンディの安定感ときたら、ほんとに大船に乗ったような心地だし、きのうのように0-0から1-0とリードしたような展開でも、その裏を涼しい顔で抑えられる落ち着きがあるんですよね。どうか、どうかこのまますくすくと大きくなってください。

◎ゴーズマンも成長?

バンディ効果といったら失礼かもしれないけど、ゴーズマンが少し粘りのピッチングを見せるようになってきました。今日のテキサス戦でも1回、2回はランナーを出しまくって、これまでだったらそのまま崩れていたかもしれないけれど、今日は球数を費やして粘り強く抑え、最終的には7回を投げきる大人のピッチング。これをまっていたのよ、お母さんは(←誰?)。

こうやってバンディとゴーズマンが競い合いながらティルマンをささえ、そのあとからウェイド・マイリーがスポンジのようにイニングを吸収していってくれたら、先発陣はそこそこ形になるんですけどね。

あとは、7月に入ってからめっきり不調の打撃陣があったまるのを待っています。やっとHRは出るようになってきたから、あとはタイムリー。

めざめよ、クリス・デイヴィス! ホームランとは言わない。二塁打でいいんだから。力まずに行きましょう、ねっ。

Go, O’s!

上原、今季中の復帰をめざして。

「クローザー、アゲイン」の記事を投稿したのが7月12日。その後15、16、19日と三回登板していずれも無失点。2セーブをあげて、やっぱり上原は最後が似合うよねと思っていたのですが、19日のサンフランシスコジャイアンツ戦で、右の胸筋に軽い肉離れを起こし、無念のDL入りとなってしまいました。

今回の箇所はどこなのか、正確にはわかりませんが、初めての箇所とのこと。

部位はちがいますが、2012年テキサス時代には右の広背筋を痛めています。そのときは、脇の下の奥にあたるところだったと、何かでおっしゃっていたような。このあたりは大小さまざまな筋肉が複雑に重なり合うところなので、筋肉の名称もケガによって影響を受ける動作も、少しずつちがうんでしょうね。

じつは4年前のケガの時もジャイアンツ戦で(ただし場所はSF、今回はボストン)いったい何の因縁なんだという感じですが、そのときは肩周り(というか脇の下ですが)のケガが初めてだったせいもあるのか、イニング4人めのサンドバルに投げて痛みを感じたあと、違和感を感じつつポージー、パガン、ベルトと3人に投げているのですよね(下の関連記事のところに当時のブログをリンクしておきます)。このときは、リハビリ途中で痛みが再発したせいもあって、復帰まで約2か月かかっています。

今回は4-0とリードした9回に登板し、先頭のベルトをフルカウントからの6球めで見逃し三振にとったところで、痛みを訴えて降板。つづくポージーとクロフォードは、代わったトミー・レインが抑えています。(ちなみにデッドライントレードで左腕リリーバーのアバドを獲得したため、トミー・レインは今日DFAされてました。オリオールズ、とらないかな。)

その後MRIを受けたりして2日後の21日にDL入り。翌23日にはPRP(高血小板血漿)注射を受けて、翌週からは下半身のトレーニングを始めているようです。

この間、チームの様相はまたまた変化しています。

まあ、ここ2、3年のボストンの動き(あるいはタイガースでのドンブロウスキーGMの動き)と比較すると、思ったより静かではありましたが、1週間ほど前に先発のポメランツを獲得したのに加えて、31日のトレードデッドラインでは、ツインズで7回、8回をになっていた左腕リリーバー(防御率2.65)フェルナンド・アバドを獲得。これでキンブレルのケガと時を同じくして獲得したジーグラーに加えて、ケガから復帰した田澤、アバドと、うしろはそれなりに強力なメンツがそろいました。

しかも7月9日に半月板を損傷し11日に手術を受けて、一時は「復帰は9月か」と言われていたクローザーのキンブレルが、なんと8月1日のマリナーズ戦で復帰したのです。手術からわずか3週間。早っ!! おまけに三者三振。どんだけ~? キンちゃんは28歳。若いっていいわねええ。

