Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

O's:地味なトレードのおさらい

今年もトレードデッドラインが去っていきました。

「ドッグデイズ~」のエントリで、先発投手の補強について、「6回投げられる選手だったら、誰でも今よりよくなるんで。クオリティスタートなんてぜいたくなことはいいません。6回4失点でいいです」と書きましたが、そのとおりの選手がやってきました。うん(笑)。その前のオンドルセクの獲得などもあわせ、オリオールズの補強をざっとおさらいしておきます。

◎7月29日(金)ローガン・オンドルセクと契約

これにはびっくりしました。今季オンドルセクは、ヤクルトでクローザーをつとめていましたが、6月26日の中日戦で、首脳陣に悪態をつくなどして謹慎処分に。その後、謹慎は解かれたものの、7月21日に退団が発表されていました。その間の経緯は、フルカウントさんの記事によると、「7月17日に家族とともにアメリカへ帰国し、21日に契約解除。27日には自由契約選手としてNPBから公示され、29日(日本時間30日)にオリオールズがメジャー契約を結んだ」というものだったようです。

契約翌日、オンドルセクはこう語りました。(MASN):

「ここにこられてよかった。オリオールズは好調だし、ぼくにとってもチャンスだ。優勝を争うチームの一員になれてうれしい。ふしぎなものだね。日本ではちょっと意見の相違があって、ぼくと球団のあいだに食いちがいが生じてしまった。その後、アメリカに戻る機会があったから、そのチャンスをつかまえたんだ。オリオールズは、日本でのぼくの投球を偵察していたようだね。それで、うちのエージェントがいくつかのチームにコンタクトをとったとき、ぜひ来てほしいといってくれたんだ」

オンドルセクにとってはもちろん願ってもないチャンスだったでしょうが、トレードのコマが少ないオリオールズにとっても、実績のある海外FA投手がシーズン途中に出現したのは渡りに船だったはず。とくに昨年まで左打者を効果的に抑えていたブライアン・マタスが、不振のため5月末にトレードされてからは、対左用のリリーバーを求めて、傘下の選手たちをとっかえひっかえ昇格させて試していました。(マイリーとのトレードでシアトルに移籍したアリエル・ミランダもそのひとり。)メジャーでの過去の被打率を見ると、オンドルセクは、対左が.236で、対右が.257。本人は右投手ながら、左のほうが対戦成績がいい、いわゆる「リバーススプリット」の持ち主。ここらへんが獲得の決め手になったものと思われます。ちなみにオンドルセクと入れ替わりでDFAされたチャズ・ロウは、対右が.105なのに、対左は.333でした。

その後オンドルセクは、7月30日、31日のブルージェイズ戦に登板。計2イニングを完璧に抑えております(動画)30日は負けている場面、31日は、4点リードの9回でした。はじめはこうして少し楽な場面で投げながら、徐々に厳しい場面でも力を発揮してほしいです。

◎7月31日(日)ウェイド・マイリー(29)をシアトルから獲得。

今季、マイリーは7勝8敗、防御率4.98。メジャー通算では157試合で56勝54敗、防御率4.07。1登板あたりのイニング数は6.01。「6回4失点でいいです」というわたしの希望にぴったりの選手!(笑)

じつはこの少し前に「オリオールズがキャシュナー獲得をめざしている」という報道がありました。キャシュナーは通算防御率3.71の人なので、実績は上なのですが、今年は広いペトコパークでERA4.76。しかも1登板あたりのイニング数が4.9。あまりわくわくしないなあと思っていたら、けっきょくマーリンズへのトレードが決まりました。それも総勢7人が動くという大トレード。(ただしキャシュナーといっしょにマイアミへ行ったコリン・レイは、1日でケガしてパドレスに返却されることになり、パドレスからも1人返還されたので、最終的には5人。)

そこへ行くと、マイリーのトレードは、オリオールズの3A左腕アリエル・ミランダ(27)との1対1なのでとてもシンプルです。ミランダは7月3日のマリナーズ戦で、リリーフとして2回を投げ、4安打2失点ながら4三振を奪う投球をしています。このときマリナーズ首脳陣から「使えそう」という評価を受けたのかもしれませんね。

ミランダは、94、5マイルのなかなかいいファストボールを投げます。制球もまあまあ。でもデビュー戦では高めに浮いたファストボールを長打されていました。変化球は、スプリットチェンジのようなのを投げ、ふわふわとストライクゾーンに入って見逃し三振を取ったりしていましたが、全体的に高いし、切れはまだもう少しかなと思いました。でもデビュー戦の1試合だけではわかりません。全体としてはわりとまとまった投球をするので、経験をつんでいけば、先発かリリーフかは別として、十分上でやれるんじゃないかという感じ。ただ、今年のオリオールズにいても、上で経験を積む枠がないし、27歳とそれなりに年齢もいっているので、オリオールズがマイリーのサラリーを負担することも考えれば、トレードの対価としては妥当だと思います。

じつはミランダ、明日、現地8月4日(木)に、シアトルでの対レッドソックス戦で先発デビューすることが発表されています。そしてマイリーも明日、オリオールズデビューなんですよね。なぜ同じ日になるかなあ(^_^;;

