Koji's Classroom II

ボルチモア・オリオールズと上原浩治投手の応援ブログ。スポナビ+から引っ越してきました。

ALDS 第3戦、4戦:信じていたけど、こわかった。やっぱりレイズは手ごわいのよ。

もちろん信じていましたよ。でも、だからといって緊張しないわけじゃありません。昨日の今日ですから、やっぱり胃が痛かった(^_^;; たぶん上原本人も、少し緊張していたはず。8回はすごく慎重だったし、9回もいつもより球が荒れていました。それでも、それらすべてに打ち勝って見せてくれた最高のパフォーマンス。すごい、すごすぎる。ほんとうに上原ファンでよかった。

We are proud of you! そう胸を張って叫びたい、鼻高々な水曜日の午後です。

まずは昨日の試合から。

10/7 レイズ5-BOS4 

上原、4-4同点の9回裏に登板、ゾブリスト、ロンゴリアのふたりをわずか3球で打ち取ったあと、ホセ・ロバトンに0-1からの2球めをたたかれ、センター、エイの水槽に飛びこむサヨナラHR。

けっして悪い球じゃありません。低めだし、初球ファストボールでストライクをとったあとの2球めのスプリット。ふつうなら空振りしてもおかしくない球。でもロバトンはファストボールは完全に捨てて、スプリットだけに山をはっていたとあとからコメントしていました。それでもセンターに打ちかえすとは恐るべし。

打たれた瞬間、もちろん「あーーー!」と思ったのですが、みょうに冷静でもありました。上原がポカをするとき(失礼!)のパターンにはまっていたからです。

・比較的HRの少ない打者に打たれる。

・強打者を打ち取ったあとにやられる。

・調子がいいとき落とし穴にはまる。(3球で2人打ち取ったのがとくに。一応、その場での感想ツイートも→1、2)

ある意味、2つ先勝したタイミングでピシャリと張り手をくらったのは、かえって幸いだったかなという思いも。しかしそれもこれも次にやりかえしてこそ言えることなので、若干言葉少なになってました(そして冒頭へ返る、と(笑))。

サヨナラの直後からどうしても出ずにはいられなかったのが、2011年ポストシーズンの振り返りです。ALディビジョンシリーズと、チャンピオンシップシリーズに3回登板して3被弾し、ワールドシリーズのロースターからはずされるという屈辱。

そのきっかけとなったのが1発め、ほかでもないレイズのロンゴリアからくらった3ラン。まずは動画をごらんください。これ、フォークなんですけど、高いし、落ちもよくない。それよりなにより、打たれた直後の打ちのめされた表情……。今あらためて見て、がく然とします。ポストシーズン初登板でこんなに追いつめられていたなんて。この試合、7-3リードからこの3ランで7-6と追いあげられ、ぎりぎりで逃げ切ったのですが、試合後のコメントもこんな感じ。

「何も言い訳できない。(四球を与えた)先頭打者がすべて。自分が少し逃げていたというか、もったいない投球だった。全部が空回りした。チームが勝ったのが唯一の救い。僕以外はみんな楽しそうにしているので。反省します」さらに「もう一度チャンスをもらえることを願ってます。(I hope I will get another chance.)」とも。(当時のエントリ:1、2)

どうです? 「2011年にもね……」って言われてしまうのはわかるけれど、ぜんっぜんちがうでしょう? もちろん別人ではないのですが、2013年の上原は、このつらい体験を踏み台にし、過去のものとして立ちあがってきた、新しい上原なのだということをしみじみ感じます。

ちなみに2011年には、クラブハウスで涙を見せるというアメリカ社会における禁忌を犯し、WSのロスターからはずされたのは、それが50%ぐらい原因だったんじゃないかと私は勝手に思っているのですが、きのうは周囲への対応もその当時とはまったく違っていました。顔をしかめはしたものの、落ちついてひきあげてくると、記者団に対しても「一発があるというのは分かっていたけど、一番打たれてはいけない場面で打たれてしまった。自分の実力がなかったということ」と、いさぎよいコメント。"As long as a hitter has a bat in his hands, that can happen,''(相手もバットを持ってますから、こういうこともあります。)とも(ソース)。