というわけで、上原の心中察するにあまりあるところですが、そんななか7月29日の本人ブログでちらっと「球団からは、あまり戦力として期待してないような記事が…(^_^;)」と触れられていたように、ボストン主要紙に「上原、復帰時期は不明」という記事が出ました。(ソース:ボストングローブ)

これは7月28日(木)の試合前にファレル監督が語った短い談話にもとづく記事。ちょっと引用しますと:

レッドソックスのファレル監督は、チームは、上原(41)が今季中に復帰しない場合にそなえて準備していると述べた。

 『現時点では、上原の復帰がいつになるかは不明だ。クレイグ(キンブレル)はまもなく復帰するし、ふたりがいないあいだに、穴を埋めてくれている選手たちが、貴重な経験を積んでいる。この経験が、最後の60試合で生きてくると思うよ』」

短い談話なので、なんとでも解釈できますが、こういうときは、解釈しないのが吉! たしかに、先ほども記したように、上原が抜けても戦える体制は整っているわけですが、最後まで何が起こるかわからないのが野球です。9月に入ったらもうポストシーズンを見据えた補強はできません。そこでひとりふたり、ケガしたり不調に陥ったりすることだって十分考えられます。

ちょっと気になるのは、上原のことがだいすきなボストングローブのエイブさんがこんなツイートをしていたこと。

Koji Uehara has not spoken to any non-Japanese reporters since his injury, and that was briefly once. Injury sounds more and more ominous.— Pete Abraham (@PeteAbe) 2016年7月29日

(上原は、ケガ以来、日本人以外の記者とまったく話をしていない。日本人記者とのやりとりも、一度だけで、ごく短いものだった。ケガが思った以上に深刻なものなのではないかと思えてくる。)

数日前のツイートなので、その後また状況が変わったかもしれませんが、本人ブログなどを見るかぎり、上原は、復帰を期する気持ちと、勝手に「今季中の復帰はないかも」と報じる周囲へのいらだちとで、「貝モード」に突入してるんじゃないかなあと。

しかし、大統領選を見てもわかるように、アメリカは言葉の国です。

「胸の内に真の闘志を秘めて、何も語らず黙々と自分のするべきことをする」という態度は、かならずしもすんなり理解されません。

それより、多少はったりでも「必ず今季中に復帰するから。そのために今、こつこつとトレーニングを始めています」とひと言いったほうが、はるかに歓迎されます。

復帰への闘志が満々である以上、来期の働き場所を確保するためにも、なんとか今季中に投げられるといいなと。(いきなり現実的になるやつ。)

そのためには、くやしさをぐっと押し殺して「9月にはもどって見せますよ(にっこり)」と、ひとことエイブさんに言ってやってくださいな。

なんてったって、明るさは、上原さんの数ある武器のうちでも、なかなか大きなものなんですから。

今こそ雑草魂、発動のとき。あせらずじっくりケガを治して、また力強く立ちあがる上原さんを待っています。

O's: ドッグデイズのドッグファイトをどう乗り切る【追記あり】

オールスターがあっという間に終わってしまいました。

今季、オリオールズからは、マチャド(ファン投票)、トランボ、ウィーターズ、ブラック、ブリトンと5人が出場。出場選手は、2012年からの5年間で20人となり、これはカージナルスの23人についでメジャー2位だとのこと。わたしが見はじめた2009年から11年までは1人ずつでしたからねえ……。2010年など、唯一選出のタイ・ウィギントンが、守備から試合に入って、その裏に打席がまわってくると思ったら代打を出されたなんていう悲しい思い出も(ジラルディ監督の年でした)。

今年は、マチャドはノーヒットで、ブラッド・ブラックは出場なし(パドレス出身だから、凱旋ではあったのですが)。でもトランボがホームラン競争でさすがのパワーを見せてくれたし(スタントンには遠く及ばなかったけど(笑))、試合の最後をブリトンとウィーターズのバッテリーでしめくくったし、オリオールズファンとしても楽しいオールスターでした。

