Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

上原、連続アウト記録ストップも、注目はやまず。

なにもここで途切れなくてもいいじゃないか、という上原の連続アウト記録終了でありました(9/17)。

よりにもよってオリオールズ戦。オリオールズは、激しいワイルドカード争いの最中ですし、そうでなくともいつでも勝ってほしいので、バレンシアスリーベースはとてもうれしかった。でも同時に「ギャー、なんでここで!(>_<)」と頭をかかえずにはいられず、エモーショナルきりもみ状態に(^_^;; まったく去年のワンデープレーオフといい、野球の神様に遊ばれてるような気がします。

両方愛したっていいじゃない。どっちも同じくらい好きなんだもの。

(と、実生活では言ったことのないせりふを口にしてみる(笑))

じつは前のエントリのコメント欄にちらっと書いたように、上原エントリの下書き、6~7割できていたのですが、そのあと記録が途絶えたので、宙に浮いてしまいました。

でももったいないし、記録が終わったあとの上原のコメントを聞いてちょっとうれしくも思ったので、導入部を「記録が途切れる前に書いた下書き」としてアップさせていただきます。

上原にとって、「連続もの」は好調の証です。

1999年、ルーキーイヤーには日本記録となる「新人15連勝」がありました。

17勝をあげ沢村賞を獲得した2002年には、先発で10連勝を記録しました。

メジャーにわたったあとは、オリオールズ時代の2010年7月から11年4月まで36試合連続無四球(メジャー歴代3位)。そのあと2011年8月から2012年5月にかけても28試合連続無四球を記録しています。

しかし今回の「連続物」は、それらを上回るスケール。9/15日時点で:

・27試合(30回1/3)連続無失点

・37人連続アウト

 この連続アウトはリリーバーとしては2007年のホワイトソックス、ボビー・ジェンクス(41人)に次ぐ、史上2番めの記録です。

パーフェクトゲーム」に匹敵する27人を越えたあたりからなんだか周囲のほうがそわそわしていて、こちらの番記者さんなどは「数字はいずれ平均化するから、自分がソックスファンだったら、ポストシーズンに突入する前に一度失点しておいてほしいと思うだろうね」なんて気弱なツイートを (^_^;;

気持ちはわからなくもないけど、だいじょうぶ。上原はおそらく周囲が思うほど、記録にこだわりがないから。新人のときも15連勝のあと1敗したものの、そのままガタガタいくことなく、最後に勝って20勝で締めました。「連続物」が出るのはいいルーティンを続けられている証拠だからこつこつやっていこう、というふうには考えても、途切れたことでがっくりして崩れたりはしない。続いているときの気の持ちようも、途切れたときの思い切りかたも経験の範囲内で対処できるだろうと思います。

で、記録が途切れたあとのコメントを読んで、やっぱりこれまでとなんら変わらぬ上原だなとうれしく思いました。

「(調子は)悪くないので、そんなに気にすることではない。(記録も)周りが言うほど気にしていない。負けがついてはいけないポジションなので、負けたことが、とにかく悔しい。(夜の)12時まではムカついていますが、12時を回れば切り替える」

そして翌9/19の対オリオールズ第2戦、延長10回に登板すると、マクラウスをセカンドライナー、マチャドをストンと落ちるフォークで空振り三振(マチャド、大きくバランスを崩してあわや尻もち)、クリス・デイヴィスをセンターフライに打ち取り、言葉どおりすっぱり切り替えたところを見せてくれました。おみごとです。

それにしても、この連続アウト記録が始まってからというもの、フィーチャー記事が出るわ出るわ。狂想曲とまではいかなくても、一種のさわぎではありました。レッドソックスに来てから、これまでより頻繁に取りあげられるようになったものの、7月までは読みのがすほどではありませんでした。それがここへきてあまりにたくさん出るので追いきれなくなるほど。目についたものだけ、軽くまとめておきます。