ウェイド・マイリー@防御率4.98は、キャシュナーと同じであまりわくわくしないんですが(^^;;ヒメネスの「ERA7.06」よりは明らかにいいし、ガヤードの「5.70」よりもやっぱりいいのです。ナショナルメディアからは黙殺されるトレードですが、現状よりは多少の向上が見込める、きわめて現実的でデュケットさんらしい補強だなと。しかもマイリー、7月の5登板では、失点が2,4,3,2,1で、登板回数は、6.2, 5.1, 6.1 6.0, 7.0とまあまあ。こんなマイリーをFangraphsの、おなじみジェフ・サリヴァンは「Innings Sponge(イニング数をスポンジのように吸収する男)」と表現しました(記事)が、まさに言い得て妙。

「優勝争いをしているチームで、マイリーの加入によってグレードアップするチームは、そうそうないが、それがオリオールズの悩みであり、また強みでもある」「マイリーは、特別な欠点もないが、特段にすぐれたところもない。全体として見れば、ローテ4番手あたりの、そして調子のいい日には3番手ぐらいに見えなくもない投手だ。 三振はまあまあ取るし、四球もさほど多くはなく、しかし特別制球がいいわけでもなくて、ホームランもそこそこ打たれる」

……思わず笑っちゃいます(笑)。それでも6回投げて、だいたい4点以内に抑え、たまにはQSもしたりしてくれれば御の字かなと。そんなトレードです(^^;; 

◎8月1日(月)スティーブ・ピアスを獲得。

今年は、31日が日曜日だったので、8月1日がデッドラインだったのですよね。その期限ぎりぎりに、オリオールズは12~15年にオリオールズで活躍し、今年はレイズで.309、ホームラン10本という成績をあげているスティーブ・ピアスを獲得しました。ピアスは1年契約ですし、クオリティオファーを受ける可能性はないので、売り手にまわったレイズとしては、放出が前提の選手。オリオールズのほうは、ルール5でレイズから獲得したジョーイ・リカードが親指の突き指でDLに入っている上、控えのノーラン・ライモルドも.237とインパクト不足、アダム・ジョーンズもたまに背中が痛くなったりするというわけで、頼れる第4の外野手がほしかったのだと思います。

こちらも1対1のトレードで、交換相手は1Aの捕手ジョナ・ハイム。守備がいいと言われ、ショウォルター監督のお気に入りで、スプリングキャンプで、ときどき試合に呼ばれたり、投手陣の球を受けたりしていました。こんな若者です。グッドラック!

Best of luck to @Jonah_heim6 who has been traded to the Rays. Thanks for the memories this season! #ShakeYourKeys pic.twitter.com/xqOJoQVyv7— Frederick Keys (@FrederickKeys) 2016年8月1日

……というわけで、地味な補強のおさらいでした。

ただ、8月31日まではまだウェーバーを通過した選手のトレードが可能です。過去、デュケットさんは8月のトレードも活発に行っています。

たとえば2012年にはジョー・ソーンダース⇔マット・リンドストローム。ソーンダースはこの年、テキサスとのワンデープレーオフ(テキサス先発はダルビッシュ)で勝ち投手になっていますから、結果的にたいへん重要なトレードになりました。優勝した2014年には、アレハンドロ・デアザとケリー・ジョンソンを8月のトレードで獲得しています。ふたりとも最後のひと月で、それぞれ活躍を見せました。きっと今も、デュケットさんは、地味に目を光らせていることでしょう。

その他の話題を。

◎ディラン・バンディに首ったけ

「究極の奥の手」と書いたとたん、思いっきり先発ローテ入りしているディラン・バンディ。最初のレイズ戦は、まるでリリーバーのようにはじめからファストボール全力投球で、3イニングめにはスタミナ切れを起こしてしまいましたが、インディアンス戦では5回1失点で先発初勝利。つぎのロッキーズ戦では5回までノーヒッターだったのですが、6回に崩れ、3失点で負け投手。でもすごくいいピッチングでした。そして昨日8月2日のレンジャーズ戦でも6回1アウトまでノーヒッター。前回の反省を生かして、安打を打たれたあともきっちり落ちついて抑え、7回1安打無失点とダルビッシュに投げ勝って、みごとな勝利を飾りました。現在防御率 3.05。

目下、59イニングですから、あと2回も投げれば、シーズン当初に上限と言われていた70イニングを越えそうだし、100イニングも軽く越えてしまいそうな勢いなのですが、どうやらもう首脳陣は「行けるところまで行こう」と腹をくくったように見えます。それだけ今のバンディはすばらしい。立ちあがりの悪い投手が多いオリオールズにあって、バンディの安定感ときたら、ほんとに大船に乗ったような心地だし、きのうのように0-0から1-0とリードしたような展開でも、その裏を涼しい顔で抑えられる落ち着きがあるんですよね。どうか、どうかこのまますくすくと大きくなってください。

◎ゴーズマンも成長?

バンディ効果といったら失礼かもしれないけど、ゴーズマンが少し粘りのピッチングを見せるようになってきました。今日のテキサス戦でも1回、2回はランナーを出しまくって、これまでだったらそのまま崩れていたかもしれないけれど、今日は球数を費やして粘り強く抑え、最終的には7回を投げきる大人のピッチング。これをまっていたのよ、お母さんは(←誰?)。

こうやってバンディとゴーズマンが競い合いながらティルマンをささえ、そのあとからウェイド・マイリーがスポンジのようにイニングを吸収していってくれたら、先発陣はそこそこ形になるんですけどね。

あとは、7月に入ってからめっきり不調の打撃陣があったまるのを待っています。やっとHRは出るようになってきたから、あとはタイムリー。

めざめよ、クリス・デイヴィス! ホームランとは言わない。二塁打でいいんだから。力まずに行きましょう、ねっ。

Go, O’s!