.@Zbritton, a perfect 27-for-27 in the regular season and 1-for-1 in the #ASGhttps://t.co/Wbji5ZegpJ— Baltimore Orioles (@Orioles) 2016年7月13日

(動画はビデオ。音が出ます。)

さて、これから、ショウォルター監督が “dog days” と呼ぶ後半戦が始まります。 “dog days”を辞書でひくと「7月初めから8月中ごろまでの猛暑のころ」とあります。この時期には、Dog Star と呼ばれるおおいぬ座シリウスが日の出とともに現れ、日の入りとともに沈むからこう呼ばれるのだそう(それって要するに、シリウスは夜空に現れないってことですよね?)。→Wiki

でも同時に「ドックデイズ」という言葉には、「ドッグファイト: 犬のけんかのような激しい争い」という言葉と、イメージがひびきあうところもあります。今年はまさにそう。オリオールズは、首位にこそ立っていますが、わずか2ゲーム差でボストンとトロントが追ってきてます。きっと7月、8月のドッグデイズから9月にかけて、ドッグファイトがつづくでしょう。

前半のオリオールズのざっくりした現状をMASNの記事からピックアップしておきます。

オリオールズはホームラン137本でメジャー最多、チーム打率は.272でメジャー5位、出塁率は.333で、メジャー8位、長打率は.467でメジャー2位だ。442得点はメジャー7位である。

いっぽう、チーム防御率は4.35で、メジャー16位。なかでも先発防御率は、なんと5.15で、これはメジャー28位だ。「フロントと監督の懸案事項」というランキングなら堂々のトップを張るだろう。先発陣は計470イニングしか投げておらず、これはメジャー最下位。トップはブルージェイズの579回 1/3だ。

しかしリリーフ陣の防御率は 3.12、イニング数が 303回で、これはどちらもメジャー5位。ダレン・オデイがDL入りして6月1日以来投げていなくてもこれだけの数字をあげている。

わかりやすいなあ、もう。分析の必要もないくらいですが、とにかく先発投手につきるんですよね。それにしても先発防御率5.15って……(-_-;; 昨年は 4.53でいいかげんひどかったのに、さらに上回るひどさ。これで首位ってある意味驚きなんですが、このままでいいわけがありません。

ヒメネスをどうする?

5勝9敗、防御率 7.38のウバルド・ヒメネス。前半戦最後の試合も1回1/3、5失点と、期待を裏切りつづけた今季の象徴のような登板になってしまいました。ブルペンでもあまり使いどころがないのが悩みなんですよね。あと1年13.5MILの契約が残っていますが、泣く泣く切るしかないのでしょうか?(T_T) これまでDFAはないといいつづけてきた地元紙も、さすがに少し論調が変わってきたような気がします。

◎トレードはある?

あってくれないとこまるんですが、同時にとてもむずかしいのも事実。なんといっても対価となる選手が、ほかの上位チームに比べて不足してますので……。たとえば、よくポメランツのところでオリオールズの名前が出てますが、みんながほしがる選手はそうそう取れないんじゃないかと。力はあるけど前半戦ちょっと不調、みたいな投手を、リーズナブルな対価でゲットできたらうれしいんだけど、まあ、そう簡単ではないでしょう。でも正直、6回投げられる選手だったら、誰でも今よりよくなるんで(笑)。クオリティスタートなんてぜいたくなことはいいません。6回4失点でいいです。

【7/15追記:さっそく来ましたねボストンのトレードが。ポメランツをゲットして、アンダーソン・エスピノーザを放出。エスピノーザは18歳。Baseball Americaのランキングで全体15位の右腕だそう。でもその同じ日にボストンはドラフト1巡めの高校生右腕ジェイソン・グルームと契約。いいですなあ。】