そしてブログも今日の試合前までには更新されていました。もう、ね、ほんとに心身ともに充実しています。これなら大丈夫、と思いました。

もうひとつ大丈夫だと思った根拠は、これまでにも、やられた次の登板ではことごとくやりかえしていること(除:2011)。先日の、連続アウト記録がとぎれたあとのオリオールズ戦もそうでしたが、初めてメジャーでクローザーを経験した、オリオールズ時代2010年のケースを少し振り返ってみます。

2010/9/8  @NYY 2-1と1点リードのの9回に登板。スイッシャーに2ラン浴びサヨナラ負け。

 すると次回登板では……

9/10 @DET 6-3の9回に登板。三者凡退で8セーブめ。

 さらにまたまたNYY戦でこの年2度めのセーブ失敗(この2回だけ)。

9/17 NYY 3-1とリードの9回表に登板。2死一、二塁からA-Rodに逆転3ラン浴びて敗戦。

 しかし次の登板では、またしてもきっちりお返し。

9/19 NYY 3-3と同点の延長10回表に登板。スイッシャー、ポサダ、グランダーソンを三者三振に。チームはこのあと11回にサヨナラ勝ち。

今だからかんたんに「倍返し」なんて言葉も使いたくなりますが、それを達成できるのは並々ならぬ技術と精神力の支えがあるからなのです。上原は今年急によくなったわけじゃない。メジャーに来てからずっといいのです。そこに、さらなる進化が積み重なって、今がある。

そんなこんなで、もし今日登板があれば、かならずやりかえしてくれると信じていました。だからと言って緊張しないわけじゃありません。(で、冒頭へ返る:2度目(笑))

そういうわけで今日の試合もかんたんに。

10/8 レイズ1-BOS3 

きのうあたりからどんどんポストシーズンらしい激戦が増えてきましたが、今日も2試合ともすごかった。A's-タイガースはとったりとられたりのシーソーゲームのすえ、ここまでポストシーズン無安打10三振だったタイガースのオースティン・ジャクソンが勝ち越し打を放つという劇的な展開でしたし、レイズ-レッドソックスも激しい戦いでした。

先発のヘリクソンがあかんと見るや、なんと1回0/3でさっとひっこめるマドン采配。もうこれはひとつのワールドですよね~。レギュラーシーズンでも驚かされることは多いですが、ポストシーズンのような特別な舞台になると、この独特さがたいへんな力を発揮します。

けっきょく2011年も今年も1勝3敗で敗退しましたが、どちらも爪痕は残したというか、やっぱりいやなチームだなあという印象は強く与えたのではないでしょうか。

それでも、そのマドンワールドに屈しなかったBOSは、くやしいけどやっぱり強い。6回に1点先制され、7回表にすぐ逆転したのですが、この回などは四球を足がかりに2アウトからヒットで一、三塁。ビクトリーノがいやらしくバントの構えをしてみせてワイルドピッチをさそい、同点。なおもランナー三塁から、今度はぼてぼての内野安打で勝ち越し。いやらしいレイズのさらに上を行く泥臭さ。わたしが勝手に「ぎょろ目の兄さん」と呼んでいるビクトリーノ、上原が強烈なハイファイブをかましたビクトリーノは、あらゆる意味で本当に相手にとっていやな、すばらしい選手です。

でもって、同じ東地区同士の対決をつぶさに見ていると、どうしても「あー、打席での粘りだよね。何球も投げさせないとね」とか、「ツーアウトからどうしてこうしぶとく点とってくるかな」とか、つい色々考えてしまうわけですよ。今日はアダム・ジョーンズがTVで試合後にスタジオコメンテーターを務めるということで、熱心に試合を見ていたようですが、きっとどこかでバック・ショウォルターも来年へ向けて色々対策を練っていたことでしょう(と思いたい。)

で、2-1と勝ち越したBOSは、6回2アウトから投げていたブレズロウが7回をきれいに抑え、8回1死からヒットが出ると、田澤にスイッチ。田澤がジョイスを三振に取ると、ここで上原投入。いよいよです。