9/6 FOXスポーツ ケン・ローゼンタール

Uehara's unlikely rise to BoSox closer

全国メディアのFOX、しかも看板記者のローゼンタールの記事ということで日本でも話題になりました。

こちらのSPA!の記事でもとりあげられていますので、ローゼンタールの記事についてはSPAでお読みを。(他力本願)

時を同じくして(9/9)スポナビでも杉浦大介氏による“全米でも話題沸騰!「上原浩治が凄いぞ」”という記事が。

そして翌9/10には、マサチューセッツの地元紙に

「メジャー1落ちついた最終回」という記事が。さきほど「9月に一度失点しておいて」とツイートしていたドレリッチさん執筆です。

Koji Uehara brings 'most relaxing inning' in baseball, owes catchers jewelry

ニエベス投手コーチの、「これまでに体験したなかでも、最高に落ちついて見られる最終回だ」というコメントを紹介。また84試合連続セーブを記録したガニエや、昨年からクローザーになったキンブレルとバッテリーを組んだことがあるというデイヴィッド・ロス捕手の「3人とも図抜けたレベル。登場するだけで試合が終わったような気持ちになる」という談話も記しています。

このロスとサルタラマッキアの捕手コンビが上原にロレックスをおねだりしているというのもゆかいです。それは、完全試合を達成した投手が、受けてくれた捕手に時計などを贈る風習があるから。上原は完全試合を越える連続アウトをとっているので、その間にボールを受けたロスとサルティがおねだりしているわけですね。それを伝えきいた上原は「いや、こっちがもらいたいよ(笑)」と。そういうユーモア感覚がちゃんと伝わっているのもうれしいことです。

そして9/15日にはボストン・グローブのこちらの記事。

Koji Uehara finds a home with Red Sox

BOSの番記者ピート・エイブラハムさんの手になる記事で、紙面でもとても大きく載ったようです。記録にももちろん触れていますが、マリアーノ・リベラやショウォルター監督、アダム・ジョーンズからもコメントをとっていて、読んでいてぐっときました。全訳されているブログもあるので(コメント欄で教えていただきました)ご参照を。こちらでは、わたしが感銘を受けたいくつかの部分をピックアップします。まずはリベラのコメントから。

リベラ:ウエハラはすごい。どんどん打者に向かっていくからね。むだなことをせず、逃げずに、真っ向から挑んでいく。それこそクローザーというものだよ。

また、上原がインタビューなどの際には通訳のC・Jマツモト氏を介するものの、質問に直接うなずき、英語の単語を交えて答える場面もたびたび見られると紹介。クラブハウスのえげつないジョークのやりとりにも積極的に混じり、チームメートとじゃれあい、春季キャンプでは日本の報道陣からカメラをうばって、ファレル監督に疑似インタビューまでしたと記しています。

ファレル監督:楽しい男だよ。性格がよくて、外向的だ。

マイク・ナポリ:すばらしい仲間だよ。ぼくがいっしょにやったなかでも最高のチームメートのひとりだ。

……で、このあとの部分にちょっと感動したので抜き書きします。

「チームを重んじるこの精神は、大阪体育大学時代にはぐくまれたとウエハラはいう。大体大野球部は、けっしてめぐまれた環境にはなかったが、選手のきずなが強く、今に至るまでウエハラの心に強く残っている。

『けっして強いチームじゃありませんでしたけど、団結力が強くてみんないっしょに戦ってました。いいチームメートであるというのは大事なことです。アメリカに来てから、コミュニケーションはボディーランゲージが中心ですけど』」

ボストンの新聞に大体大の話が登場する日がくるなんて。うるうる。このあと記事は、ウエハラの人生行路をたどり、メジャー生活をスタートさせたオリオールズの監督、バック・ショウォルターのコメントを紹介しています(渡米時はトレンブリー監督でしたけど)。

ショウォルター監督:

「ウエハラが故障なく戦えるような起用法をいろいろ試した。たどりついたのが、一度アップさせたら、必ず試合で投げさせるというものだった。(アップさせて投げさせないとか、二度三度とアップを繰り返すことをしないという意味。基本的にファレル監督も同じやり方をしています。)彼はすばらしいよ。いっしょにいて楽しい男だ」

この“He’s special. He’s fun to be around.”というショウォルター監督のせりふ、うれしかったです。ぐっときました。それからアダム・ジョーンズも。

ジョーンズ:コウジは最初にきたときから、チームに溶けこもうとしていた。最高のチームメートのひとりだ」(ナポリと同じコメント)

そして締めくくりは上原のこんなコメント。

「先のことは考えない。つぎの一球、つぎのバッターに集中するだけ」

そしてワールドシリーズ出場を夢見ているかと問われると、質問が通訳される前にこんな答えを。

「じっさいに出場が決まったら、もう一度きいてくださいよ。いい答えを用意しておくから」

野球以外の余計なことを考えずにすんでいるというか、とても集中した、いい精神状態で過ごしていることが伝わってきます。

例によって長くてすんません。あとふたつほど。

9/15日、ヤクルトのバレンティンが56号HRを放ったあとには、マサチューセッツの地元紙にこんな記事が出ました。

Koji Uehara, once forced to intentionally walk slugger chasing season home-run title, happy Wladimir Balentien was pitched to in Japan

(かつてHR王争い渦中のスラッガーをチームからの指令で歩かせた上原、バレンティンへの堂々勝負を喜ぶ)

ついにバレンティンがらみで、あの1999年の涙の敬遠の話がアメリカの野球ファンに紹介される日がやってきました。考えてみるとヒデキ・マツイはおなじみだし、ペタジーニも短期間ながらBOSに在籍したことがあるとのこと。短いビデオまで埋め込まれています。若干舌足らずなところはあるものの、ほぼ過不足なく涙の敬遠話を紹介しています。YouTubeとウェブのさまざまなアーカイブによって、以前だったらスルーされていたような昔のこまごまとした話も取材しやすくなったよなあとあらためて感じたことでした。

そして最後に超ド級の記事を。9/17日に記録が途絶えた翌日、9/18のBaseball Prospectus の記事です。サム・ミラー執筆。

これはもう見ていただくしかないのですが、37のアウトすべてを画像でたどるという鬼畜な記事。ファストボールによるアウトは静止画で(キャッチャーがミットを構えたゾーンが青い四角で示されています)、スプリット(およびカット)のアウトはGif動画で。

いろいろコメントがついていて、それも面白いのですが、なかでも「!」と思ったのが「今季ここまで、上原がカウントをノースリーにしたのはわずか3回。そのうち2度が敬遠で残りの1人は三振に取っている」という記述。すげー。

そして、上原が打ち取った各打者の予測出塁率(シーズン前に算出したものだそう)に基づいて、この37人全員を連続で打ち取る確率を計算しています。その結果が「200万分の1」(笑) なんですか、それ? 少なくとも野球に関係のある数字じゃなさそうw いやいやいや。とにかく今回の記録、ファンのみならず、野球に興味のある人はみんな、たっぷりしゃぶりつくして楽しんだのではないでしょうか。惜しいところで止まってしまったけれど、上原が健康で投げ続けてくれるかぎり、K/BB にせよ、 WHIP(これも現在史上最高レベル)にせよ、まだまだいろいろな角度からわたしたちをびっくりさせてくれそうです。

それでも本人は、勝つことにしか興味がなさそうですけど(笑)。

【追記】

きのう(現地9/20)の試合前――つまり地区優勝を決めた日の試合前――上原さんがツイッターでこの記事を紹介してくださいました! 感激です(; . ;)

地区優勝、おめでとうございます。最後の三振、しびれた~。これから長い長いポストシーズンが始まりますね。最後の最後まで行けるよう、応援します!