◎もっとできる子ゴーズマン。

前半戦15先発で、1勝6敗、防御率4.15のケビン・ゴーズマン。勝ち負けには運もあって、たとえば5月5日のヤンキース戦でマーくんと投げあって8回無失点の好投をしたときも白星がつかなかったりしたので、さほど心配していないのですが、平均して5.7回しか投げられていないのがなんとも物足りないです。球も速いし、制球だってけっして悪くありません。1試合あたりの四球率は、3.0→2.3→2.0と3年間低下し続けています。ぜったい、もっとできる子だと思うんですよ。ゴーズマンがコンスタントにQSできるようになったら、突っ走れるんだけどなあ……。

◎究極の奥の手、ディラン・バンディ。

2013年6月にトミー・ジョン手術を受け、翌年は全休。2015年に試合で投げはじめるも、脚をいためたり、肩をいためたりして、13~15年までのトータルで 63回1/3しか投げられなかったディラン・バンディ。今年はもうオプションが切れているので、開幕からずっとオリオールズブルペンの一員として投げ続けています。シーズン当初はファストボールが93、4マイルといったところでしたが、ここへきて96、97マイルの制球のいい球がびしびし決まるようになり、7月6日のドジャーズ戦では2回1/3を投げて三振7つ(アウトはぜんぶ三振)という快投を見せました。

じつは、アマ時代から、バンディの一番の武器はカッター/スライダーなのですが、今季はその球をまだ封印しています。

オリオールズでは、デュケットGMがカッターがきらいで若い投手に投げさせない、という有名な話がありますが、じつはそこまでがちがちなわけではないようです。バンディの場合、たしかにマイナー時代はデュケットさんの意向で封印していたようですが、今はバンディ自身の判断で使わずにいるのだそう。昨年、アリゾナ秋季リーグで腕に張りが出たのが理由のようです。ショウォルター監督も、どのタイミングでカッターを解禁するかは、よく状態を見極めて考えたいと話しています。

で、メジャーリーグには、「若手投手に前年を大幅に上回るイニング数をいきなり投げさせると故障の原因になる」という考え方があるので、今季のバンディの場合、目標とするイニング数は65から70イニング。前半戦では、先発投手のように中4日あけながら、2イニング程度を投げ、トータルで38イニングを重ねています。

ここで先発に回ったら、あっというまに上限を超えてしまうわけですが、力強い投球を見るにつけ、バンディ先発待望論は高まるばかり。デュケットさんも「投手というのはとてもデリケートなもので、どんなに気をつけてもケガをしてしまうことはある。その反面、どんどん使ったらよい成績を残したということもある」なんていいはじめているので、ひょっとするとシーズン最終盤には、バンディの先発が見られる……かもしれません。

【7/16追記:「かもしれません」どこじゃなかった。現地16日、日曜日のレイズ戦にバンディが先発することが発表されました。おいおい、そんなに早く奥の手を使っちゃっていいの?(^_^;;  でも、いま投げているガヤードも、毎回ランナーを出しながら、ちびちびと点をとられていて、ほんとうに頼りない投げっぷりなんですよね……。どうしてこうも先発投手がいないのか……。おそらくバンディの初先発はせいぜい70球ぐらいまでになるのではないかと思いますが、まずはとにかく無事に投げてほしいです。しかしオリオールズも、デッドヒートのど真ん中で若手先発投手育成に乗りだすとは、余裕だな(違)】

さあ、まもなく後半戦がはじまります。独走だった2014年、ずーっと不完全燃焼だった2015年を経て、今年は見る方にも気力体力が必要になりそうな予感。きっと最後までドッグファイトが続くでしょう。がんばるぞ。Go, O’s!

クローザー、アゲイン

シーズン当初、上原は、「またクローザーの座をとりかえすつもりで投げる」という意味のことをたしかに口にしていました。

けれども、シーズンが始まると、それどころではないくらいに、とにかく目の前の1試合1試合を切り抜けるので精一杯。昨年の倍以上のペースでHRを打たれ、防御率も屈辱の4点台。そんななかで、驚きのクローザー復帰とあいなりました。