8回

デヘススをフルカウントからスプリットで空振り三振! ストンと大きく落ちる球ではなく、最後にクッと曲がって、同時にタイミングをはずす球でした。

1点差ですし、昨日のことがあるから、この場面は慎重さがきわだっていました。3ボールまで行ったのは久しぶりだったんじゃないでしょうか。でもさすがに歩かせることはなく、さんざんファストボールを脳裏に刻みつけてからのスプリット。おみごと。

9回

表にロドニーが四球、四球、死球で満塁にしたあとアーチャーに交代。ペドロイアの犠飛で1点。これは大きかったああ。

冷徹さと情が交錯するマドン監督の投手交代。9回初めからアーチャーだったら相手はいやだったと思うけど、ロドニーにクローザーを任せている以上、それはできないところだったんでしょう。

【追記】ちなみに、この9回表の間、上原がベンチで見せた表情をGifにした人がいました。→こちら。表の攻撃中ずっとこの状態だったわけじゃないですよ、たぶん(笑)。でもいいところに目をつけたっていうか。この集中ぶりなら、味方の攻撃が長引いても大丈夫ですわ。

そして裏の登板。

1 ウィル・マイヤーズを4球め、センターフライで1アウト。

いい当たりでした。結果がすべてだから関係ないけど、初戦でもファウルで粘ってきたし、さすがだなと思います。このシリーズはけっきょく内野安打1本で、初戦の守備のミスも含めマイヤーズにとってはつらい体験だったかもしれないけど、それを糧にするであろう選手だと思いました。要注意!(←O's目線(笑))

2 ローニーを4球めでセカンドゴロ。というか、鋭いピッチャー返しで、上原のグラブにかすかに触れ、打球の勢いが少しだけそがれたところをペドロイアがうまく処理しました。1-4-3 というゴロ。上原の気迫を感じました。

3 そしてここでまわってくるロンゴリア。2-2から5球めのスプリットを振らせて空振り三振! この瞬間、昨日だけでなく2年まえ2011年のredemption(まあ要するに「リベンジ」ってことなのですが相手に対する「報復」というよりは、自分の失敗の「あがない」というニュアンスの強い言葉)が果たされました。いろんな意味で、ほんとうにすばらしいパフォーマンスだったと思います。

勝利の瞬間の動画。上からも。巨人時代を通じても一度もなかった胴上げ投手を(胴上げはしないけど)二度も続けて味わってしまうなんて! 

今日登板のまとめ動画も。うん、やっぱりマイヤーズの当たりはひやっとしました。勝負というものは常に紙一重なんだと思います。

でもまだまだこれで終わりじゃないですよ。タイガース-A'sが移動日をはさんで明後日決着するのを待って次のステージへ。「次のステージ」は、上原さんのツイートからいただいたせりふです。

なんだろう。今回、Walk-off を食らって、今日それを克服したことで、わたしのなかでは「矢でも鉄砲でも持ってこい!」的な感情が生まれているのですが(笑)。そんなに怖い物知らずになっちゃいけないでしょうか。いけないですよね。でも、今日の上原さんのピッチングは、慎重ななかにも大胆な、怖さと果敢さを併せ持ったような投球だったと感じます。

さあ、次は何が待ち受けているのでしょうか。行ってみなけりゃわかりません!

Go, Koji!

【追記】

そうそう。きのうYouToubeをあさっていて見つけたのがこの動画。2011年レギュラーシーズン最後の1日の、ESPNによるまとめです。時系列でカムデンヤーズとトロピカーナフィールドのできごとをまとめてあって、そこにこの動画をアップした人がときどき顔を出すへんてこなビデオなんだけど、もう一度あの興奮を味わってしまいました(笑)。それにスクータロとか、クロフォードとか、今は別のチームに移籍して、それぞれポストシーズンで活躍した(している)人たちもいたりして、わずか2年なのに時の流れを感じます。

そして、なにより、ボストンにとってタンパベイというチームがいかにトラウマの対象だったかというのが、これを見ると如実に感じられるんですよね。だから昨日のサヨナラ負けは悪夢を呼び起こしたんじゃないかと。もっともこのときBOSが直接対戦していたのはオリオールズであって、このあと2012年、13年と2年連続してO'sが勝ち越しているのだけど。来年も続けたいですよ、この流れを。