ちょっと時系列をおさらいしておきます。

7月8日(金)ホームでのレイズ戦。8回表、レイズの攻撃を迎えたところで6-4とボストンリード。ここでマウンドにマット・バーンズがあがりました。

このときのわたしの第1リアクションは、「えっ、2点差の8回なのに上原じゃないんだ? 中3日あいてるのに。見切られた?!」というものでした(すみません)。だって、前回登板は7月4日のテキサス戦でオドールにソロHRを喫し、アンドルースにも二塁打を打たれて、1アウトしか取れないまま交代していたんですもの。しかも7月3日、4日とも5点リードしたなかでの連投。「そろそろ点差のあるところで投げさせて様子をみるようになっちゃったのかなあ……」と邪推してしまったのでした。(じつは、ブルペンを使い切っていて、投げさせる投手がいなかったみたいです。ソース:ボストンヘラルド)

でも首をかしげたのはわたしだけではありません。ツイッター上のボストン番記者のみなさんも一斉に、「え、なんでコウジじゃないの?」と、ツイート。さらに8回裏、ボストンの攻撃が始まるとこんどはブルペンでその上原がウォームアップを始めます。「ええっ、コウジ? キンブレルはどこ?」混乱は深まる一方です(^_^;;

Koji warming up instead of Kimbrel. Bullpen mystery this evening— Pete Abraham (@PeteAbe) 2016年7月9日

上原は、2アウトからロンゴリアにソロHRを打たれるものの(って軽く流しちゃいけないんだけど、とりあえず)、つづくモリソンを抑えて今季3セーブめ。

そして試合後、ファレル監督から、キンブレルが試合前の練習のさい膝を痛めて登板できなかったことが明かされました。ちょうど2012年にリベラが試合前、外野でフライを捕球しようとして前十字靱帯を断裂したのと同じように、キンブレルも心肺機能のトレーニングをかねて外野フライを追いかけていたところ膝に痛みを感じたようです。MRIの結果、左膝内側半月板の損傷が判明。今日、現地7月11日に内視鏡手術を受けました。全治3~6週間とのことですが、投手であること、段階を追ってリハビリし、何試合か実戦練習が必要なことを考えると、復帰は9月初めではないかと言われています。

その間のクローザーは、おもに上原がつとめることになりそうです。

「9日のレイズ戦のあと、ファレル監督は、キンブレル離脱中のクローザーは上原でいくと明言した。

『クローザーはコウジだ。コウジが投げられないときにはブラッド(ジーグラー)にやってもらう。ブラッドには、直接顔を合わせてくわしく説明するつもりだよ。試合終盤には安定感が必要だから、コウジにクローザーをつとめてほしい』

 上原は8日、9日と連続してセーブをあげた。ファレル監督は、上原は、クローザーのほうがやりやすいのではないかとのべたが、上原自身は、役割にはこだわらないと語る。

『中継ぎでも抑えでも関係ないです。何回に投げても結果を出さなくてはいけませんから』

 上原は2013年から2015年までレッドソックスのクローザーをつとめ、3年間で65セーブをあげたが、チームは今オフ、クレイグ・キンブレルを獲得していた。

 チームが9日にトレードで獲得したジーグラーは、クローザーとセットアッパーの両方を経験している。今季はダイヤモンドバックスで36試合に登板し、2勝3敗、防御率2.82、18 セーブ。上原が8日、9日と連投しているので10日のレイズ戦で登板が見込まれる」

(ソース:WEEI)

ちなみに上原は、現地メディアに対しては「どの役割でも変わらない」と言い続けていますが、「全力通信」では「セットアッパーはいつ投げるかわからないのでやりにくい」とぼやいてました(笑)。そういう意味では、クローザーのほうが思いきりよく投げられそうですね。

◎落ちないスプリット

思えば2013年も、ハンラハン、ベイリーとふたりのクローザーがケガして、上原にお鉢が回ってきたのでした。

しかし、あの年は開幕からずっと好調だった。今年は4月に7試合連続無失点があったのが最長で、そのあとは4試合とか3試合とか。失点はHRが多く、しかもそのほとんどがスプリット。8日のレイズ戦でロンゴリアに打たれたのは4シームでしたが、それ以外のほとんどが、落ちないスプリットを打たれたものです。

6月以降だと3日トロント戦のトラビス、22日ホワイトソックス戦のメルキー・カブレラ、同日のローリー、27日レイズ戦のフランクリン、7月4日テキサス戦のオドールと、5本のHRがスプリット。4シームはロンゴリアのHRだけ。だから、このスプリットさえなんとかなれば……。

じつは上原は今季、積極的にスライダー(本人は「カット系」と呼んでいる)を取り入れています。

NHKBSの「全力通信」(6月11日)では「カット系を投げようとしてヒジが下がっているために、スプリットが落ちないのではないか」という疑問を直接上原にぶつけていました。上原自身は否定も肯定もせず「打たれると必ずそう言われますよね。ぼくはあまりビデオを見ないほうなんで、なんともいえないけど」とかわしていましたが……。

4月はスライダーを11球投げてヒットを打たれなかったとのこと。その後、使う頻度はかなり減ってはいるのですが、それでも6月は4球、7月も3球ほど投げています。決め球とかではなく、目先を変える球として。ヒジが下がるというマイナス面も当然頭にはあるでしょうが、それを押しても投げ続けているというところからは、なんとか新しい武器を手に入れて、少しでも地平を広げたいという貪欲さを感じます。ぽちぽちとカット系のボールを交えつつ、スプリットを思いどおりに落とす。それができれば鬼に金棒なんだけど(というか、それができないと鬼になれない)……。

ジーグラーと上原

ちなみにダイヤモンドバックスから7月9日にトレードで獲得したブラッド・ジーグラーですが、たまたまキンブレルのケガとタイミングが重なっただけで、交渉そのものはずっと前から行われていたようです。先ほども書いたように今季は36試合に登板し、2勝3敗、防御率2.82、18 セーブと、防御率は4.30の上原よりずっといいのですが、WHIP(1イニングあたりに出すランナー)を見るとジーグラーが1.461、上原は1.099なんですよね。ジーグラーがHRを1本しか打たれていないのに対して、上原はすでに8被弾。このあたりが防御率の差になっているようです。

だからやっぱりスプリットなんですよね。これさえ思いどおりにできれば。オールスター休みで身も心も休めて、なんとかスプリットともう一度仲よくなってほしいです。がんばれ。

◎みごとなグラブトス

7月1日のエンジェルス戦。5-4と1点リードの8回に登板した上原。1アウトのあと、レフトにふらふらと上がった打球をレフトとショートが交錯して三塁打にしてしまいます。するとつぎの打者ペレスが初球をスクイズ! これを上原がみごとなグラブトスでホームタッチアウト。結局この回を無失点で終えることができました。

Koji’s flip saved the day. https://t.co/aqEWxfW9Zs #RedSox pic.twitter.com/hIm12HwZQs— Boston Red Sox (@RedSox) 2016年7月2日

上原は、巨人時代にゴールデングラブ賞もとったことがあるんですよね。でもスクイズのグラブトスはあまり見たことがなかった。かっこいいです。

レッドソックスのトレードデッドラインは……?

レッドソックスは、オフにデイビッド・プライスを獲得したのに、なぜか先発投手が絶望的に不足していると言われていて、わたしからすればなにぜいたく言ってるんだ、というところ(笑)。でもドンブロウスキーGMは(あれ、社長だっけ?)例年、派手なトレードで大向こうをあっと言わせる人なので、おそらく先発投手のひとりやふたりは(?)獲得するでしょう。でもオールスター後の上原&ジーグラーの投げっぷりや、田澤(肩の疲労で数試合投げていない)の回復ぶりによっては、リリーバーの獲得もあるかもしれません。さすがにアンドルー・ミラーの復帰はむりだろうけど(ヤンキースは、ミラーは出す方向らしいのですが、相手がレッドソックスとなるとねえ)……。

そんなわけで、いろいろ正念場の7月後半。書いていたらなんだかどきどきしてきたけど(笑)、今こそ雑草魂発動のときです!

たのしみに見守りたいと思います。